+++恋の味+++



 覚悟

彼を好きでいようと決めたとき、
いっぱい覚悟をした。

多分、好きでいても近いうちに別れがくること、
好きになるだけ、自分が泣くだろうということ、
奥さんに気づかれたとき
    慰謝料を請求されるかもしれないこと、
今の自分の時間を無駄にするかもしれないこと、
それでも、後悔しないこと。

全部、わたしが“したくない”と思っていた覚悟。
“したくない”と思っていた関係。
“知りたくない”と思っていた気持ち。



後ろ向きに始まったわたしの気持ちも、
今では最初からは考えられないくらい、
ずっと前向きになった。

前向きというよりは、
素直に彼のことが好きだと言えるようになった。
最初からは考えられないくらい、
彼のことが好きになった。


けんかはいっぱいする。会うたびにけんかする。
長時間一緒にいれば『いつか別れるんだろうなぁ』と、
考えずにはいられない。

それは、多分わたしだけじゃなく、彼も一緒。

2人で『いつか』と思いながら、
『いつか』がいつなのか、決めかねている。
少しでも、長く一緒にいられるように。

けんかをしても、その原因をわざと見ないようにする。

彼が結婚していること。
子どもがいること。
ずっと一緒にいられないこと。
いつか別れること。

その不安が、けんかの原因。


その不安が、彼は“嫉妬”になって現れる。
ずっと一緒にいられないから、
今は自分のものだけにしておきたい。
そう思っているのかな?

わたしは、彼のその嫉妬がうっとおしい。
ずっと一緒にいられないなら、
すべてを束縛しないで欲しいと思う。
わたしを、“彼だけ”にしないで欲しい。

そう思っていたはずなのに、
いつの間にか、わたしは自分から
彼以外のものを、捨ててもいいと思うようになった。
彼と、そのほかのものと、天秤にかけて、
たくさんのものを捨ててきた。

彼と一緒にいるようになってから、
彼以外とは外出しなくなった。
彼と会うのにはお金がかかる、時間も必要。
仕事も、休日出勤はしないようになった。

彼を好きになってからは、
他の男性に会うことも少なくなった。
彼以外の男性と知り合うことがなければ、
わたしには“結婚していない”恋人ができない。
それでも、いいと思うようになった。

彼を好きでいることは、
自分の気持ちを大切にすること。

彼を好きでいることは、
わたしの時間を無駄に使うかもしれないこと。

彼を好きでいる限り、
わたしは絶対に結婚なんかできない。

ずっと彼が恋人でいるってことは、
彼がもし、怪我をしても、亡くなったとしても、
わたしには、彼からの連絡がなければ、
そのことすら、知らないでいるってこと。
好きな人のことを誰からも教えてもらえない。

ずっと、そんなこと、続けていくのなんかできない。

そう思うのに、今は、たくさんのものよりも、
彼を選んでしまう。
好きだと思う気持ちを選んでしまう。

『今だけ』と思ったら、
わたしの全部で彼を好きでいたい。
彼を好きでいる気持ちを大切にしたい。

そう思ってしまう。

2002年01月15日(火)
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