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kai
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| 2026年03月21日(土) ■ |
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| 『oasis』 |
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『oasis』@サンシャイン劇場
かなり映画に忠実だったけど、あのシーンどうやるんだろうと思っていたシーンが舞台ならではの演出になっててよかったな…ぞうさんのとこね。土岐研一さんの美術がよくて😭それにしてもイ・チャンドン作品は信仰に厳しい。そこが好き 『oasis』
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Mar 22, 2026 at 1:18
イ・チャンドン監督作品『oasis』を世界初舞台化。脚本・演出は□字ックの山田佳奈。前科者のジョンドゥに丸山隆平、脳性麻痺障碍者のコンジュに菅原小春。以下映画版が大好きで、「あれを舞台で? どうやるんだろう?」と興味を持ち観に行った者の感想です。
前述したように、映画にかなり忠実。殆どのシーンが再現されていた。入場してまず目に入る光景に感動。ジョンドゥの住処、コンジュの部屋、“あの”木とそのシルエットが舞台に収まっている。コンジュの部屋には“あの”オアシスのタペストリーが客席に面して飾られている。色のトーンもイメージのままだ。美術誰だ! とチェックすると流石の土岐研一だった。数々のシーンが一場で成立するように設られてあり、尚且つ映画版への敬意が感じられる。“あの”木のシルエットは、開演前からずっと微かに揺れていた。木の本体は動いていなかったようにみえたので、照明でシルエットを動かしていたのだろう。コンジュの怖さの象徴として、とても効果的だった。鏡の光が鳥へと姿を変えるところも、最後の部屋を掃除するシーンもちゃんとあった。うれしかった。
そう、そして祝祭感溢れるぞうさんのシーン! ここ、いちばんどうするんだ? と思っていたので……映画ではホンモノのぞうさんが出るから(笑)。舞台版はパレード仕立てになっており、ぞうさんがホンモノでなくても違和感がない。お祭りの山車とかねぷたみたいな感じで。いやー、ここをパレードにしたアイディアはめちゃくちゃよかったな……舞台の大きさに合わせたリボン(©鈴木裕美)だ。実際にはあり得ない、だからこそより切なさが増したシーンだった。
コンジュの名義で借りられている部屋等に視察が入るところなど、再現されない箇所は台詞でさりげなく説明。その塩梅も上手い。反面コンジュの部屋で隣室の夫婦がおっぱじめる場面はしっかり演じられ、お、おう、ここはやるんや……えっこれレーティングどうなってるんだっけ? 大丈夫? と大人は若干面喰らう(今回の舞台版は未就学児童入場不可、映画は15歳未満鑑賞不可)。まあ見えてはいないから……(笑)生々しいシーンだけど、あれはコンジュがセックスは怖いものではないのだと知る重要なシーン。あの夫婦、楽しそうだったもんね。カットされなくてよかった。
ジョンドゥが出所してからの移動や、ジョンドゥがコンジュを連れて街に出るシーンは舞台ならではの小道具の見立てでスピーディーに展開。丸山さんと菅原さん以外の出演者は複数の役を演じ、ふたりに“社会”を見せつける。ひとつだけ気になったのは、何故駅構内のアナウンスが韓国語だったのだろうということ。台詞は全編日本語で、地名や人名、固有名詞は韓国のものだったので、翻訳物として自然と受け入れて観ていたところ我に返った。ジョンドゥに疎外感を与える狙いの演出だったのだろうか。
コンジュの身体が自由に動きだすシーンは鮮烈だった。菅原さんがコンジュというキャスティングからして身体表現に期待する訳で、実際それは素晴らしいものだった。ふわりと椅子から離れた瞬間、「来た!」と目を瞠る。ペットボトルでジョンドゥを叩くコミカルなシーンで笑いが起こる。ジョンドゥの腕の中で、身体が柔らかな線を描き起き上がる。介助がハグになる。するりと車椅子に戻った瞬間、身体に重力が戻る。シームレスな回転と上下動で、想像と現実を切り替える。菅原さんと、彼女の動きをサポートする丸山さんのリレーションシップあってこその美しいシーンになっていた。
しかし何より今回の菅原さんに魅了されたのは、その声。胸にズドンと刺さったのは歌だった。ジョンドゥへと唄うあのシーンに息を呑み、そして涙した。少しハスキーな声で口げんかをしたり、拗ねたりするコンジュのかわいらしさも素敵だった。
で、丸山さんですよ。はぁ〜めちゃめちゃジョンドゥだったよ〜あれすごい難しい役ですよね…ずっとヘラヘラしてるって体力いるし、それにも増して気力がいるよ……。犯罪履歴があれだし(交通事故は違うけどな!)、特に女性からは共感を得にくい役どころ。そこに「なんかある」、コンジュと出会って「何か変わった」、という気配を感じさせなければならず、「それでも自分を変えられない」、というところ迄見せなければならない。人間は多面的なもので、どんなに暖かで優しい一面を持っていても、他の一面があることで社会からは疎外されてしまう。丸山さんはそれを伝えてくれた。
観に行く一因になっていた出演者、水橋研二はコンジュの兄役。実は「主演のふたり以外はヤなやつばっかじゃん! 水橋さんどの役でもきっとヤなやつじゃん!」と思ってました(…)。コンジュの兄は妹を利用して住居を手に入れ、挙句示談金も手に入れようとしている。反面、彼女への接し方には優しい兄の一面も感じられた。今作に出てくる人物って揃ってこすいひとばっかなんだけど、皆さんそんな中にもうしろめたさがあるんだなというのが滲み出ててよかったです。自分もこちら側の人間だろう? と突きつけられるようでもあった。ニンゲンって、社会ってほんとに悩ましい。あと映画ではリュ・スンワンが演じていた弟役の方が印象的でした。
音楽はオレノグラフィティ。クライマックスのそれはDavid Bowieの「Modern Love」…オマージュにしてもあまりにも……まあこれはご愛嬌。レオス・カラックスの「汚れた血」に代表されるように、疾走する愛にピッタリの曲調でした。開演前から流れていたアンビエント調の曲もすごくよかったな。オレノくんでこういうの聴いたの初めてだったので新鮮でした。
なかなか映画の舞台化って身構えてしまうのですが、『oasis』という作品に惚れ込んだ山田さんの熱意と、映画や小説等、原作ものを数多く手掛けているNAPPOS PRODUCEの蓄積が結晶になったような好作品でした。観られてよかったです!
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