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2022年08月27日(土)
八月納涼歌舞伎 第三部

八月納涼歌舞伎 第三部@歌舞伎座


歌舞伎の底力に感服しつつ、行政なんとかしてくれと歯ぎしりもしますよそりゃ。こんなことがいつ迄も続いていい訳がない。しかし本当に、歌舞伎役者と公演に関わるスタッフはすごい。

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ソニマニの前日、第一報。

・8月19日(金)第三部 公演中止のお知らせ┃歌舞伎美人(8月18日)
まあ予感はしていた…一、二部がバッタバッタと閉まっていくのを横目に、そろそろきそうだなとは思っていた……。そして、一、二部ともに1〜2日で代役を立て再開しているニュースを見て、流石だと思いつつも、興業側の切迫感もひしひしと感じた。

・第三部 8月20日(土)より公演再開のお知らせ┃歌舞伎美人(8月19日)
ソニマニに出かけたりスパークス祭りにどっぷりだったので、この知らせを見たのは8月21日。やっぱりなあ、すごいなあ。しかし無邪気にすごいすごいとも言い切れず。

昨年は各部の出演者とスタッフを完全に分けていたので、ひとつの部で感染者が出てもその部だけを閉めることでなんとか興業を成り立たせていた。しかし今は規制緩和を受け、複数の部に出演する役者が増えた(通常は当たり前のこと)。今回感染者/濃厚接触者が出たことで、ふたつの部が休演になってしまった。

現状、感染するのはもう仕方がない。責める道理なんてない。ショウ・マスト・ゴー・オンは、本当に困難で厳しい状況だ。観る側としては、配役変更は残念ではあるが、幕を開けてくれたことに感謝するばかり。そんなこんなでハラハラしつつも、それを逆手にとる舞台上の役者たちに大いに笑わせてもらい、泣かせてもらい、唸らせてもらいました。

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染五郎くんと團子くんがふたりでやる予定だった四役を、四人の役者に割り振っている。よって、ふたりが早替えで出てきて湧くであろう場面が妙に間延びする。ほら、早替えのときって、とってつけたような時間稼ぎのやりとりがあるじゃないですか(笑)。今回それをやる意味というのがほぼなくなるのね……事情を知っているとこれはこれで面白い。

しかし代役にしろ、それに伴う演出変更にしろ、1日の稽古で再開したってことよね? しかもこれ新作ですよ? すごすぎるがな……。本来の役に戻って出てきた笑三郎さんが「落ち着くわ〜」といって大ウケでした。

目玉は、なんといっても染五郎くんの代役を務めた猿弥さん。年明けも『岩戸の景清』で松也さんの代役を務め大評判だった。安心と信頼の市川猿弥! 芝居は安定、踊りも軽やか、ちょいちょいアドリブも挟む。重ねていうけど新作です。段取りも、踊りの振付も一から覚えなければならない。いや、本役の段取りや振付に上書きせねばならないのだから、より難しいだろう。踊り比べの場面では、「三番叟」等の古典を応用したものもあったけど、「ウエスト・サイド・ストーリー」風のモダンな踊りもあった。それを流麗に舞っている。感嘆しきり、ため息が出る。同じく團子くんの代役を務めた上で本役も演じた隼人くんもお見事。

本来の話をしますと、長崎の島に流れ着いた弥次喜多が、人助けをしたり、悪者を懲らしめたりしつつもちゃっかり泥棒とかして、ようやく江戸に戻ってきたら疫病で歌舞伎座が大ピンチ、買収話も浮上して……? という筋立て。ブラックな労働環境や、社会が荒むと文化や芸能が虐げられるさまをチクリと描き、「でも、こういうときこそ芸能が皆を元気づける」と宣言する。ノンシャランとした振る舞いの猿之助さんがいうから尚更響く。

寿猿さんもご健在。初っ端の台詞を一部飛ばしてイジられる場面はご愛嬌(また若手たちがうれしそうに、でもあたたかくイジるのよ。「まだいいたいことがあるんじゃねえのか」とか。それを受けてキャッとなる寿猿さんがまたかわいかった)。「あんたたちのお父さんもお祖父ちゃんも曾お祖父ちゃんも見てきたけど、それに比べりゃまだまだだよ!」の台詞には説得力しかない。その上で「アタシがあんたたちの、歌舞伎座の行く末をいつ迄見守れるかわからない、だから精進しなさい」みたいなことをいうのよね……神妙に、かつ決意を込めたような表情で頷く一同。虚構と現実が交差する瞬間。ここには涙が出ました。こういう場を用意するところも、一座の度量ですね。

それにしても猿之助さん。「これ以上はいえねえや、竹本さんお願いしまーす」と義太夫さんに続きを振ったり、復帰したての幸四郎さんに「ずる休み?」なんて話しかけたり(不意打ちされた幸四郎さん、すごい慌てて「ずるじゃねえよ!」と答えていた)、舞台上では天真爛漫に振舞ってい乍ら全体をきりりと締める。すごいとしか……第二部の代役も務めて、第三部の演出変更も手掛けてるんですよ? 本当にすごい。

あと小道具と、その操作がすごくかわいかったです。カニとかタコとか。ほんといい座組。文明堂ネタは言わずもがな、鳩の精はあれ絶対鳩サブレーだろってな扮装だし、興業に関わる商店や製造業にも光を当てるその気配りにも泣き笑い。こうした協力体制に拍手を贈りつつ、やっぱりお上に怨み言の一つもいいたくなりますね。なんとかせえや。

三階席最前の花道横=宙乗り真横だったので、飛んでくる寿猿さんや主役四人もめちゃめちゃ近くで観られました。目が合った! 私を見た! くらいいわせてください。寿猿さんのゴンドラ底には「歌舞伎役者最高齢宙乗り ギネス申請中!」、猿之助さんの褌には「歌舞伎座復活!!」と書かれていて(幸四郎さんの褌はヒラヒラしててちゃんと見えなかった……)ニコニコしました。

配役が発表になったとき「総長シー子!? どんなん??」とドキドキしていた新悟くんも立派でした。映えるわ〜。てかあんなに長時間踊りの見せ場があるとは……演出変更の関係なのか、それとも? しかしたっぷり踊りを観られてうれしかったです。

本水の立ち回りに文字通り涼しくなり、すっかり納涼気分。一部を観ていないのに(…)アトム弁当と、おなじみめでたい焼を買って帰りました。こちらもお店の方の気配りが素晴らしかったな……有難うございました、おいしかったです!

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・世紀の美少年の代役は「ぽっちゃり55歳」…目を疑う歌舞伎座の奇策が成功した理由┃読売新聞オンライン
「ピンチをチャンスに変えるには、滅多に見られないものにしてしまおう」
「でもまあ、みんなこういう状況には慣れている」
「鉄則として、代役の人はふざけてはいけないんです。周りは色々いじってもいいけど、代役の人がふざけてやると本当にオチャラケになってしまう」
「まぁ、役者は家で覚えりゃいいけど、すごいのは衣装と床山です。1日で作ってくれた。その心意気が一番ありがたい」
「ぜひ、見に来ていただきたい。公演は30日までなので(染五郎と團子も)もしかしたらギリギリ戻ってこられるかもしれない。今からチケットを買っておいてはどうでしょう。」
猿之助さん、金言しかない。その上、二部の代役は「一度も見たことがないまま、代役を引き受けた」。評判は伝わっていたけど、怪物っぷりに震撼すらしました

・歌舞伎俳優 市川寿猿さん 92歳 公演でゴンドラでの宙乗り披露┃NHK
寿猿さんは初宙乗り。「本人がうれしそうなので、それがいちばん」「92歳でも現役で舞台ができるという姿を見て、少しでも観客の力になれば、これほどうれしいことはないと思います」。猿之助さん、ホントにもう……

・市川染五郎と市川團子が過去作&新作を語る! 8月は「弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」で会いましょう┃ステージナタリー
うん、観たかった、観たかったよ……でも仕方ない。29日から復帰したそうです

・そういえば浅野和之ネタがあったんだけど、あれ日替わり? それとも本当に浅野さんいらしてたの?