今日は休みだ。 しかし,6時起きで竹芝に泊まっていた妻子を迎えに行く。 昨夜,またあのネットで知りあった怪しい人たちと会合を持っていたのだ。 夜遅く帰ってきて,車で迎えに来いなどと言われてはたまらないので, ホテルをとってやったのだ。 おかげでとても快適な夜を過ごすことができた。 この時間のためならホテル代など安いものだ。
ガソリンを入れたりしていたら約束の時間に遅れそうになったので, がんばって運転した。 結局約束より三十分も早く現地着。 携帯を鳴らす。
出ない。
もう一度。
出ない…。
さらにもう一回。
出ない……。
がーっ。寝てるのか?ぼくが6時に起きて迎えに来てやったというのに。
これが最後だ。出なかったら帰るからなっ。
「もしもしぃ」
くっ。帰れない。さすがだ。
あのですねえ。さっきから何度も電話してるんですが。
「あー。アンタの電話の着メロ,前奏がやたら静かなんだよね」 「だめだよ,前奏が終わるまで根気よく鳴らさないと」
どこまでが前奏か,なぜぼくにわかるんですか。 ぼくにはるるる…としか聞こえないんですよ。 まあ,そんなことはどうでもいいですよ。 あとどれくらいで部屋から出られるんですか。
「子どもの髪の毛結ぶだけだからすぐだよ」
あー「すぐ」ですか。 あなたがたの「すぐ」はあてにならないんでね, 終わったらもう一回電話ください。
案の定とてもすぐとは思えない時間が経過してのち, やっと朝食にありつくことができた。 はー,食った食った。 さ,帰りますよ。
「えっ。ええっ?」 「こんなとこにいるのに,もう帰るの?」 「まだ十時前だよ?お台場見物しないの?」
しません。 もう帰るんですよ。 昨日さんざん遊んだんでしょうに。
「昨日は時刻表が古くて出遅れたから,あんまり見てないんだよ」 「むきー」
あー,うるさい。 さっさと車に乗ってください。 さーさーさー。
このぼくの決断は,いつもながらやはり正しかった。 これはまだながーい一日のほんのはじまりに過ぎなかったのだから。
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