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2016年03月09日(水) ■ |
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『ヘイトフル・エイト』 |
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『ヘイトフル・エイト』@新宿ピカデリー スクリーン8
わーいタランティーノの新作ですよー。Ultra Panavision 70(オープニングでもドーンとロゴが出ましたね)! とのふれこみだったので大きなスクリーンで体験したかったのだが、新宿ピカデリーでスクリーン1にかかっていたのは先週迄だった……しかしヘイトフル8でスクリーン8、八並びで縁起もよろしかろうと。
スクリーン8でも確かに見え方は全然違った。どう説明すればいいか難しいのだが……細部迄撮られてる、捉えられてるというのは把握出来ても、後方にピントが合わないので、画面の陰影にかなりメリハリがつく。冒頭、長回しによってじっくりと撮られた広大な雪景色を注意深く見つめていたのに、駅馬車が忽然と現れたような錯覚を受けた。雪のなかで動いているものは、他に何もなかったのに。ある程度の距離迄近付いてこないと、こちらの目の許容範囲に入らないのだ。アメリカの広大な土地にぴったりなフィルムなんだな……と思わせるも、馬車が洋品店に到着してからは一転。密室のミステリーにその威力を発揮する。
いちばん手前にいる人物以外、どこに誰がいて、何があるかが目に留まりづらい。クローズアップによって初めてその存在に気付く。登場人物誰もが嘘つき、心理的にも物理的にも何を隠し持っているか判らない。そして誰もが話が長い(笑)ので、その台詞に注意を向けつつ、喋っていない人物たちが今どの位置にいるか、どこでその演説(と言ってもいいくらい、皆大仰に話す。そこがいい!)を聞いているか少しでも頭に入れておきたいのだが、それが出来ない。どこから何が襲ってくるか判らない緊張感が続く。そのうち自分も、雪に閉ざされたロッジのなかにいるような気がしてくる。
登場人物たちは差別意識の塊でもある。その差別意識を持つ者同士として対等でもある。南北戦争終結直後、北軍と南軍、白人と黒人、そしてメキシカン=ヒスパニック。賞金首の女性。タランティーノは彼らを、ヘイトフル・エイトとして分け隔てなく描く。そして分け隔てなく末路への花道を用意する。興味深かったのは、賞金首の女性の扱い。彼女の罪状を見た極悪人たちは、皆一様に眉をひそめる、あるいは絶句する。彼女がどのように、どういう理由で殺人を犯したのかが一切語られないのは、おそらく彼女がそれだけおぞましいことをしたからだ。言葉に出来ない程の。女性だから、というエクスキューズは一切通用しない。その罪により、彼女はこの場にいる男性たちと対等になる。
彼らは罵り合い、暴力の限りを尽くし、刻々と変わる状況により敵になったり味方になったりする。演者たちが活き活きと笑い、歯を剥き、唾を吐く。こんな彼らは他では観られない。タランティーノの作品でしか観られないチャームだ。そんな彼らが愛おしい。彼らがひとりづつ、やがて同じ道を辿る予感しかないから、もっとくだらない喩え話をしてくれ、汚らしい身の上話を続けてくれ、と思う。そのやりとりは、最後の最後で「リンカーンの手紙」は本物だったのではないか、と信じさせる魔法をかけてくれる。言葉の魔法だ。本当かもしれない、でも嘘でもいい。タランティーノのロマンティストな面が強く出ている。嘘だらけのなかに、真実が紛れ込んでいる。誰にでも平等に訪れるもの、それは死だ。三時間近くあったのに終わりが近づいてくるのがさびしかった。彼らと別れるのがさびしかった。
登場人物は回想シーンを入れても15人、ナレーションはタランティーノ本人。本編の四分の三程はワンセットの薄暗い室内。それなのにこの大作感、そして得られる満足感と余韻。プロダクションデザイナーは種田陽平。カラフルな瓶詰めジェリービーンズ、ミントのストライプ。それらが砕けて飛び散ったとき、ひとときの戦後の安堵も消えてしまった。終わりのないアメリカの物語。そしてそれはきっと、世界の物語。ぐったりめで入場したのが嘘のように、風をきって映画館を出ました。おさえきれないニヤニヤを噛み殺すのがたいへんだった。
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・『ヘイトフル・エイト』種田陽平インタヴュー|webDICE 見出しはアレだがすごくいい読み応えのある内容。日本には「撮照録美」といった伝統的な序列がある、それは何故かというところから演劇の歴史に迄話題が及ぶ。 「プロデューサーたちが最も大事にしているのは、クリエイティブなんです」「日本人が西部劇やるというのは、タランティーノじゃなければ実現しなかったことかもしれませんね。タランティーノは黒人にもメキシカンにもアジア人にも、偏見がない人だから」
・サミュエル・L・ジャクソンもカート・ラッセルもホントかわいい〜 ・ティム・ロスは『レザボア・ドッグス』のあれがあるから最初から信用してなかった(笑)後ろの方でもぞもぞ動いてんのがちょこちょこ見えると何かするんじゃないかと気が気でなかった ・で、レザボアといえばマイケル・マドセン! こちらはうっかり信じちゃった(笑)クリスマス休暇に拘るとこにちょっとグラッと……(御されやすい) ・ジェニファー・ジェイソン・リー最高! 歌も最高! ・ゾーイ・ベルラブー♡シックス・ホース・ジュディ(六頭立て馬車の御者)って愛称の由来がひねりなく最高。それをわざわざ小粋な台詞のやりとりにするところも最高だし、こういう役を彼女にふるってところも最高 ・ねこはどうなったのだろう…無事でいてくれ……馬もな ・チャニング・テイタムがどの役か知らなかったので、雪のなか全裸で歩かされてたひとを凝視しましたよね…テイタムなら脱いでるかなあとも思って……
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