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2017年07月12日(水)
愛すべき実店舗の話

ウチのtwitterをご覧になっている方はご存知でしょうが、四月にShobaleader Oneを観てからというもの、Squarepusherにズッパリはまりなおしています。『Just a Souvenir』以降疎遠になっていた。おれがわるかった、もう目を離さないようにしますと空白の数年間を埋める作業として過去のインタヴュー等を探しまわり、芋ヅル式でデビュー〜『Ultravisitor』前後の記事なんぞも発掘している最中です。

で、やはり時代の流れを実感するというか、『Ufabulum』リリースの頃くらいからwebの記事がドッと増えるんですね。逆に雑誌等の記事を探すのがすっごいたいへんというか、そもそも洋楽誌がないよという。彼が載りそうな雑誌ってもうrockin'onくらいしか残ってない。SNOOZERは一時期タナソウが執着? してくれてたので往復書簡が恒例になってたくらいですが(『Ultravisitor』時のインタヴューは、混乱していた時期のトム・ジェンキンソンという人物が垣間見えるとても貴重な記事だったと先日読みなおしてしみじみした)、今はもうない。remixもloudもない。あとはTVBros.くらいか?

そのうち小野島大が「rockin'onで『Damogen Furies』についてインタヴューした」とFBに書いているのを発見したので、バックナンバーを探しに行くことにしました。しかしまー、こーれーがー見つからない。まずバックナンバーを常備してる書店が少ない。あっても2〜3ヶ月前の号数冊しかない。そして音楽誌専門の古本屋がごそっとなくなっている。神保町界隈や中野ブロードウェイに行けば大概あったのに……って、そもそもバックナンバー探しに躍起になること自体が十数年ぶりなので、書店事情も変わってるよなあ。通販サイトは結構あるんですよね、実際号数がわかってるものは通販で集めている。しかしこのrockin'onに関しては二号連続でレヴューとインタヴューが掲載されているとのことだったので、中身を確認して買いたかったんですね。で、今も実店舗がある神保町の某店に行ってみたのです。バックナンバーを探し求めたことのあるバンギャなら誰もが知ってると思われるあのお店です。洋楽誌も豊富にあるとこです。

果たして目当ての号がありました。シュリンクされていたので、レジにいたちょっと怖い感じのおっちゃんに「中身を確認することは可能ですか?」と訊いてみる。「二冊迄なら開封していいですよ。表紙に載ってない? なんてアーティストですか?」と返される。「ええ、特集ページではなくレヴューとインタヴューが数ページ載っているみたいで。…スクエアプッシャーというテクノのアーティストで……」。

テクノか? エレクトロニカ、いや今ならエレクトロニックミュージックかと数秒のうちにいろいろ考えたがそんな細かいこというてもな、まあいいや。すると「おぉお、スクエアプッシャー?!」と予想外の反応。ああやっぱこういうお店だもの、名前は知ってるよねえと思っていると、たたみかけるように「ショバリーダー・ワン!」ときた。今度はこちらが「おぉお、ご存知ですか?!」と色めきたつ。社交辞令でもうれしいわあ、なんて思っていると、レジの後ろを向いて何やらごそごそしている。すると店内に聴きおぼえのあるギターの音が……『Elektrac』の「Squarepusher Theme」やん。おおおおおい、即出ししてきたってことはプレイヤーに常備してるってことで(ストリーミングにしてもプレイリストに入れてるだろって速さで出してきたぞ)普段から聴いてるひとやん。

「ちょ、BGMが(笑)お好きですか!」「もちろんですよ〜やばいですよね、人力でこれやっちゃうなんて頭おかしい!」「ですよねえ、頭おかしい」「ベースはアレだから当然だけどドラムがもう!」「ですよね!」「人力で出来ると思わないでしょ、あれ(原曲)聴いてたら」「ですよねー、出来るんだっていう……思いつくだけならまだしも実践しちゃうんだから」。頭おかしいが賛辞で通じる、ベースはアレ、が通じる。「ソニマニ行けないか考えてて」「あ、行きます〜」「いいなー。これ(ショバ)をライヴで観れたらやばいですよね。今年のソニマニ、サマソニよりもいいんじゃないかって」「ですよね〜、あのメンツだともう……」気付けば「ですよね〜」ばっかり、ワカル(©夜廻り猫)のようになっていた。

話し込んでるうちに次のお客がきたので、お互い笑顔でお勘定。いやーもともとこの辺りが好きな友人やライヴ会場以外でスクエアプッシャー好きなひとに初めて遭った…うれしかった……。そして最初におっちゃんと書いたがこの話題の合いっぷり、きっと同世代だわ。失礼しました。他にもいろいろ話したんだが、「これが好きだからやっている」ひとの顔を直接見て、話が聞けて楽しかった。情報の羅列だけでは知ることの出来ない、ものごとの枝葉に気付かせてもらえる。実店舗ってやっぱりいいな、と思いました。

長々書いてしまったが、日記として残したかったので。おっちゃん有難う、音楽好きを迎えるお店がここにある安心感。うれしかったしたのもしかったです。また行くね。

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ちなみに『Damogen Furies』関連の記事は、ele-kingがwebと誌面の合わせ技で攻めてて流石に面白かった。野田努たよりになる。そして通訳を務めた坂本麻里子の力か、トムがリラックスして話してる感じなのがよい。
・ある意味悪夢、強力な幻覚剤 ──スクエアプッシャー、ロング・インタヴュー

とまあスクエアプッシャーについても書き残しておきたかったので。自分がいちばん音楽にドップリだった時期に現れた「若き天才」が、今も第一線で革新的な活動を続けていることについて素直に感嘆するし、その道のりについて改めて知りたいと思っている。

そして文献を漁りまくっている現在トリビアも増えまくっており、二次創作の予定もないのに年表とか作りかねない(笑)。