『檀』 沢木耕太郎 新潮文庫 を読んだ。
久しぶりに骨太で読み応えのある1冊に巡り逢えて嬉しくてたまらない。
↑基本的に私は本読み虫なのだ。
タイトルの『檀』とは作家、檀一雄のことであり
彼の妻(作品のヒロイン)檀ヨソ子をさしている。
檀一雄は『火宅の人』『リツ子・その愛・その死』を執筆した作家で
「無頼派」に分類される「まい・ふぇいばりっと」作家である。
私は心底、檀一雄と、その作品が好きなので
『檀』の評価にはファンの贔屓目がかなり入っているかも知れない。
檀一雄のファンなら「ふ〜ん。そんなの知ってるし〜」
・・・ってなエピソードが多くて『火宅の人』とかぶる部分もあるのだけれど
檀一雄の妻の視点というのが面白かったのと
何よりも彼がもだえ苦しんだ末期は興味深かった。
奔放で、かつ豪快そうに見える人に対しても
「生・老・病・死」は分け隔てなく訪れるのだなぁ。
などと当たり前のことをあらためて感じた。
放埓に生きた夫に心乱され、嫉妬に苦しんだ妻ヨソ子が
それでも最後まで夫を嫌いになれなかった・・・というくだりは
心あたたまる箇所ではあったのだけれど
恐らく、心の深い部分で求め合っていたのだろう夫婦が
最後まで互いの気持ちを上手く通わせることができなかったあたりは
「切ない」などという
あまりにも安易な言葉でしか表現しようがない。
人の心の内なんて、本人にしかわからないことだから
端から見て「あの人は幸せだ」とか
「あの人は不幸だ」とか
評価することなどできないのだけれど
誰かの人生を端から見ることによって
何かを感じることなら出来るのだなぁ
・・・と、そんなことを思った。