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2014年10月23日(木) ■ |
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『オトナの銀英伝ナイト Part2〜ヴァーチャル・ヒストリー「銀河英雄伝説」の世界〜ジークフリード・キルヒアイス』 |
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『オトナの銀英伝ナイト Part2〜ヴァーチャル・ヒストリー「銀河英雄伝説」の世界〜ジークフリード・キルヒアイス』@SARAVAH Tokyo
三月に行われた『Part1』から半年ちょっと、第二回にしてキルヒアイスですよ…ぎゃー。早いっちゃ早いが、原作での退場も早いひとだったからさもありなん。会場はスズカツさんのホーム? サラヴァにお引っ越し。
----- 原作:田中芳樹 脚本・演出:鈴木勝秀 出演:陰山泰、石橋祐 ギター:大嶋吾郎 コーラス:久保田陽子 --- トークショー:田中芳樹×鈴木勝秀(MC:安達裕章) -----
んふふふ、今回のモチーフとキャストが発表されたとき、個人的にはニギャー! てなったんですよね。石橋さん。『ノーホエア・ウーマン』のときの機転が印象に残っていたのです。そんで『ゼロ・グラビティ』を観たばかりの頃だったので、宇宙に行くとかトラブルに直面したときは石橋さんについて行こうと思った訳です。宇宙行かないし。トラブルに直面したときそこに石橋さんはいないし。判ってる、判ってるわよ…とにかくゼログラのコワルスキーくらいたよりになるわ! と思ったんですよ……そんな彼が出ると言うことは! キルヒアイスでしょう、キルヒアイスは彼でしょう! と訳の判らない期待を胸に出掛けて行ったんですね。あれだけ登場人物が多い作品で読み手はふたりしかいないのだから、どっちがどの役! と期待するのもヘンな話です。
果たしてキルヒアイスの台詞第一声を石橋さんが発したときには心のなかでガッツポースしましたよね……。しかし面白いのは、オーベルシュタインの台詞も石橋さんが担当したことです。ラインハルトの台詞を陰山さんが担当していたので、彼がラインハルトとして話す場合、対話の相手はもうひとりの石橋さんしかいない訳ですが、それにしても。
いやー誰のせいでとかそういうのは言っても仕方がないし要因って沢山あるものだけど、でもさあラインハルトがキルヒアイスを遠ざけたのってオーベルシュタインの進言からだもんねー! と言いたくなるねー! いやオーベルシュタインがいなくても、あの状態が続く訳はないと思っていますけども、納得していますけども。今となってはオーベルシュタインってあのニヒルな感じとかいぬ飼ってるとかのイメージだけが残っていて、こういうひとだってのを忘れかけてた(…)そうだった、おまえはそういうやつだったよ! おまえー! おまえー! まざまざと思い出したわ。つらしま。まあそんなこんなでニヤニヤブルブルし乍ら聴いておりました。特にラインハルトとキルヒアイスのキャッキャウフフのパートはつらかったね! ニヤニヤが抑えきれなくて!
ニヤニヤしつつも真面目な話をちょっとすると(説得力ない)、今回石橋さんのコンディションがちょっと危うかったようで、噛んだり読み間違い、つんのめる箇所が結構ありました。専門用語や外来語等、馴染みの薄い単語が多いもんね。滑り出しはよかったんだけど、途中かなり危なかった。バレーボールみたいなもんで、一度リズムが失われると焦って次々ミスが出る。チームメイトもそれに引っ張られてしまう。ヒヤヒヤする場面が増えて、「が、がんばれ……」と思って観てしまったところもありました。でも終盤は持ち直して、あの声で「宇宙を手にお入れください」て聴けたからいいです! この場面、涙ぐむ方が結構いらっしゃいました。私もかなり危なかった…と言いつつラインハルトが「いやだ」つったところではニヤニヤした……(俗)。
選曲はスズカツさんらしいポピュラーミュージックから。「星に願いを(When You Wish Upon A Star)」や「あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)」「君の友だち(You've Got a Friend)」のカヴァーを大嶋さんと久保田さんのデュオで。効果音等もふたりが担当。途中席を立った陰山さんがピアノを弾き、セッションする場面も(ここはインプロだったのかな?)。所謂「名曲」ばかりですが、大嶋さんのアレンジにはノイズや不協和音が加わっており、物語中の悲壮や逡巡と言った陰の部分が表現されていました。で、「Wish You Were Here」って“Did they get you to trade your heroes for ghosts?”てフレーズがあるのなー。スズカツさんの作品では何度か使われている馴染み深い曲ですが、今回そこにうわっとなった。あと客入れで「バードランドの子守唄」がかかってた気がするがどうだったか。
しかし憶えてるもんだなー。今回主に使われた二巻ってあんまり読み返していないんですよ。だってつらいじゃん! それ言ったら八巻も九巻もそうだけどな…(ここでどのキャラクターに肩入れしていたかが窺えますな)なのに台詞とかするする思い出せて。あっ我が友! 我が友な! Mein Freundな! とかね。逆にうっわそうだった、となったのはキルヒアイスが21歳だったこと。当時はそんな気にならなかったんだよ、十代の頃に読んだし、歳上の大人のお兄さんて感じで……。今21って聴くと、えっまだ大学も出てないくらいじゃん? コンビニでバイトしてアイスボックスに入った画像アップして炎上しちゃうような年頃じゃん? てなる。この若さで、あの思慮深さ。ラインハルトの青さは年齢に合致してる感じがするけどキルヒアイスてなんなの……と改めて思いました。そんなふたりの言葉を語るのは、彼らの親世代の陰山さんと石橋さん。ラインハルトもキルヒアイスも、読み手の年齢を迎えることはなかったのだなと思う。クロニクルを読む、と言う設定とともに、このレイヤーはイメージを拡げる効果になっていました。
ラインハルトとキルヒアイスの年齢についてはアフタートークでも話題になりました。以下書いていいかなと判断したとこだけおぼえがき。記憶で起こしているので細かいニュアンス等そのままではありません。
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あ:キルヒアイスは誰からも愛されたと言うか、物語中ヤンはじめ同盟側からも一目置かれていたし、読者も、同盟ファンだけどキルヒアイスはいいと言う方が多いんですよ。どういう狙いでこのキャラクターをつくったのでしょう た:いつも対になるキャラクターを配置するんです。キルヒアイスはこどものときはラインハルト、軍人になってからはオーベルシュタインと対になる
す:21歳ってホント若い…何故この年齢に設定したんでしょう? そしてキルヒアイスには自己犠牲欲と言うか、貢献欲を感じます た:今年、ノーベル平和賞を受賞したのは17歳ですし (ここ「ああ〜」てなちいさな声があちこちからあがってました) た:若いからこその自己犠牲欲とかってありますよね。理想が高く向こう見ず、と言うか。自己犠牲の精神と言うものについては決して手放しで肯定出来ませんし、今も考え続け、答は出ていません す:なんでこんなことで? こんなことに? と言うことに命を捧げてしまうひとについて考えてしまうんです た:まあでも、キルヒアイスがあれだけ尽くしたのは、隣のおねえさんが綺麗だったから(爆笑) あ:そこですか!
あ:それにしてもなんであんな早くに退場させたんですか。最初から決めていたんですか? た:まあ、生き延びても22歳。最初から決めていました。キルヒアイスにたられば、「もし彼が生きていたら」はない。歴史を変えるには隣のおねえさんが綺麗じゃなかったとかにしないと(爆笑)…まあでもね、キルヒアイスは小さい頃…まだ自我が確立していない年頃にあこがれの綺麗なおねえさんからお願いされて、姉弟を神格化してしまったのでしょう あ:キルヒアイスとアンネローゼは純愛だったんでしょうか す:そう! そこ、下世話な話かも知れないけど気になるんです た:キルヒアイスは純愛ですね (えっえっアンネローゼはどうなの)
あ:しかし長生きしていたら誰からも愛される、では済まなかったでしょうね。戦略的に非道な決断を下すことも出て来たでしょうし。ラインハルトもラインハルトで、「俺と姉だけに優しくいればいい」とか言って…なにさまかと(笑) た:ラインハルトさまです(爆笑) あ:だいたい…あの、ここにいらっしゃるのは全巻読破されてる方ばかりでしょうから言っちゃいますけど、最後の方でラインハルトがアンネローゼに「キルヒアイスをお返しします」って言うじゃないですか。いつ迄借りてたんだと(爆笑) す:随分長い(笑) あ:随分長いサービス残業ですよね た:キルヒアイスもやっと成仏出来たんですね(爆笑) あ:宗教観が入り乱れてますけども(笑) す:興味深かったのは、こんな壮大な宇宙の話なのに、個人の話に集約されるところなんです。ラインハルトはキルヒアイスに「宇宙を手にお入れください」と言われたことがモチベーションになってる
す:赤毛とか黄金色の髪とかアイスブルーの瞳とか、ヴィジュアルに訴える表現が多いですね (そうそう、ヘテロクロミアとか蜂蜜色とかなー!) た:この作品を書くにあたって、形容詞の勉強を沢山しました(ふわふわ) す:私も結構もう長く生きてますけど、初めて見る単語もあって…何て読むの? アクセントは? って出演者からも質問されたりして。でも、とても文章のリズムがいいんです。舞台で翻訳ものをやるとき、意味だけを重要視して訳したものを口に出して言うと言いづらかったり、リズムが悪かったりする。それで上演台本にする際、リズムがよいものに書き換えたりすることもあるんです。演劇だと動きも入るので、その動きに合った言葉にしたり。でも、銀英伝は原作の文章のリズムがよくて、全く書き換える必要がない。リーディングにとても向いているとも言えます。ご自分で書いたものを口に出して読んだりされます? た:自分で書いたものは全て、必ず一度は音読します (おお…と感嘆の声があちこちから) す:前回音楽にボザノヴァを使ったんですけど、ボザノヴァってタンタタンタンターン♪(ワンノートサンバ的なあれね)って同じフレーズを延々やってたりするんですよ。それが気持ちよくて、聴いてたらあんまり気持ちよくてすーっと意識が遠のいちゃったりするんですけど、それに近い
す:今回「You've Got a Friend」とかいい感じの曲を使いましたが、最後大嶋くんが頼んでもいない(笑)ギャーンってギターを入れて来た。ラインハルトとキルヒアイスの美しい友情、の筈が、美しいだけではない不穏な空気で終わった。こういうところ、大嶋くんのすごいところだと思います
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前日(10月22日)62歳の誕生日を迎えたとのことで、田中先生へのバースデーソングとケーキのプレゼントでお開きとなりました。「昨年誕生日を迎えて悲しかったことがふたつあります。ひとつは長年親しくしていた連城三紀彦さんが亡くなられたこと、もうひとつは(『宇宙戦艦ヤマト』の)沖田艦長が歳下になってしまったこと」だそうです(しんみり微笑)。
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