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2023年01月08日(日)
壽 初春大歌舞伎 第二部

壽 初春大歌舞伎 第二部@歌舞伎座


やーめでたく気持ちのよい演目揃い。年明けならでは。どちらも神奈川を舞台とした作品なので、売店で神奈川名物が売られておりました。これっていつから始まったっけ。特産物がわかって楽しいし、支援にも繋がればうれしいことです。

■壽恵方曽我
幸四郎と猿之助が曽我兄弟を演じます。このふたりの踊りが観られるってだけでも有難いのに、白鸚、幸四郎、染五郎の高麗屋三代が揃います。めでたい。
万歳(門付=大道芸)となり、工藤の前に現れる兄弟。荒々しい兄五郎は終始足を踏み鳴らし、弟の十郎はたおやかに舞う。三番叟を基とする足拍子がリズミカルに鳴り、五穀豊穣への感謝となる。
舞台には鶴亀、そして干支うさぎが散りばめられ、衣装も色彩華やかでかわいらしい。そろい踏みの見得が絵になること!

■人間万事金世中 強欲勢左衛門始末
イギリスの戯曲『Money』を黙阿弥が翻案し……とのことで、誰だそのイギリスの劇作家ってと調べたらあの「ペンは剣よりも強し」のエドワード・ブルワー=リットンだった。そもそもこの格言が『リシュリューあるいは謀略(Richelieu; Or the Conspiracy)』からの台詞だというのも初めて知りました。ひとつ賢くなった。
-ペンは剣よりも強し┃Wikipedia
明治維新以降の風俗を世話物として取り入れた「散切物」。思えば初演時はこれが「現代劇」だった訳で、聴き取りやすい言葉遣いだったり洋装だったりと、肩が凝らず楽しく観られる作品でした。
彌十郎さんの主演舞台は6年ぶり、お父上と兄上(=初世坂東好太郎三十七回忌、二世坂東吉弥十三回忌)の追善狂言『修禅寺物語』以来。お金が大好き辺見勢左衛門を演じます。やはり『鎌倉殿の13人』効果なのだろうか。開演前や幕間でも、“時政パパ”の話題があちこちから聞こえました。
引き戸がパン! と開き、彌十郎さんの大きな身体が現れた瞬間、客席からほおぉ…というような嘆息と声が漏れる。思わず頬が緩む。うれしい。平成中村座『双蝶々曲輪日記 角力場』の濡髪長五郎登場シーンを思い出しました。
筋としては実直に働いてきた林之助が遺産を手に入れ、やはり実直に働いてきたおくらと幸せになるお話。揃いも揃ってお金が大好きでいじわるでがめつい勢左衛門一家はシンデレラの継母とその娘たち的なポジションです。
しかしこの家族、なんだかんだで呑気というか気のいい奴というかお調子者というか、あんなにお金にがめついのに、最後はそれくらいのご祝儀もらえればいいんだ……と苦笑してしまう。愛嬌あるわー。あれよね、ちょっといぬとかりすとかの動物っぽい。ごはん貰ったら以前のこと忘れちゃうみたいな(暴言)。これは憎めないな、実際に近くにいたら嫌だけど(笑)。彌十郎さんの「ニン」を味わえるよい演目でした。
芝翫さん演じる五郎右衛門が遺言を読み上げる場面があるのですが、デタラメ読んでるんじゃない? それ白紙なんじゃない? といわれ、「勧進帳じゃあるまいし」と答えます。何度も弁慶を演じている芝翫さんにこの台詞をいわせるってところ、洒落てるし粋ですね。

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・『鎌倉殿の13人』“時政パパ”こと坂東彌十郎、6年ぶり歌舞伎座主演作にかける意気込みを語る┃SPICE
「明治というのは、それまで日本が歩んできた時代の中で、かなり大きい変化が起きたと思うんです。今からみると江戸から明治というのは、ちょっとの変わり目のような気もしますけれども、当時の人たちにとっては大きな変わり目だったはず。そこがおもしろい。この芝居は時代の先端を行っていたのかもしれない。松竹新喜劇にも、新派にもなっただろう作品だと思いますが、それを歌舞伎でやる意義を改めて考えたいですね。」

・1月お勧めのお食事メニューをご紹介┃歌舞伎座
「坂東彌十郎丈監修!新春を彩る、壽 初春大歌舞伎 第二部『人間万事金世中』の辺見勢左衛門のように、“強欲”に因んだ御膳。
彌十郎丈の好物の「すき焼き」や、お正月の縁起物食材「数の子」など、初春の華やかな御膳を歌舞伎座で是非ご賞味下さい。」
『「強欲御膳」坂東彌十郎丈サイン入りお品書き付』3,600円也。商機を逃さない松竹(笑)

・2020年初春特別公演『人間万事金世中』かいせつ┃前進座
こちらによい解説。前進座でも上演されていたんですね。
「文明開化がもてはやされたこの時代、『人間万事金世中』のセールスポイントは、1840年にロンドンで初演されたエドワード・ブルワー=リットンの戯曲『マネー』の翻案である事だった。作者河竹黙阿弥に『マネー』の筋を教えたのは西洋通として名高い東京日日新聞社長兼主筆の福地桜痴である。」
「主人公林之助の立身出世譚、おくらとの純愛物語の体裁を取ってはいるが、この芝居の筋を進め行くのは金である。徹底した金の亡者であるという点で辺見勢左衛門とその妻おらん、娘のおしなこそがこの芝居の陰の主役といえるのだろう。」


やっぱり大向うはいいな。コロナ禍を理由に不要論をぶつ輩がいましたが卍卍卍やっぱり声が飛ぶっていいよおおお!