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2007年01月06日(土) ホワイトカラー・エグゼンプションで少子化対策?

残業代ゼロ 首相「少子化対策にも必要」

 安倍首相は5日、一定条件下で会社員の残業代をゼロにする
「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について
「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も
多いのではないか」と述べ、労働時間短縮につながるとの見方を示した。
さらに「(労働時間短縮の結果で増えることになる)家で過ごす時間は、
例えば少子化(対策)にとっても必要。
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ」とも述べ、
出生率増加にも役立つという考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 首相は「家で家族そろって食卓を囲む時間は
もっと必要ではないかと思う」と指摘。
長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、
労働者が働く時間を弾力的に決められ、
結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているようだ。

 ただ、連合などはサービス残業を追認するもので
過労死が増えるなどとして導入に猛反対している。
このため、夏の参院選をにらんで与党内でも慎重論が広がっている。

 しかし、首相は通常国会への法案提出については
「経営者の立場、働く側の立場、どういう層を対象にするかについて、
もう少し議論を進めていく必要がある」と述べるにとどめた。

(朝日新聞 2007年01月05日22時01分)


● 産経新聞2007年1月5日付:【産経抄】

 仕事始めを絵に描いたようないでたちのサラリーマンやOLで、
きのうの神田明神は終日、ごったがえした。
オフィス街の丸の内や大手町に近いためもあるが、今年はなんと4日だけで
約1500社の企業がお祓(はら)いを受けたという。

 ▼会社経営者が、部下を引き連れ商売繁盛や従業員の安全を祈念して
氏神さまにお参りする光景は、死語となりつつある
「企業一家」という言葉を思いださせてくれる。
だが、政府が検討しているあの制度が導入されれば、
神田明神の風景も一変するだろう。

 ▼あの制度とは、「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」。
簡単に言えば、「管理職一歩手前」の事務系サラリーマンの
残業代を企業は払わなくてもいい、という仕組みだ。

 ▼旗振り役となった厚労相の諮問機関は、
制度導入の見返りとして週2日相当の休日を義務づけ、
一定時間を超える労働には、割増賃金を支払うとしている。
自分で仕事の量や配分を決め、実績で賃金が決まる仕組み作りも必要だろうが、
企業が新制度を人件費削減の道具に使う疑念は消えない。

 ▼労働者の働き方は多様になっている、と凡庸な経営者やお役人は言うが、
短時間で効率よく高い成果があがる仕事なんて小欄は寡聞にして知らない。
額に汗して試行錯誤を重ね、一見無駄な時間とカネを使ってはじめて果実を
得られる場合の方が多いのではないか。第一、残業代がカットされれば、
士気にも景気にも響く。

 ▼そんなに良い制度ならまず、霞が関から導入してみてはどうだろう。
時間では成果を適切に評価できない業務に従事し、年収が高いという条件にぴったりだ。
「官から民へ」範を示す絶好の機会でもある。
まあ、お役人の味方である人事院がウンとは言うまいが。

(2007/01/05 05:07)


-----------------------------(引用終了)----------------------------

安倍首相の言ってる事は理解できなくもないのですが、

「ホワイトカラー・エグゼンプション」(以下、WCE)が導入されていない現時点でも、

残業代が出ないのにサービス残業をしているサラリーマンは大勢います。

「サラリーマンの世界にはサービス残業が多いことについて、どう思うか」と、

その場で、安倍首相に質問した記者はいなかったのでしょうか?

直接、総理大臣に質問できる立場にいるのに、

誰でもが思いつくであろう単純な疑問を聞けない記者団は、

自分の職務を果たせていないと思います。

 そして、現在の日本が直面している少子化は、

労働時間の多さが原因という単純な問題だけではありません。

既婚者であれば、子供を育てる養育費のために

妻までパートに出て夫婦共働きで家計を助けたり、

夫婦共働きであっても、自分たちが生活するだけで精一杯と、

子供を育てる余裕が無く子作りを断念したり、

産婦人科や小児科の減少、共働き夫婦なら利用したい託児所の不足など、

子育てに不安を感じて子作りに躊躇している夫婦だっているので、

WCEの導入により、残業代が出ないので早めに帰宅して、

出生率の増加につながるという発想は、

あまりにも単純すぎる発想と言わざるを得ません。

 WCEの導入に反対の声が多いのは、

欧米に比べて、日本が検討しているWCEの定義があまりにも玉虫色で、

どうとでも好きに後からいじれるように作られている点です。

いわゆる普通の「正社員」は欧米では「ホワイトカラー」ではありません。

ですが、日本の場合は大半の「正社員」を「ホワイトカラー」と定義しようとしています。

日本と欧米の会社における労働の意識の違いを考慮にまったく入れていないのも問題です。

欧米は、「自分の仕事」の領域が完全に決まっていて、

それは犯されないし、また、そこからはみ出ることも許されません。

しかしながら、WCEを導入した諸外国の結果を見ると、

単位時間当たりの賃金が下がって労働時間が増えています。

労働環境が整っているヨーロッパでもそういう結果が出ているのに、

中間搾取やり放題の日本の労働環境では悲惨な結果になることも予想されます。

また、滅私奉公的精神の風土が根ざしている日本では、

「仕事」は皆(グループ)のものと考えられており、

「確認の仕事」が明確に区別されていない会社が多く、

結局、「自由裁量」による労働という概念が初めから存在しておらず、

裁量性なれば帰宅時間が早くなるわけでなく、

スケジュール重視のため終電上等になるケースが発生する

(ソフトウェア業界が既にこの状態)ことも考えられるので、

残業時間の規制とそれ以上働かせたら罰則という規定を盛り込んだ上での

法案提出なら反対の声も上がらないことでしょう。

ホワイトカラーは別としても先進国で残業時間の規制がないのは、

日本ぐらいではないでしょうか。

 また、安倍首相は既婚者のみを想定してWCEを語っていますが、

少子化の最大の原因は若年層の結婚率低下によるものであり、

未婚化は若年層の雇用環境悪化・生活の不安定化によるのが大きな原因の一つです。

収入は現状維持またはダウン必至と言われるWCE。

残業時間の規制もなく賃金の低下を招いていては、

既婚者の自由時間や家計を圧迫してしまったり、

未婚者はさらに結婚に対する意欲を削いでしまい、

少子化の対策に繋がるのは難しいのではないかと思います。



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