+++恋の味+++



 彼の家【1】

彼の家には絶対行かないって決めている。

理由は、
彼の家族を知りたくないから。

彼の子どもの話を聞いて、
かわいいなぁ、と思うし、
遊んでみたいなぁとも思うし、
彼の奥さんを実際に見てみたい、とも思う。

けど、ぜんぶ、
『知らないほうがいいこと』だ。

本当なら、
彼の家がどこかも知らないほうがいい。


知ってしまえば、
会えない時、彼の家まで行ってしまいたくなる。
ケイタイもメールも繋がらなかったら、
家に電話かけたくなる。

彼の子どもがとても可愛かったら、
わたしは『いいお姉さん』になろうとする。
奥さんがとてもいい人だったら、
仲良くなってしまうかもしれないし、
逆に、ダメな人だったら、
『わたしの方が勝てる』と思うかもしれない。

そういう、彼の日常は知らない方がいい。


わたしは、それを『壊す』存在なんだから。

もし、何かあって、
彼の家庭が崩壊してしまったら、
きっと、
彼の家族はわたしのことを知らない方がいい。

「だれだかわからない女」であるか、
全く存在を知らないままなのか、
その方がいいと思う。

2002年05月12日(日)
初日 最新 目次 MAIL