白い木蓮の花の下で  

    〜逝くときは白い木蓮の花の下で〜

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引越し先 白い木蓮の花の下で


2001年11月04日(日) そういうふうに

日記で再三登場している私の愚弟は
この夏、事故に遭って左手の親指と人差し指を失った。
いずれは義指をつけることになるのだが
まだ治療とリハビリの最中なので
今のところは3本指の男・・・なのである。

ちょっぴり不幸・・・プチ不幸な話ではあるのだけれど
事故当時は「手首から先を全部切断します」
「たとえ指が残っても指を動かすことは不可能です」
などと診断されていたので、それを思うと、ありがたい話だ。

愚弟、母、私・・・家族は少しづつ現状に慣れつつある。

「中指が、よく動くようになったねぇ」
「でも小指の方がいい感じかな」
・・・などと、今日は姉らしく彼の指について観察をしていたら
彼から「ある指摘」を受けた。

「姉ちゃん。悪いけど、それ中指ぢゃなくて、薬指や」

なんてこったい。
私は弟の3本並んだ指の真ん中を「中指」だと認識していたのだ。
その指は第四指・・・薬指だと言うのに。

「ぺつに、えぇで。リハビリの先生もよく間違うし」

なんと理学療法士でさえ彼の薬指を指して
「さぁ、中指動かしてください」
などと言ってしまうことがあるらしい(流石に毎回ではないようだが)

人間の判断能力はアテにならないものだなぁ・・・と思った。
指が3本並んでいたら、真ん中を「中指」だと思ってしまう。
指が3本並んでいたら、はしっこの指を「中指」だと認識できない。
↑ただし、どうしたものだか小指だけは、それと識別できている。

この衝撃的な現実を突きつけられた私達一家は
彼の3本指を「どう呼ぶべきか」について議論をはじめた。

「はっしっこにある指を中指とは呼びにくい」とか
「では『第一指』とか専門的に呼ぶのはどうだろうか?」とか
「いやいや。それでは、かえって変だ」とか
「小指は同じポジションにいるから今も自然なんだなぁ」とか
「まぁ義指ができて見栄えがととのったら変わるんぢゃない?」とか
「包帯グルグル巻きのおかげで袖が通らない服があるんだよなぁ」とか
「でも袖が通る服は、手が治った時は伸びてて着れなくなってるな」とか

私達3人は少々奇妙な議論を戦わつつ
いつしか議論の論点がズレてくるのを心地良く感じながら
・・・さんざん笑った。

笑えるところまできたんだよなぁ。

さくらももこのエッセイのタイトルではないけれど
「そういうふうにできている」のだと思った。人間って生き物は。
ちょっと嬉しい発見だった。


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