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2022年04月23日(土) ■ |
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高橋徹也 25周年記念 Discography Live『ある種の熱 × 大統領夫人と棺』 |
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高橋徹也 25周年記念 Discography Live『ある種の熱 × 大統領夫人と棺』@Star Pine's Cafe
再現ライヴということになるが、再現というにはあまりにも現在の音になっていた。そしてその音こそが、今の高橋さんにとっては「本来あるべき姿」(後述ブログより)ということになる。頭のなかで鳴っていた音楽を、ようやく外に出せたという思いがあるのかもしれない。
--- 高橋徹也(vo, g)/ 鹿島達也(b)/ sugarbeans(key)/ 脇山広介(drs)/ 宮下広輔(pedal steel) ---
2013年、ちゃんとCDを買って聴いた最初の高橋さんの作品が『大統領夫人と棺』だったなあ。そんなことを思い出しつつ、700円になっていたドリンク代に怯みつつ(現状を考えれば尤もだ)、久しぶりのSPC。
2005年リリースの『ある種の熱』、2013年リリースの『大統領夫人と棺』。スパンは8年。その間全く音沙汰がなかった時期があるという話も伝え聞いている。以降はコンスタントに作品を発表し、ライヴも定期的に行い、さまざまな企画を形にしている。『大統領夫人と棺』はブレイクスルーな作品ともいえる。
その間に出た『The Royal Ten Dollar Gold Piece Inn and Emporium』(2011年のライヴを2013年にDVD+CDリリース)と照らし合わせ乍ら聴いたところもあった。このライヴアルバムは、当時の最新作『ある種の熱』と、レコーディングを待つ『大統領夫人と棺』両方のナンバーが演奏されている。個人的に思い入れがあるアルバムで、そのときのメンバーである上田禎さんや菅沼雄太さんの演奏が、オリジナルの音源よりも耳に馴染んでいるくらいだ。特に「惑星」は、導入の上田さんのピアノソロをすぐに思い出せるくらい何度も聴いたし、今もよく聴く。
トラック順に演奏されるのが前提なので、二曲目に「惑星」がくるのは分かっていた。佐藤さんが弾き始めたイントロは、勿論上田さんのそれとは違う。しかし、今はこの音こそがしっくりきた。どちらの演奏も素晴らしいことに違いないが、今の編成で演奏される楽曲の完成形を見た気分だった。
次々に、今のバンドで見えてくる曲の顔に気づかされる。「Open End」の、宮下さんによるペダルスティールソロ。「ハリケーンビューティ」の、エフェクターを噛ましたノイズ(これは不可抗力かもしれないが)とブリティッシュロックテイスト溢れるギター。「Key West」「不在の海」の、組曲としての役割と楽曲そのものの魅力。
「大統領夫人と棺」が象徴的だった。一触即発の、火花が散るようなリズム隊のやりとり。鹿島さんがどんどん脇山さんに迫り(物理的にも近づいていた)、バックトラックの域を逸脱しかねない演奏を繰り広げる。その音を背に、呑まれることなく(とはいえ、一瞬珍しい箇所で歌詞が飛んだ。それ程の演奏だったので納得がいく)詩と歌を乗せていく高橋さんの技量と度量。バンドとフロントマンの闘いにも、信頼感の顕れにも映る。鹿島さんは脇山さんと高橋さんが乗ってくるのを踏んで、あの演奏を仕掛けているのだろう。
それにしてもまー演奏がすごい。毎回いってるような気もするが。コロナの影響もあり、この編成でやるのは3年ぶりとのこと。プロフェッショナルな集団で、各々の活動もある。フロントマンの企画によって編成が変わるし、バンドといっても所謂運命共同体ではない。しかし、このメンバーが集まったときにしか出せない音がある。それぞれのフィールドで培ったスキル、生まれたアイディアを持ち寄りぶつけ合う。まるで道場のようだ。「(外野を)黙らせてやる」とつくった『ある種の熱』、「このような緊張感を持ったものを今作れるかわからない、がんばってたんだなあ」という『大統領夫人と棺』の8年を繋げたのはこのバンドだ。
バンドサウンドを決めたともいえるのは脇山さんのドラミング。彼が参加したことで、このバンドの「ピースが揃った」ように思う。ロックにも、ジャズのアプローチにも、インプロにもピタリと対応する。激しい演奏のやりとりから、格闘技の受身のように歌を包み込んで聴き手に届けるドラムだ。「俺は彼のビートに乗っかるだけ」「幸せな気分になれる」と紹介された脇山さんは、キャ〜照れちゃう、ってな感じで顔を両手で覆っていたが、本当に嬉しそうだった。
自分の作品をつくっていなかったらレコードを買い続けるだけの人生だった、全財産をレコードに注ぎ込む人生だった。こうして聴いてくれるひとがいるから、レコードを買うお金を我慢して(笑)アルバムつくったりライヴしたりしてる。「感謝バカ」(キラーワード!)にはなりたくないと前置きしつつ、まっすぐに感謝を口にする。鹿島さんですら「その話初めて聞いた」という薔薇イミテーション時代の思い出話も飛び出す。1月のライヴでもそうだったが、ご自身が50歳を迎えたこと、疫禍、災害、戦争といった、より具体化した社会不安を前に、照れ乍らも伝えておかなければ、という言葉が零れ出ているように感じた。25周年で50歳。5年くらい前から分かってたんですけど(笑)、そこ迄は突っ走ろうと決めていた。でも、そこへ達した自分のなかに、まだ炎があると気付いたのでまだまだ突っ走りたい、といった。聴いているこちらも背筋が伸びる思いだった。
菊地成孔さんが高橋さんを評した言葉を思い出す。「目が綺麗でね、天才的な感じで。なんていうんだろな…ちょっと神経質で軽く狂ってるんだけどものすごい親切なひとっているじゃない。音楽家でいる……ちょいちょいいるんだけど。そういう方でしたね」。音楽への愛情と狂気は紙一重。それを炎というのなら、まだまだ見たい炎がある。
同時配信(アーカイヴもあり)されていた今回のライヴ。ステージとフロア中央辺りの左右に固定カメラ、ステージ前にクローズアップ用の一眼レフ。それぞれにスタッフがついており、一眼レフ担当の方は前方客の視界の妨げにならないよう着席した上で、手持ちのカメラを掲げっぱなし。当然スイッチングをするオペレーターもいる。モニターも見ることが出来る位置だったのでときどき目をやっていたのだが、とても綺麗に撮れており臨場感もあった。コロナ禍により一気に進んだ配信ノウハウを考える。同時にそれに慣れ、敬意を忘れがちな自分たちのことも考える。照明もPAも、その背後にはスタッフがいる。ブッキング、入場整理、受付、バーカウンター、物販……現場には多くの働く人間がいる。
この日高橋さんはメンバー紹介を何度もして、全員に告知を促した。「ここはスターパインズカフェ!」とハコの存在を知らせた。いつもそうではあるが、今回は特に、現場者がコロナ禍で失ったものの大きさを感じさせた。「これで終わるつもりだったんですけど、やっぱりね」とアンコールは「夜明けのフリーウェイ」。ミラーボールの煌きは、配信視聴者にも届いただろうか。
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setlist
『ある種の熱』 01. 5分前のダンス 02. 惑星 03. 夢の中へ、霧の中へ 04. Blue Song 05. 夜明け前のブルース 06. 5 minutes 07. La Fiesta 08. ホテル・スターダスト 09. 夏の出口 10. 赤いカーテン 11. Open End 12. 夜のとばりで会いましょう --- 『大統領夫人と棺』 13. ブラックバード 14. ハリケーンビューティ 15. Key West 16. 雪原のコヨーテ 17. 不在の海 18. 大統領夫人と棺 アップライトで実際に弾いたことあるのかなー 19. 帰り道の途中 --- encore 20. 夜明けのフリーウェイ
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写真撮るの下手くそ選手権。何故このタイミングでシャッター切ってしまったんだ自分よ…連写すれば良かった……。
・感謝 - ライブ後記 4/23吉祥寺Star Pine's Cafe┃夕暮れ 坂道 島国 惑星地球 他でもない僕自身がようやくこのアルバムを表現できる器になれたということです。音楽って不思議なもので、いつも作曲した自分の先を生きているものなんですよね。だから後になって初めて、曲やアルバムの本来あるべき姿に出会える気がするんです。今回のライブを通じて、ようやくこの二枚のアルバムで描きたかったものを歌えたと思うし、とにかく演奏していて幸せでした それを聴けたこちらも幸せ。
・toshiakiyamada┃instagram リミックス&リマスターでリイシューされた『大統領夫人と棺』は『新しい青の時代』と同じ2013年発表作。その年に仲良くなったから来年でタカテツさんと僕は友だち10年記念ということになる 山田稔明さん、当然のように物販手伝ってらした。心のなかで手を合わせた。
“monologue” @ 吉祥寺スターパインズカフェ(2013年6月27日)┃monologue いまいち共通項の見えない3人に「ビートルズでもやる?」という流れに「自分ストーンズ派なんで」と切り込んできたタカテツさんの言葉が可笑しくて「みんな日本語を大事にするSSWだから」という理由で山下達郎「RIDE ON TIME」に決定 プラットフォームの更新含め記録をきちんと残している山田さん。おかげで読み手は混乱せずアクセス出来、非常に有難い。
・monologue┃I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE そう、このときのスリーマンに小林建樹さんが出ていて、そこで初めて高橋さんのライヴを観たのだ。そしてその場で『大統領夫人と棺』のCDを買った。ということで、私も高橋さんのリスナー10年目。もう? という心持ち。まだまだヒヨッコな気分。
先週行われた小林建樹さんの配信ライヴのことも思い返す。このひとが6年ぶりに、手間もかかり、収益もそう大きくはない(だろう)配信ライヴを開催した意味も考えた。そんな50歳を迎えた小林さんと高橋さんの共演が再び実現することを、欲深いリスナーは密かに……じゃないな、おおっぴらに願っています。
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