車に乗るなり,妻が携帯をいじくっている。 アナタ,車で下を向くと酔うんじゃなかったんですかね。 だから,地図も見られないし,ナビもできないんですよね?
「Iちゃんにメールしてるの」 「家具見に寄るからって」
Iちゃんとは義弟の奥さんで,家具というのは義弟夫婦が購入した家についていた家具のことだ。 モデルルームだったらしく,そこにおいてあった家具がすべてついてきたのだが, 義弟の奥さんというのが家具などにかなりのこだわりがあり, 趣味に合わないものはただでもいらないらしい。 人として正しい感覚だと思うのだが,妻はそんな気持ちはみじんもないらしい。
「私の部屋に机が欲しいからね」 「けちだから買ってくれないしね」
いや,そんなことはありませんよ。 好きなものを買っていいと言ってるじゃないですか。
「ま,いいや。買わなかったおかげでただで手に入るんだからね」
見てもいないうちからもらう気満々…。
義弟の奥さんIさんと相談の末,一度帰宅して義母を拾い,出直すことになった。 妻の実家に行くと,なぜかお義父さんまで出てきた。
「あっ。おとうさん行くの?」 「行かないと思ってたから荷物が座ってるんだよ。乗れないよ」 「まったくもう」
なななななんて失礼な。 アナタの相談不足でしょうに。
何だかんだと言いながら現地に到着。 Iさんはすでに来ている。
家を見た妻は興奮状態。
「うっひゃー,いいねえ,広いねえ」 「おおお,キッチンも広い。よよよ,こんなところに納戸が」 「きゃー」
ああ,うるさい。 そんなことしてないで,さっさといただくものを決めなさい。
「えっ。えーと。これかあ。大きいかなあ。こっちのデスクのほうが…」 「うーん,でも大は小を兼ねるからねえ」 「えっ。小物もいいの?ほんとに?」
ふっ。こりゃ覚悟を決めて待つしかないですね。 同じく退屈しているお義父さんと歓談。
しかし,黙っていればいつまでも帰る気配がない。 ムスメ達もそろそろ退屈してきたようなので,声をかけてみる。
「うーん。机どっちにするか迷っちゃってさあ」
迷っているならやめてしまえ,と言っても無駄なので助言してみる。 大は小を兼ねますけどね,そのでかいほうは入らないのではないでしょうか。
「入ればいいのか。じゃ,家に帰ってはかってから連絡するね」 「今日はどうせ小物だけで荷物いっぱいだし」 「ソファは今日持って帰るしね」
え?えええ? いつの間にそんな話に?
「ま,いいから,いいから」
ソファはともかく,小物類は…。 などと言うすきもなく…。 あ,いや,しかし,子どもたちはどうするんですか。 お義父さん,お義母さんは? ソファつんじゃったら誰も乗れませんよ。
「ん?大丈夫。駅が近いから電車でじじばばんちに行くから」 「後で迎えに来てくれれば」
は?来てくれればってアナタまで実家に行く必要はないでしょ。 ソファどうやって2階のリビングまで運ぶんですか。
「あはは。そうか。じゃあ仕方ない。私は車に乗っていくか」
仕方ないじゃありませんよ,まったく。
どうにかこうにかソファその他もろもろを積み込み,子どもたちと別れて家に向かう。 着いたら着いたでソファをセッティング。 さあ,終わったから子どもを迎えに…。
「あ,なんかじいじがたばこ吸いたいからって喫茶店に入ったんだって」 「だから迎えはゆっくりでいいってよ」
ほっ。ならば少しゆっくりと。
「ねー,夕飯どうする?」 「子ども絶対何か食べてるよね」 「おなか空いてないよね」
はいはい。作らないんですね。 いいですよ。 パンでも買いますか。
「やったー。今日はなかなか物分かりがいいじゃないの」 「じゃ,そういうことで」
子どもを迎えに行ったら行ったで,妻は実家の2階に上がったままおりてこず。 やっとおりてきたと思ったら,また,着物だか帯だかを手に持っている。 どっかに入るんだろうな,それ。
こうして一日にしてものがまた増えたわが家であった…。 週末には机も取りに行くんですって。
「2つとももらうことにしたから」
ってどうやってどこに置くつもりなんだか(涙)。
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