あー,長かった。 日記が更新されない間,僕がどれだけの辛酸を舐めてきたことか。 しかし,そのようなつらい日々も,もう終わりなのだ。
妻は卒業したのだから。
もうあのばかでかい絵を運ぶために,車のシートを組み替えることも, スクーリングだと言われては送迎に借り出されることもなく, 貴重な休みをうるさい小猿達にすべて食いつぶされることもないのだ。
玄関を入る都度目に入ってきた, 仕事部屋という名の恐ろしげな空間もいつの間にか片づき, 廊下にまであふれてきていた得体のしれない物体も撤去された。
時間がないからとほったらかしにされた部屋の掃除。 いつの間にか僕の分担になっていた風呂掃除。 唯一やっていた食事作りさえ放棄され,コンビニやマクドナルドに走った日々。
何よりの苦痛は,
「ねね,この絵どう?」 「空間が表現できてる?」 「色彩はどう?どうよ」
と,わけのわからない絵の前でいろいろ質問されることだった。
しかし,そんなことももうなくなるのだ。
なんという解放感。 ゆったりとそれにひたっていると,いきなり妻が。
「あっ。私まだあんたから卒業祝いもらってないんだけど?」
…。
は?
なんですって?
「まさかこの間くれたチョコレートが」
「卒業祝いと誕生日を兼ねてるとか」
「そんなばかなことはないよね?」
…。
ばか…。
ばかだと?
ばかはどっちだ。このバカモノ。
こっちが何かもらってもバチはあたらないくらいだぞ。
はぁ。
卒業したからって大人になるわけじゃないんですね…。 そりゃそうですよね。 すでにいい歳なんだから。
ふっ。
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