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2025年03月15日(土)
エディ・ヴェダーの休日+小林建樹ワンマンライブ『BLOSSOM』

カイリーの三日後に小林さんが聴けるなんて、なんて週だ! なんか打鍵の強いビルエヴァンスみたいになってたぞ! ギターもかなりジャズみあった(音倉さん本日はダブルヘッダー)…とtwitter開けたらエディの姿がドーンと以下同

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— kai (@flower-lens.bsky.social) Mar 16, 2025 at 1:14

こちらも説明しますね……。帰宅後twitterを開けたら、MLB観戦のため来日しているエディ・ヴェダーが(前回カイリーの頁参照)ジャック・ホワイトの来日公演に飛び入りしてニール・ヤングの「Rockin’ in the Free World」を唄ったというニュースが目に飛び込んできたのでした。パール・ジャムのレパートリーにもなっている、ファンの間では有名なアレです。

なんなの……。カブス観戦のために来てるんだろう(だろうも何も100%そうだよ)から、空いてる時間は観光でもして日本を楽しんでねーとか思ってたけどさ……。唄ったとなれば話は別だよ!!! 22年ぶりに日本で唄ったのがジャックんちのライヴなのかよーキエーーー!!!!!

ここ日記なので記録として残しておきます。最初に発見されたのは3月12日、ジャックの大阪公演バックステージ(おとぼけビ〜バ〜と交流)。その後3月13日の大阪場所(相撲)観戦→3月15日ジャックの東京公演1日目(飛び入りで唄う)→その後バックステージでビール片手にニコニコおじさんと化す→3月16日ジャックのフェンダーのインストアイヴェントを客と一緒になって観覧(水筒倒したりてうるさかったそうです。何をやってる……)→イヴェント終了後、ジャックがおとビのよしえさんにプレゼントしたギターのストラップ装着を手伝ってあげるおじさん→カブスvs巨人戦観戦→3月17日ジャックのヒスグラのインストアライヴを客と一緒になって観覧、スマホで撮影などする→ジャックの東京公演2日目を舞台袖で観覧→バックステージでつしまみれと交流→3月18日MLB開幕戦観戦→3月19日MLB開幕第二戦観戦(抹茶ソフトとか食べてた)

目撃情報見つからないけど3月15日のカブスvs阪神戦も観てたんでしょう。この試合はデーゲームだったから夜のジャックのライヴに飛び入り出来たんですねそうですかそうですね。一周回って腹立ってきたわ。しかしおとビと交流してるのはうれしいな。パールジャムがツアーするときFAに呼べばいい〜。


海外の音楽メディアでもニュースになってました。はーーーーー。


フルで撮ってるひといた。感謝〜!

ジャックは常日頃からライヴ中の撮影を嫌がっていて(ライヴのときくらいスマホをしまって目の前のことに集中出来ないのかとインタヴュー等でよくいっている)、それを知っている観客が殆どなのですが、このときばかりは……とスマホを取り出したひとは多かったようです。検索すると「ジャック、ごめん! でもこればっかりは」「ごめんなさいごめんなさい、でもこれは事件なので」とツイートしつつ動画アップしてるひとがわんさか見つかった。おかげで私も観られた訳でな…有難うございます……。動画はジャックの公式IGにもアップされていたので(スタッフが撮ったのかな?)今回ばかりは許してください。

はーーーーーもう本当につかれた。野球観ててくれてる方が安心だった、ライヴに飛び入りとかするおそれがないから。そりゃパールジャムは日本ではそんなに……武道館がまあなんとか埋まるくらいで、22年前の名古屋公演ではエディが「3階席はビル・ゲイツが買い占めたんだ」って自虐ジョークをかますくらいガラガラだったけどさ、ギャラもかなりだというから日本の呼び屋もなかなか呼べないだろうけどさ……。

フジに逆オファーが来たとき日高さんが断らなければな……と今でもうらめしく思ってしまうけど、まあ楽しい思いをして帰ってくれたのならいい。気が向いたらソロで来てくれてもいいのよ。はー。

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小林建樹ワンマンライブ『BLOSSOM』@Com.Cafe 音倉

という訳で心は千々に乱れたまま(エディ心労)小林さんのライヴです。雨の下北もよいものです。いやー本当に同じ演奏というものがない、今回ピアノもギターもかなり変わっていた。勿論楽曲のコード進行は同じなのだが、曲間のブリッジ、イントロやアウトロに新しいコード展開が加わっている。それがかなりジャズ寄り。耳馴染みのある曲も多かったのにも関わらず、演奏の様相は随分変わった印象。

目に見えて新しいことしてるな、と感じたのはギターで、一曲のなかでフィンガーとピックを使い分けていた。指で弾いたあとすぐにピックでコード弾きをするため、ピックを口に咥えて演奏したりもしていた。そのギターで「満月」を聴けたのはよかったなあ。

最新作、まさに出来たてほやほやの『BLOSSOM』リリパでもあり、ご本人も「『BLOSSOM』からいっぱいやります」といっていたけれど、蓋を開けてみればバラエティに富んだセットリスト。『BLOSSOM』には近年のライヴ(こう書ける日が来るとは!)のレパートリーからの楽曲も多く収録されており、ようやく音源化されたといううれしさもあった。アルバムタイトル、花が描かれたアートワーク、リリースされた季節と、「春」という隠れ(?)キーワードがあり、歌詞に「春」が出てくる曲が意識的にチョイスされていたような印象。「歳ヲとること」とかね。

以前の比率としては、既に音源になっているものをライヴでやることの方が多かった。そして復帰(といっていいのか)してからの小林さんのライヴは独演で、ギターかピアノの弾き語り。バンドサウンドアレンジの楽曲が独演だとこうなるのか、と興味深く聴いていた。一方、ここ数年でリリースされた音源は宅録色が強い。いわゆる“生演奏”は鍵盤とギターだけ。それにPC上で様々な音を加えている。

『BLOSSOM』はライヴ会場で販売されるとことが判っていたけれど、早く聴きたくて(あと物販の際話したりサインもらったりというのがどうも苦手なので)通販で購入していた。音源で初披露されたものとライヴから発表されたもの、そのどちらにも属する楽曲が収録されていた。「Air」や「Scream」は、えっ、これ音源化されてなかったっけ? と思ってしまうくらい馴染み深い曲。ライヴで親しんでいた楽曲がこういうアレンジでレコーディングされたのかと驚き、そしてこの日、再び“生演奏”で独演されたものを聴く。楽曲の骨肉が剥き身で差し出される。なんて贅沢。

そしてジャズ。もっと細かくいえばサンバジャズ、ボサノヴァ。窪田晴男曰く「随分南米行ってる」リズムとコード展開による長年の曲作りが、演奏にも色濃く現れていた。そしてこの集中度の高さ。これも窪田晴男の弁だが、「毎回点で物事と付き合う、演奏をしてても前の演奏の事を持ち出す事が少ない、3分半くらいの間に自分を全部投げ出せる集中力があると言う事で、ポップスをやるには向いている」という評をまざまざと思い出した。「3分半くらいの間に自分を全部投げ出せる」。

勿論ライヴ1本をやりきるコンディショニングは考えているだろうし、MCの内容もしゃべり方も練習しているそうなので構成はかなり練っているだろう。それでも“自分を使い切る”かのように唄うその姿には圧倒されてしまう。そうそう、今回声がすごかったのだ(いつもすごいが)。芯がより太く、より鋭くなったかのような声。通常では裏声に切り替えていた箇所を地声で唄いきる場面が増えていた。“刺さる”声だった。

MCといえば、いいたいことは沢山あるようだったが、観客のことを考えてセーブしているような印象も受けた。「僕がいくらネットのニュースを見て『世界は最悪だ』と思っていても、あれって見ているひとの興味に寄せた項目が表示されるでしょう。だから同じGoogleニュースでも、僕が毎朝見ているものと、犬とか猫が好きでその画像をよく見てるひとが目にするニュースは違う。話が合う訳がない」「食べものの話だとそういうことはあまりないでしょう。だから大根は肌にいいって話をするんです。大根、オススメですよ」。話したのは大体こんなこと。アルゴリズムとエコーチェンバーの功罪をこういうわかりやすい喩えで話す小林さんの優しさに、少しばかりの諦めと投げやりな気持ちを感じて胸が詰まる。

だからなのか、今回の歌には怒りすら感じる場面があった。セットリストに「トリガー」(!!!)が入っていたこと、それが鳥肌が立つ程の名演だったことがうれしく、同時に悲しくもあった。「自分のつくるメロディーは、刻むメロディーと伸ばすメロディーとふたつに分けられる」というアナライズの例として「No.1」と、この「トリガー」を続けて演奏したのだが、そうした自身を分析する冷静さと、現状への激情が同時に差し出される。こちらがドキリとするような溟さを時折見せるのが魅力でもあるが、同時にこのひとが無事でいますように、と祈らずにはいられなくなる。「『BLOSSOM』の出来がいいか自分ではよくわからない。信頼しているひとがほめてくれたけど」「去年は本当にどんどん曲が出来たけど、今は全く曲が出来ない」と話していた。やりきったからこそだと思われるが、今はゆっくり休息をとってほしい。

世界は最悪だ。それでも生きていかねばならない。野田秀樹の著作『21世紀を憂える戯曲集』『21世紀を信じてみる戯曲集』を思い出す。

楽曲提供者として仕事をしていた時代の話もしていたが、90年代の「ファジーな感じ」(ファジーって言葉流行ったよねえと同年代は頷く・笑)を振り返り、今回のアルバムは「綺麗に散らかす」ことにしたとのこと。「コンピュータでつくってると、0.0001くらいの誤差もキチッと揃えられるんですよ。それを敢えてズラしたり」。このひとはずっとポップスを愛し、アナライズに明け暮れている。そして、ポップスを制作することの難しさを追究し続けている。

振り返りといえば「ナナコロビヤオキ」がつくった経緯についての話は興味深かったな。「自分の曲を、依頼されてではなく自分から唄ってほしいなと思ったのは
3人しかいない」。そういうひとと出会えていること、前述の「信頼しているひと」がいること。その存在が小林さんにいることがうれしくもあった。

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(セットリストは公式の更新以降)

Setlist(オフィシャルサイトより

Ag:
01. ブレス(『Emotion』)
02. 魔術師(『Gift』)
03. 斜陽(『Music Man』)
04. 君はそれが言いたいだけ(『Gift』)
05. 満月(『曖昧な引力』)
06. Scream(『BLOSSOM』)
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Pf:
07. 最初のメロディー(『Blue Notes』)
08. 祈り(『Rare』)
09. No.1(『Gift』)
10. トリガー(『Rare』)
11. ナナコロビヤオキ(『BLOSSOM』)
12. ヘキサムーン(『Music Man』)
13. キナコ’87(『BLOSSOM』)
14. 早春(『BLOSSOM』)
15. 歳ヲとること(『曖昧な引力』)
encore
16. Blossom(『BLOSSOM』)
17. ハルコイ(『BLOSOOM』)

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小林さんの音楽が聴けたので私は楽しかったしとてもいい日だったよ。雨も好きです