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2013年12月01日(日)
『タワーリング インフェルノ』

新・午前十時の映画祭『タワーリング インフェルノ』@TOHOシネマズ六本木 スクリーン6

「お正月の夜中にいつもやってる映画。何度も観てるのについつい観ちゃう」@塚本晋也

そうそう、幾度となくテレビで放映されていて、でも映画館で観ることが叶わなかった『タワーリング インフェルノ』。それが!ついに!!映画館で!!!スクリーンで!!!!夢が叶った…『午前十時の映画祭』てホント素晴らしい企画!

本年度のラインナップを知ったのは昨年末。ギャー!となって、いちばん行きやすい六本木のスケジュールを観たら12月。すごく!先!だけど!チケットの発売は上映二日前から!忘れたらあかん!と一年近くドキドキしていました…と言うのも、以前この『午前十時の映画祭』に『スティング』がかかったとき、当日券で入れるよね〜一時間半前とかに行けば余裕でしょうと呑気に出掛けて行ったら満席で呆然としたんですよね…名画を愛する先輩方の熱意にどげざ。しかも『スティング』は六本木を逃したあと府中でもかかったからなんとか行けたけど、今回は最終グループだったので、これを逃すともうない。スケジュール帳に発売開始日を太字で書き込んでおりました。無事とれたときはホント嬉しかった…そして寝坊したらどうしよう電車遅れたらどうしようと当日席に着く迄ドキドキしていた。とか言いつつ席に着いても途中で地震とかきませんようにとか隣席のひとが落ち着きないひとじゃありませんようにとか心配でドキドキしてましたよ…どんだけ。で、始まったら始まったでストーリーにドキドキしっぱなしで、もうどっと疲れましたよね……心臓に悪いイヴェントであった(単に小心者)。

とにかくいつか映画館で観たい〜と言う思いが強く、DVDやBSで全編観ると言う発想がまるでなかったので、記憶はちいさい頃観た地上波放映版。で、この映画にどんだけ刷り込みされてたかと言うのを今回再確認した感じでした。以下列挙してみる。

・半袖ワイシャツにネクタイって素敵
 母親がスティーヴ・マックイーン好きだったので、その影響もあったと思われる

・左利きチェック
 いや、これはこの映画でってことはないが(笑)マックイーン左利きなのよね

・高層と火事怖い
 言わずもがな

・ずさん工事を憎む心
・お金がかかると無駄遣いは別
 コスパとかカンタン、お得って言葉に懐疑的な根拠だわ……

・指示待ちする心
 勝手に動いたひとが命を落とし、そのうえ他のひとに甚だしい迷惑かけてるのを目にしたトラウマ

まあ指示に従って亡くなってしまったひともいるのですが。ひとを信じるってとてもだいじなことですよね……パニックのときには特に。指示出したひとを信じるか信じないかを決めるのは自分だ。そのうえで逃げ後れてしまったとしても、それはもう仕方がないし、指示出したひとを恨むことはしたくないよと思いますよ…悪意を持った相手は別だけどな。この見分け方がまた難しいのだけど。

と言うのも、今回このホン品がよいなあと思ったのです。根はみんないい人っぽい。社長は(とりかえしのつかないことだけど)こうなったことを悔やみ、ひとりでも多くのひとを助けようとする。脱出順を決めるくじびきも公正(あの娘婿ですらくじの順は守りましたからね)。社長の娘が脱出するときも、お前責任とって父親と一緒に残れよとかやつあたりするひとがいなかった。勝手に動いて他人に迷惑かけたひとも助かりたい、助けたい一心だったんだなと思える。基本的に人間には良心があるよってつくりなのです。そして非常時にはその良心すら役に立たない場合がある、と言うことをドライに描いていたところも好印象でした。

そこで解釈が分かれる箇所がふたつ。序盤で助けを呼んでくるよって出て行って焼けちゃったビグローさんと、娘婿と一緒にゴンドラにぶらさがって落ちちゃった上院議員さん。彼女を安心させるため、それとも自分だけ逃げるため?娘婿の暴挙を阻止するため、それとも自分も逃げちゃおうとしたため?これなー。前者は安心させるためだと思い、後者は逃げちゃおうとした、と思った。後者は、上院議員が登場時、タクシーにチップを払わないせこさを見せたためだが、そもそもここも思わせぶりで、小銭の前にお札出そうとしてるのよね。でもこれも、最初から釣り銭がないと見込んでわざと高額紙幣を出す振りをした…とも思える訳で。ビグローさんに関しては、なんとなく(笑)これの前に電話が通じないことを隠して嘘つくところがあったしね。いやーうまいわー。どっちにとっても通じるわー。こういう、律儀と言うか伏線の回収が几帳面なところも楽しめました。ねこの行方や、ヘッドフォンしてる子とかね。

あとひとの生き死には運ってとこ。バーテンダーのおっちゃんが最後の最後で死んじゃったのはショックだった!すっごいいいひとだったのに!話がすすむにつれすっかりこのひとに魅了されて、ああ助かりそう、よかったよかったと思っていたところに…ここ、いちばんショックだったかも。あの未亡人だって数々の危機を乗り越えてああよかった、と思った矢先ですよ!しかもあれね、幼い頃の記憶がいかにあてにならないかと言う…私、詐欺師のおじいちゃんがねこを助けに行って死んじゃって、未亡人にねこが手渡されたと思ってた。逆だったうえ、ねこ助けたのはO・J・シンプソンだった。そう、O・J・シンプソン重要な役で出てたんですね…いろいろな意味でビックリした…だって当時はO・J・シンプソンて知らないし!そもそも知ったのってあの事件でだし!

なんかねいろんなものがカット&ペーストされてるのよ。以下また列挙。

・ビグローの彼女が転落したシーンのあとにCMが入るフラッシュバック
・エレベーターから燃えるおっちゃんが出てきてキャーってシーンのあとにCM以下同

上のふたつは実際そうだったと思うの、テレビ放映のとき。

・展望エレベーターにねこ抱いて乗ったおじいちゃんが、他のひとにねこを手渡して転落する
・そして地上で黒人のおっちゃん(ここは合ってる)からねこを受け取る未亡人

……どうしてこうなった。特に三番目、ねこを渡して後ろ向きに転落するおじいちゃんの表情迄記憶している…改竄っぷり甚だしい。あーしかしフレッド・アステア素晴らしかった。踊らなくても、唄わなくても、愛さずにはいられないチャーミングな詐欺師役でした。

あと意外と笑えるところがあったのも新鮮だったわ……。娘婿が非常口から結局脱出出来なくて帰ってきたらそのドアの前に椅子とかいっぱい積んであって開けられなくなってたとか、「カゴはパーだがパニックはおさまった」って台詞とか。あと非常口がセメントで固まってるとか、あまりにもあんまりで笑ってしまったよ…納期キツキツの突貫工事ってつらい。

当時は高層火事怖い消防士すごいかっこいいってくらいのシンプルな感想だったが、大人になった今観ると、このあとの裁判やら何やらのごたごたを思って気が遠くなりましたよね…元凶の娘婿は死んじゃってるし。それにしても設計士の活躍っぷりよ。そもそも設計士があそこ迄やらなあかんのか。出来上がったばかりの自分の作品が崩壊して行くさまを見続けるってところもせつない。シルバーフォックス以前と言っていいかな、まだ銀髪でないポール・ニューマンのタフガイな格好よさ!たまらん!そしてあくまでクールなマックイーン!キャー!キャー!

そしてスクリーンで観て実感したのは、CGに頼らない特撮+スタントの凄み。画面が分厚いと言うか、重いと言うか。ジョン・ウィリアムスの音楽も素晴らしかったです。客席の集中力も高かったように思いました、皆一緒にハラハラドキドキ。いい環境でいい映画を観られるって本当に幸せなことだわ。

映画館を出ると華やかな六本木ヒルズの光景。ビルを見上げ、ここ54階だったよな…と思う。138階のグラスタワーはこれの約2.5倍?そこを、あんなちゃちいパイプかごで!半裸のようなパーティドレスで!強風のなか!無理!!無理です!!!と再び恐怖に震えた次第です。ドレスなんて着ていませんでしたが。