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2016年01月27日(水)
Joanna Newsom Japan Tour 2016

Joanna Newsom Japan Tour 2016@キリスト品川教会 グローリアチャペル

うええええん素晴らしかった〜! 前回の来日は日程の都合上UNITのみの参加だったので、こういったホールで彼女のライヴを観るのは初めてです。念願叶った。教会に入るだけでなんだか静かな気持ちになりますよ…殺伐とした仕事のあとで、ささくれだっていた気分がおさまった……。開演前の諸注意もなく、時間になったらすうっと照明が暗くなって始まった。なのに携帯とか全く鳴らなかった。あたりまえのことの筈だけど、近頃こういうのってなかなかない。無神論者であろうとも敬虔な気持ちになる、という場所の効果もあったように思います。

五人編成、メンバーはこちら。ジョアンナを筆頭に全員がマルチプレイヤー。ジョアンナはピアノもキーボードも弾き、ミラバイとヴェロニクはヴァイオリン(ジョアンナが紹介のときに言っていたけどヴィオラもやってたかな?)もコーラスも担当、キーボードはヴェロニク以外全員が演奏。ライアンはギターもバンジョーもマンドリンも。あとカリンバとかも使っていたかな。曲によってメンバーがステージをあちこち移動、カウントはとらず、最初に音を出すひとがコンダクターという感じ。この阿吽の呼吸も絶品でした。

音響はアコースティックとエレクトリック、オンマイクとオフマイクのバランスがうまくとれない場面もあってちょっと大変そうでしたが、中盤には収まってたかな。出処が謎のハウリングが何度か起こり、これは最後迄解決されなかったので残念。メンバー皆が「わたし? おれ?」てな感じで何度もキョロキョロしてたのはかわいらしく映ったけどストレスだったのではないかな。二日目は改善されてるといいー。

女性陣は皆ムームーみたいなカラフルなワンピースでかわいい。ジョアンナはキャミワンピみたいなノースリーブで、暖房が入ってはいるけど天井が高く抜けている会場だし、寒くないのかな? と思う。しかし演奏が進むにつれ、それは無用な心配だと気付く。というのも、グランドハープの演奏は本当に力仕事というか、たいへんな重労働なのだというのがまざまざと感じられたから。前回のUNITは満員のスタンディングで、演奏する姿が殆ど(というか全く)見えなかったのです。今回落ち着いてじっくり演奏を見られたんだけどこれは…どこに力を入れどこで抜くか、それをコントロールするための筋力はどこに必要か、といった技術をしっかりつけておかないとあっというまに腱鞘炎になるだろうな。いや、手、腕だけでなく肩や背中、腰…全身に気を配り、ケアしていないとこれはたいへんだ。というのが素人目に見てもありありと解るのです。

しかも彼女の場合、弾き語りのスタイルなのでずうっと弾きっぱなし。そして一曲が長い。楽曲や歌声の美しさに聴き惚れ乍らも、その強靭な演奏が持続することに驚嘆しきり。そしてその姿はあくまでも軽やかなのです。いやもう、本当にすごい。アスリート、という印象はやはり変わらないままでした。翌日こんなツイートを見つける。「(ツアーは)すっごく楽しい。だって練習しなくてもいいから。家にいるときは練習と作曲で1日が終わる。それを何十年も続けてる」。ハードワークの賜物だよなあ……ひたすら聴き入り、拍手をおくる。

新譜ではますますケイト・ブッシュみたいになってきたなあ…と思っていた歌声ですが、ライヴで実際聴いてみると結構違う印象。はっとしたのは、ロングピッグスというかクリスピン・ハントの声にすごく通じるものがある! 喉の奥から出すような/喉を締めるような発声、高音の丸み、語尾の唄いまわし。途中で気付いて声あげそうになったよね……クリスピンの唄い方好きなひとは合点がいくのではないかしら。誰か両方聴いてるひと知らせてー! やークリスピン、今では隠居状態だから飢えてるんですよね…マイペースでもいいから作品は発表し続けてほしい〜。

閑話休題。そんなこんなで聴けば聴く程心がほぐれ、うっとりとした気分になりつつもピンとはりつめたような演奏に気がひきしまる。という相反しているようなライヴでした。登場したときや曲が終わるごとに、そしてチューニングタイムにも拍手がわくような雰囲気のなか、その都度てへっというように肩をすくめてちいさな声でthank you、とかドモアリガト、というジョアンナに骨抜きです。最後の曲ですって言ったときいやだー終わらないデー! とわんわん泣きたくなったくらいです。まじで。いやほんと、終わっちゃうときはさびしくてじわ〜と涙が出ましたよう。なごりおしい〜。アンコールではステージを控えめに照らしていたちいさな電球仕様の照明に彩りが加えられ、そんなさりげない演出も胸に迫るものでした。ダブルアンコールの拍手が長く続いていましたがそのままおひらき、高揚した表情で出ていく観客たち。とてもとても、特別な一夜。

それにしても、この手のアーティストをインディーベースで招聘するのってたいへんだと思うのね…グランドハープの運搬費を考えるだけでもびびるし(菊地成孔がしょっちゅう言ってるのが刷り込み)。前回呼んでくれたコントラリードは今では開店休業状態なので、Sweet Dreamsさんには感謝ばかりです。呼んでくれて本当に有難う〜! スタッフさんたちもとても感じのいい方ばかりでした! オリジナルチケットとか、そういう気配りも嬉しい限り。物販コーナー(P-VINEのスタッフさんかな?)もとても感じのよい対応でした。

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セットリスト(setlist.fm

01. Bridges and Balloons
02. Anecdotes
03. Soft as Chalk
04. Divers
05. Emily
06. Waltz of the 101st Lightborne
07. Have One on Me
08. Peach, Plum, Pear
09. Goose Eggs
10. Sapokanikan
11. Leaving the City
12. Cosmia
13. Time, As a Symptom
encore:
14. Baby Birch
15. Good Intentions Paving Co.

(大阪はこうだったらしい。結構違うな〜東京も二日目は変わるかも。ああ両日行きたかった!)

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・【ライブレポ】ジョアンナ・ニューサム|L-TIKE HMV NEWS
28日のレポート。27日のライヴ写真も載ってます

・take me to the airport
アートワークを手がけた山口洋佑さんの作品はこちら。フライヤーだいじにとっとくんだ〜

・[FEATURE] ジョアンナのヴィジョン〜Joanna Newsomの5年間 | Monchicon!
ジョアンナを積極的に日本で紹介してくださっているモンチコンさんの記事。読み応えあります

・Sapokanikan


・Divers


ポール・トーマス・アンダーソンがディレクションを手掛けたMVもおいときましょ。『インヒアレント・ヴァイス』の縁ですね。ううう、何度観ても「Sapokanikan」のラストシーンは涙ぐみそうになる〜