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2019年03月23日(土) ■ |
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愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』 |
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愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』@TBS赤坂ACTシアター
ワタシにとっての『マンマ・ミーア!』である『いやおうなしに』と同じニオイがしたので迷いなくチケットをとりました。河原雅彦からの企画立案ですし、間違いなかろうと。鈴木裕美と並び、個人的に「自分発信であろうが請負仕事だろうが確実に面白いものをつくる」と信頼出来る、数少ない演出家です。不安があるとすれば自分の方で、O.L.H.ことOnly Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホールはライヴにも通いつめるようなリスナーだったけれど、レキシとその楽曲のことはあまりよく知らないということでしょうか。まあ、河原総代のつくるものだからきっと大丈夫(それくらい信用している)。
という訳で、たいらのまさピコとして総代が仕切ったのはレキシのナンバーでつくるミュージカル。まず楽曲ありき、ですので構成の腕が問われます。『いやおう〜』では福原充則による脚本がもう、打ちすぎた膝の皿が割れるくらいな素晴らしさでしたが、今回のまさピコ&大堀光威による上演台本にも唸りまくりです。ミュージカル上演を前提にしている筈もない楽曲たちをどうストーリーに当てはめていくか。レキシのアトラクションパークを舞台にすればいいんじゃーん。大化の改新アトラクション、墾田永年私財法の時代アトラクション、縄文・弥生時代のアトラクション! レキシーランドにやってきた登場人物たちは、アトラクションに参加し、レキシナンバーを唄い、踊り、観客は笑い、拍手し、稲穂を振る。一緒に唄って大団円、♪縄文式、弥生式、どっちが好〜きっ、どっちもドキ(土器)♡
ホント全方位に目が利くな……総代とKUNIOこと杉原邦生は鳥の目を持つ演出家だと思っていますが、とにかく空間認識力がはんぱない。劇場最前列と最後列の観客から舞台がどう見えるか把握出来るし、各シーンの核になる人物、美術の置きどころというか、観客の目が向くように持っていく誘導力も強い。そして人脈づくりな……アンタの依頼ならそりゃ受けますよってなキャストそしてスタッフ。お侍ちゃんが体調不良につき降板、裏方だった前田悟(!)が代役侍略してだいざむとして出演していたのには驚いたが(当日劇場で知りましたわ)、もともと表方でもやるひとなのにごめんね代役でとかいじりつつ、しっかり見せ場を用意しているところにも、転んでもただでは起きない魂が感じられました。オーディションからのキャストにも見せ場を作っていて、なんつうかハッピーなカンパニーだわあとニコニコして観た。
あとお祭り好きのところとドリフリスペクトなところが、まるまる機能してるのがたまらんよ……山車に神輿で転換もスムーズ。『TEXAS』でも使われたこの手法、ハレへのスイッチが入るという意味でもめちゃめちゃブチ上がりますよね。主人公の二階建ての家はどうにもドリフのセット(いつ屋台崩しが起こるか土器土器してたわ)、それらを人力で移動させてヘロヘロになってるテイのスタッフにも焦点をあてる。アトラクションへの献身には光と影がある。オリエンタルランドのパワハラ訴訟のことを思い出さずにはいられない。それでもショウマストゴーオン、犬は吠える、が、キャラバンは進む。ミラーボールは客席の頭上でまわり、蛍光LEDとブラックライトの照明のエレクトリカルパレードはラブ&ピースに満ちている。夜にならないと開幕出来ないパレード、闇がないと成立しないパレード。どメジャーの現場にしっかり毒を入れてくる。カー、痛快ですな。
これを舞台上でうまいことまわしまくるのが八嶋智人。劇中劇、楽屋落ち、観客いじりと、ちょっとズレると鼻白むMCの役割、流石です。前述の転換スタッフも、実際にはヘロヘロになってる様子は見せませんよ。そこを「今日マチソワ! 衣裳替えの多い役者もセットぐるぐる回すスタッフもへろへろ!」とフックに使う塩梅もいい。一幕目は正直「このままのペースでいったら、あまりにも山本耕史が勿体なくねえか……」なんて思ったりもしましたが、二幕目でガッサガッサ風呂敷たたみましたね。焦らされた感はありましたが、その分待ってました! 感がすごかったです。そうだよねえ、レキシものなんだから土方歳三出てくるわねそりゃ、と出てきたから思うのであって、その発想を思いつくところがまたすごいよねえ。それにしてもまー、ホント山本さんは八嶋さん曰く「なんでも出来るよね、エライネー(棒)」。歌もダンスもギターもモノマネも、ここ迄やったらあとはマジックも?! と時間が経つにつれ期待しましたがそれはなかった(笑)。
個人的に驚かされたのは佐藤流司。おお、今打ち込んだら予測変換で出てきた。不勉強で今回初めて知ったのですが、劇中ネタにしていたように2.5次元舞台で鳴らした方だそうです。いやあ、「誰あのひと、なんかエラいデキるひとがいる!」と瞬時に思わせる発声、身のこなし、そして殺陣。一箇所めちゃくちゃカッコつけるところで台詞を噛むという、逆に場をかっさらうヤラカシもあり、「持ってる」感がすごかったです。カーテンコールで「噛むとウケるんだなって思いました……」としょんぼりしていたところに真面目さが窺えた(笑)。鈴木勝秀演出の『R&J』でロミオを演じるので、俄然楽しみになってきました。
そんなこんなで真面目な話、墾田永年私財法がどんな法だったか、今回の歌でようやく理解しました。レキシってすご〜い! ♪縄文式、弥生式、どっちが好〜きっ、どっちもドキ(土器)♡を口ずさみ乍ら帰路に着きました。
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