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2014年04月26日(土)
『ロードムービー』

『ロードムービー』(DVD)

引き続きファン・ジョンミン特集。原題は『로드 무비(ロードムービー)』、英題は『Road Movie』。2002年の作品で、日本では2004年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(The 13th TIL & GFF)で二回だけ上映されたようです。日本版のソフト化はされておらず、本国版もなかなか入手困難なようですが、運良くeBayに出品されていた新品を購入することが出来ました。別にプレミアもついてなかった、$19.99。てか届いた現品に価格シールが貼ってあったんだけど、それは$23だったので、むしろ安くなってた(笑)。

リージョン3なのでiBookで観るつもりだったところ、このタイミングでDVDドライヴが壊れ(何故増税前に壊れない…せめて……)リージョンフリーのプレイヤーを再購入。おかげでTVのおっきな画面で観ることが出来ました。怪我の功名なの…か……?

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ソウルの地下街でホームレス生活を送るデシクは、ある日酔いつぶれて路上に寝ている男のジャケットを盗む。地下街に居着いたその男ソクォンは自殺未遂を繰り返し、デシクはソクォンの面倒を見るようになる。デシクはかつて名を馳せた登山家、ソクォンは大きな取引に失敗し全てを失ったファンドマネジャー。過去を語ろうとしないデシク、過去に執着するソクォン。実業家ミンソクに拾われ仕事を請け負うことになったふたりは、ソウルを出ることにする。途中“喫茶店”の出前で出会った娼婦イルチュがその旅に加わる。デシクはソクォンに好意を抱くようになるがそれを言い出せない。デシクに好意を寄せていたイルチュは困惑する。

“ロードムービー”を物語る拘りのロケハン、駅や地下街等規制も多かったであろう場所での撮影。新人であり乍らこれらをやりきったキム・インシク監督の熱意にまず圧倒される。前半は撮影方法やエフェクトに凝った映像に加え唐突なエピソードが続き、意欲は伝わるもののふと我に返る場面が決して少なくない。しかし物語が進むにつれ、登場人物たちの心情を映す鏡のように映像がシンプルになってくる。澄んでくる、と言ってもいい。過酷な現実に足をとられ、ひとりではいられない寂しさを抱える登場人物たちの一瞬の快楽、ひとときの安息が、移動の昂揚感と風景の美しさにより寓話性を孕む。旅の終わりが予感される頃になると、デシクとソクォンの魂は、世界の暗闇にたったふたり取り残された蛍のように仄かな光を放つ。

デシクは「愛に興味がない」と言い、行きずりの男を抱いては突き放す。反面彼は弱者を放っておけない。しかしホームレス仲間だった初老の男も、様子を案じていた妊婦の女も結局は助けられない。そこにソクォンが現れた。彼によってデシクは、愛しさが執着に繋がり、愛情が恐れを生むことに気付いていく。ソクォンを失うのが怖くて彼の携帯を隠し、同性愛者だと言うことを知られたソクォンに「これだけ世話になったんだから十回はケツを貸してやらないとダメか?」と言われても、決して自分からは手を出さない。行き詰まった果てに訪ねたコテージの主人はデシクの過去を知る女性で、「出来ることならついていってあげて、彼はひとりぼっち」とソクォンに告げる。隠されていた携帯から活路を見出したソクォンは選択を迫られる。孤高に凡庸が応えるとき、塩の貯蔵庫はデシクがかつて目差した雪山へと姿を変える。

デシクを演じたファン・ジョンミンは撮影前にホームレス生活を送り、薬物に溺れるソクォンを演じたチョン・チャンは大麻に手を出し検挙された。犯罪に手を染めたことは決して評価出来ないが、ギリギリ迄自分を追い込んだ役者たちの真摯な演技は説得力がある。山男の風貌だが仕草や表情の移ろいが繊細なファン・ジョンミンと、卑屈な人物が徐々に心を開いていく過程を痛切に演じたチョン・チャン。塩倉庫での彼らは、『1900年』の、納屋でデニーロとドミニク・サンダが抱き合うシーンのように神々しい。イルチュ役のソ・リンは目まぐるしい感情の起伏を強烈に演じ、ミンソク役のチョン・ヒョンギは滋味ある演技に孤独を滲ませ心に残る人物になった。コテージの主人ジョンインとその息子スホを演じたパン・ウンジンとイ・ジェウンは、少ない出番乍らも確かな印象を残した。デシクとスホのひとときの交流は、この作品中数少ない“救われる”シーンだった。

眠りにつくとき、無意識に傍の温もりに擦り寄ってしまう。そうせずにはいられない、寂しく痛みに満ちた人物を演じきった彼らは、時間が経った今も胸の奥に棲みついている。

置いて(捨てて)いくと言う形のロードムービー。イルチュが、ミンソクが、そしてデシクが? あるいはソクォンが? 置いて(捨てて)いかれた人物には死の色が濃いが、物語のなかでその行く末は明らかにされない。彼らは生まれ変わることが出来るのだろうか? 救済はどこかにあるのだろうか。最後に残った者は前に進む。かつて触れ合った、受け入れたひとの帰還を願う、無事を祈る。頂上を目差すひとを麓で待つひとのように。

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メモ。

・ロードムービー(2002、韓国):明日には明日の風が吹くのか?
・「ロードムービー」 (2002) 로드 무비 -「韓国映画」雑記帳 - Yahoo!ブログ
公開前後の様子を知ることが出来、とても参考になったレヴュー

・輝国山人の韓国映画 キム・インシク ロードムービー
キャスト、スタッフのクレジット詳細

・ROAD MOVIE
日本語のファンサイトがありました!充実の内容。有難い……

・황정민, “사랑해서 보내준다는 말, 저는 믿어요”(인터뷰) | 텐아시아
・エキサイト翻訳
ファン・ジョンミンのインタヴュー。今年のものですが、『ロードムービー』撮影当時の話をしています。異性愛者である自分が同性愛者を演じることにかなり悩んだそうで(ハードなセックスシーンもあるし)、ストレスで蕁麻疹や高熱が出て大変だったそう。もともと肌が弱いみたいですね、本人もことあるごとにネタにしてる。気にするなよ…と言いたくなる!
今は「男女を離れて、ひとがひとを愛すると思えばいいのだと判った」とのこと。円熟した演技と人間性が加味された現在の兄さんが演じるゲイ、是非また観たいです

・ [이 남자의 변신] 대마초 파문으로 곤욕 치른 탤런트 정찬“그 사건이 있고 나서 작은 오해도 받기 싫어 담배까지 끊었어요” | 생각하는 여자가 읽는 잡지 ::여성동아::
(・エキサイト翻訳:12
チョン・チャンのインタヴュー。検挙後のもので、大麻使用についても正直かつ誠実に話しているいい記事です。弟さんのこととか、いろいろあった様子。大変だったね……。
ダイバーのライセンスを持っていることから、海のシーン(イルチュが溺れるとこね)で裏方をしていたとのエピソードも

・ジョンミン兄さんの萌えメモとしては
 -ちいさきものを愛でるときの懐の深さなー
 -相手の頬に触れるのは癖?お国柄?
 -子役と一緒のときのかわいさよ。子役もかわいいが兄さんもかわいいわ

・濡れ場はハードで生々しいのですが、撮影や構図がビシッとキマッているので非常に絵になっており、鑑賞に堪えうる美しさ。ジョンミン兄さんはしっかり作ってきたのかほれぼれするような身体でしたわ(て言うかスタイルいいわやっぱり。脚長!細!下半身の筋肉のつきかたが綺麗なんだこれが)。しかしチョン・チャンも相当いい身体でなんなのと…ファンドマネジャー役なのに(笑)兵役ある国だからなの

『ユア・マイ・サンシャイン』に続いて外国の文化を知る
 -コーヒーの出前って……
 -カラオケルームって……

英語字幕で観たので細かいニュアンスは逃しまくっていると思います。日本版出してほしいわ…スクリーニングの実績があって字幕データもあるのだからリリース出来なくはないんだよね。てかリリースするなら今このタイミングじゃないか?日本公開十周年てことで!