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2015年11月15日(日)
『黄金のごはん食堂』

『黄金のごはん食堂』@東京芸術劇場 シアターイースト

アジア舞台芸術祭の国際共同クリエーション公演で、無料。F/T関連企画。脚本・演出は韓国のソ・ジヘ、身体表現アドバイザーにタイのティラワット・ムンウィライ。出演は日本のナイロン100°Cや俳優座の役者たち。

2050年の一週間、2048年の一週間、2010年の一日。日本で起こる異常気象による飢饉、格差社会から起こる内戦。上演前にこの年代設定についての説明を先に読んでしまっていたので、登場人物たちの言動からああ、この夫婦だちが幸せだった時代を象徴するのが2010年なのだろうなあ…と思う。果たしてその通りなのだが、連想されるのは日本のことよりも韓国のことなのだった。勿論日本でこの話のようなことが起こりうる、と言う実感は強い。自国で生産出来る食糧はたかが知れているし、土地柄孤立しやすい。しかしこの物語が生まれた背景には、韓国の歴史が深く関わっている。日本の未来を韓国の過去と照らし合わせているようにも映る。

この公演を観に行くことにしたのも、ここ一年ちょっとで韓国の映画、演劇事情に興味を持ったからで、その影響もあり韓国の歴史や文化についても以前より知っていることが増えた。飢饉について、民主化運動について。逆にこれらを知らなければ、なかなか厳しい作品だったとも言える。もともとはリーディング用の短編だったものを拡大して一本の舞台作品にしたそうで、粗い構成や、舞台用に加えられたと考えられる身体表現にとってつけた感が強い。意図的だとわざわざ注意書きがあった、タイトルでは「ごはん」、上演中表示される字幕は「ご飯」となっているアジアの主食である米についても、その「意図的」の真意を伝えきれていないように思えた。演者がよくやっているだけに、そのちぐはぐさは気になった。物語の中心となる年老いた夫婦の嘆きは胸に残った。

帰宅してこの日、韓国でデモ隊と警察の激しい衝突があったことを知る。やはり昼間に観た作品からは、韓国のことを思い出す。ただ、それは他人ごとではないとも強く感じる。