私は建築CADオペレーターという仕事をしている。
毎日、毎日、PCに向かって、せっせと他人の家を描くのが私の仕事。
最低でも8時間異常PCに向かっているのだから
ちょっとはPCに強くなりそうなものなのだが、そんな事はなくて
仕事と、遊びに使う程度の知識……ってのがあるに過ぎない。
現在はウィンドウズを使って仕事をしているのだが
2年ほど前は「ユニックス」ってなOSを使っていた。
今の会社に入って、はじめて触わるOSで
当時はドキドキしながら触わっていたが
今では、ほとんどの仕事がウィンドウズに移行しているので
ユニックスは「昔のデータ」が必要な時にだけ呼び出すOSとして
私の席の横で、ゆるゆると隠居生活を送っている。
だが、しかし。だが、しかし。
ごくまれに、どうしてもユニックスが必要になることがあるのだ。
そんでもって、そんな時に限ってトラブルが起きてしまったりするのだ。
PCにトラブルが起きた時には、本社のシステム部に救援してもらう。
ネット・ワーク社会の勝利……って感じなのだ。
その日もめずらしくユニックスを使い……
そんな時に限ってトラプルが発生して……
いつものようにSOSを出したのだが……
なんと。ユニックスとネットワークが繋がらなかったのだ。
救援してもらおうにも手段がなかった。
電話口で呆然としている私に、ユニックスの使い手は静かに言った。
「私が指示を出しますから、その通りに打ち込んでください」←冷静な声。
「えっ?」←ビビル私。
「現場での作業が必要なのですが、ちょっと行けそうにないし」←苦笑。
「ええっ? そんな……」←呆然といる私。
「大丈夫。頑張りましょう」←畳み掛けるような声。
それから1時間ばかり……私は耳に受話器をあてて
せっせとユニックス使いの指示通りに打ち込んでゆきましたとも。
エンターを押して……なにが出てきましたか…そうですか……
…スペース……スラッシュを2回……シフトキーを押しながら……
確認のためスペルを読んでください……はいOKです
…ドット…スペース……
なんだか二人羽織をしているようでした。遠隔操作されてるって感じ?
結婚披露宴で言うところの「2人の共同作業」ってなノリだった。
遠くの方で聞こえる外国の歌の聞いているような夢うつつ状態で
それでも、つつがなく作業は終了した。
「お疲れ様でした。これで、もう大丈夫です」
ユニックス君が正常に動き出した時の、嬉しかったことと言ったら!
私は顔を見たことのない、電話の向こうの「ユニックスの使い手」と
思いっきり、肩を叩き合って、喜びを分かち合いたい……と思ったくらい。
電話の向こうにいた、その人も
私と同じくらい嬉しそうな顔をしていたんぢゃないかと思う。
仕事的には、うんざりするほど単調な日々だが
たま〜〜に、刺激的な事があったりする。
そうさ……
今日はヤクザの親分さんの契約がチャラになったって事も聞いたしね。
あんなに入魂して頑張ってきた家だったのに……
話によると、ライバル会社にサクッとさらわれてしまったらしい。
私は素敵なプランだと思ったんだけどなぁ。なんか悔しい。
イイことがあれば、悪いこともあるさ……ってところだろうか。
明日は待ちに待った休日。
まずは仕事を忘れて、ゆっくり過ごそう
……ってなな感じで、今日に日記は、これにてオシマイ。