帰宅すると,妻が真剣な顔で聞いてくる。
「ねね,ほんとに疲れてない?」 「なんか物忘れがひどいとか」 「なんとなく気分がふさぐとか」
いったい今日は何の記事を読んだんですか。 まったく毎日毎日。
「いや,あのね。言いにくいんだけど…」
あなたにしてははっきりしませんね。 とりあえず気になるので,言ってください。さあさあ。
「今日,私のTシャツが見当たらなくて」
むむ。また話が飛んでいる…。
「で,アンタの引き出しも念のため開けてみたのよ」
はいはい。
「そしたら中がぐちゃぐちゃで」 「いちごと2人でびっくりしちゃって」 「おかあさんならともかく」 「おとうさんがこんなにぐちゃぐちゃなのはおかしいって」
おかあさんならともかくって…。 自他共に認めるだらしなさ…。
まあ,それはおいといて。 それはね,今朝ちょっと探し物したりしたんで,乱れていただけですよ。 時間がなくてそのままになっちゃってね。
「でも!」
お。食い下がるな。
「それだけならまだしも」
しも?
「山のような新品の靴下がぁぁぁ」
いや,それ単なるストックだから。
「でも,数えたら17足もあったんだよ!」 「ぜったいおかしいって!」
いえいえ,そんなことはないんですよ。 あれは在庫ですから。 まずね,僕はカジュアルな格好で通勤が基本ですけど, スーツ着る時もありますよね。 そうすると,当然靴下もテイストが違うわけですよ。 さらに,休日はカジュアル度も増すわけで。
「…」
さらに冬物,夏物が混ざっているわけですからね。
「…」 「理屈はあってるか」 「そういえば,いつも在庫在庫って言ってるもんね」 「転ばぬ先の杖,石橋をたたき壊して作り直して渡る」 「たしかにあんたらしいわね」
納得していただけましたか。
「でもさ,一応見てごらんよ,引き出し」 「もしかしたら,自分で思ってるよりすごいかもしれないよ」
そ,そうですかね。 では,確認をば。
おおっ。 引き出しの中が美しく整理されているっ。 これはこれはお手数をおかけしましたね。
「いや,それはいちご」 「おかあさん,おとうさんにやさしく聞いてあげてね」 「心配だから」 「って言いながらたたんでたよ」 「娘に無用な心配をかけないでよー」
そ,そうなのか。 それは申し訳ないことをした…。 娘の心の傷にならなければよいが。
ってあなたが余計な勘ぐりをして,大げさに娘に言うからでしょうにっ。
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