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2007年04月19日(木) 妄想に支配された青年

米捜査当局、TV局送付資料の分析急ぐ=乱射犯、金持ちにうらみ

32人が射殺された米バージニア工科大学乱射事件を調べている捜査当局は
19日、チョ・スンヒ容疑者(23)がNBCテレビに送付した自身のビデオや
写真、長文のメモの分析を本格化。異常行動を続けていた容疑者の
精神状態に深く分け入り、犯行動機の全容解明を急ぐ。
 送付したビデオやメモで、チョ容疑者は「お前たちはメルセデス車では
不十分だというのか。金のネックレスでも足りないというのか」などと、
金持ちへのうらみを吐露。「お前たちがおれを追い詰め、
おれにはただ1つの選択肢しかなくなった」「お前たちの手は血で汚れる。
その血を洗い流すことはできない」などと、犯行を正当化している。
 また、「十字架の上で辱められ、突き刺されることがどんな気持ちか
お前たちに分かるか」と、自らをイエス・キリストになぞらえるような
表現も用いている。 

(時事通信 4月19日15時47分)


毎日 4月19日<米大学乱射>コロンバイン高事件に影響か 動画送付

朝鮮日報4月18日 米大学乱射:チョ容疑者は05年から要注意人物だった=英紙

産経 チョ容疑者、自室にメモ「こうなったのもおまえたちのせいだ」

-----------------------------(引用終了)----------------------------

CNNを見ていると、自殺した加害者が学生時代に行ったストーカー行為や

放火未遂などの奇行の数々がクラスメイトや学校関係者などの

証言として出てきていました。

常識はずれな奇行を繰り返すあまり、気味悪がられて周りから人が離れ、

それによって孤立した寂しさを補うのが妄想の世界に耽ることだったのでしょう。

孤立を生み出した原因は加害者自身の奇行によるものが大きいのですが、

当の本人にはその自覚が無く、また、やたらにプライドだけは高いので、

周りから指摘されようが、

カウンセリングを受けようが自分に原因があることを認めず、

自分は不当な扱い(差別)を受けていると、

孤立する原因を全て回りのもののせいにして責任を押し付け、

この加害者の場合は、写真や映像を付けた犯行声明を送るなど、

もともと自己愛性と顕示欲が強いとみられるので、

こんなに優秀な俺が認められないのは世界が悪いと、

さらに自分だけの世界の妄想を膨らませ、

その妄想に完全に支配されてしまったという感じに思えます。

加害者の壊すべき世界が学校だったのでしょう。

筋肉少女帯の「蜘蛛の糸」という歌詞の世界に当てはまるような。

蜘蛛の糸 筋肉少女帯


 銃によって引き起こされた痛ましい事件から、

日本のメディアでは、毎度のように、

「なぜ銃規制の声が高まらないのか?」という論調が必ず出て、

その理由として、全米で約300万人の会員が所属する全米ライフル協会が、

共和党、民主党のほとんどの政治家へ政治献金を行い、

様々なロビー活動を展開しているので、

政治家が協会に歯向かえないという結論が主に述べられます。

その理由ももっともなのですが、私はそれ以外にも、

過去、同じような学校での銃乱射事件を追ったドキュメンタリー映画

『ボーリング・フォー・コロンバイン』が話題を集めていた頃、

監督のマイケル・ムーア氏が、

何かの雑誌で語ったインタビュー記事の中で上げた理由を思い出します。

アメリカに銃犯罪が減らないことや、学校での銃乱射事件をきっかけに、

銃規制の声が出ても誰も銃を手放すことが出来ないのは、

心理的恐怖によるものが一番強いのではないかという理由を上げていました。

その理由として、昔アメリカの白人は黒人の暴力を極端に恐れていたことや、

母国でどのような生き方をしていたのか分からない移民が多いこともあり、

もしかして、自分はいつか誰かから危害を加えられるかもしれないという

他人をなかなか信用(信頼)できない根拠のない恐怖心からの

解放のために銃を所持しているのではないかと。

この推測は、あながち間違っていないのではないでしょうか。

 しかしながら、ほとんどの人間が銃を所持すれば、

いつか誰かの銃によって事件に巻き込まれるのでないかといった

恐怖心も高まってしまうので、

リスク(撃たれる・撃ってしまう)と

ベネフィット(恐怖心の解放と自衛)の関係で、

余計に銃を手放せないという悪循環で不健全な環境に身をおくのです。

 日本人のメンタリティーにしてみれば、

危険な銃を手放せないアメリカ人が不思議に思えますが、

ちょっと、いやかなり強引かもしれませんが、

銃を車に置き換えると分かりやすいのではないでしょうか。

車は、長距離の移動が楽になるなどのベネフィット(利益)が生まれますが、

車があることによって、交通事故に巻き込まれる、

また自分が運転する車で人を事故に巻き込んでしまうというリスクが生まれます。

しかしながら、しっかりとした心構えを持って利用すれば、

車によって引き起こされるリスクが発生する確率が減ることもあり、

リスクよりもベネフィットのほうが優先されるので、

車による事故で年間死者数が1万人近くにも及ぼうが、

飲酒運転による悲劇が繰り返されようが、

誰も車を手放すことはしませんし、

誰も車をこの世から無くそうとも言いません。

リスクが付きまとうモノには、ベネフィットもあり、

人間というのはベネフィットを優先させるだけなのです。

 これからもアメリカ人やアメリカに住む外国人は、

よほどのことが起きない限りは、常にリスクが付きまとう銃がある社会で、

生きていかざるを得ないのではないでしょうか。

参考リンク:自己愛性人格障害とはなにか

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