白い木蓮の花の下で  

    〜逝くときは白い木蓮の花の下で〜

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2002年06月01日(土) カンパネルラの思い出

読書日記に『銀河鉄道の夜』でも書いておこうとて
書き始めたはいいけれど、色々なことが思い出されてきて
やたらと脱線してしまったので、こっちの日記に書くことにする。

恥ずかしながら私にとって『銀河鉄道の夜』は「激ラヴゥ」の1冊で
もっと恥ずかしいことを書いておくならば
ネット・デビューした頃は「カンパネルラの妹」というHNを使っていた。
↑カンパネルラとは『銀河鉄道の夜』の登場人物。
あまり長すぎるHNは実用向きではない…ということに気付いてから
「カンパネルラの妹」というHNは返上してしまったのだけれども
今でも思い入れの深い名前だったりする。

話は逸れてしまうけれど、我が家には私と弟のほかにも
もう1人子供がいた……らしい。私の上に、男の子が1人ばかり。
死産だったそうなので、実際には「いない」も同然なのだけれども
両親にとって、初めての子供だった……ということと
「死産」という哀しい結末が衝撃的だったことから
私は小さい頃から両親や親戚から「赤ちゃんの時に死んだ長男」の話を
それこそ「耳にタコができる」ほど聞かされて大きくなった。
彼は、私にとって「幻の兄」のような存在だった。

ちなみに幻の兄は、物事がスムーズにすすんでいる時は登場しない。
たいてい何某かトラブルがあった時に話題にのぼってくるのだ。
もしも「あの子」が生きていたら、今頃は……みたいな感じで。
その後に続くのは、たいてい、この言葉。

そうでなくても、せめて白蓮が男の子だったら良かったのに。

正直なところ私にとって幻の兄は迷惑な存在だった。
「なんだぃ。私だって、けっこう立派にやってるぢゃないか」
などと悪態をつきながら、彼のことを忌々しく思ったものだ。

だが、そんな風に敵対視しながらも
どうした物か、私は自分の中で「幻の兄」の幻想を育てていたらしく
銀河鉄道の夜に登場するカンパネルラという少年に
いつしか、幻の兄の存在を重ねあわせるようになっていた。
ちなみにカンパネルラは「ドラえもん」に登場する「出来杉くん」のように
よく出来た少年で、物語のラストで姿を消してしまうのだが
「現実であって現実でなし」というシュチュエーションも
どこか自分の作った幻想とマッチしていてお気に入りだった。

だから「カンパネルラの妹」だったのだ。
カンパネルラの妹は、兄を慕い、兄のようになりたいと思っていた。
頭が良くて、優しくて、男前で(男前は私の中のイメージ)、頼り甲斐があって
カンパネルラの妹は、兄の後ろにくっついて行けば良いのだ。
なんて素敵♪ 妹は甘えっ子と昔から相場が決まっているし♪

どんどんと大きな存在になっていった幻の兄だったが
今の私は、もう彼の存在を必要としない。
何一つ助けてくれない「出来杉くん」よりも
まったく出来は悪いが、そこにいる「のびたくん」的な愚弟の方が
当たり前だが、よほど私の力になってくれている。

それに……
カンパネルラは「サソリの火」に焼かれてもかまわない…と言ったが
私は「サソリの火」になんて焼かれたくない。
今を生きて、やりたいことが、いっぱいあるから。
なんとなく憧れてはいるけれど、カンパネルラは憧れの王子様であって
幻の兄でも、なんでもないんだよなぁ……と今は思っている。

つらつらと、たわいもない思い出話を書いてみたところで
今日の日記は、これにてオシマイ。


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