I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
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2013年10月19日(土) ■ |
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『ムサシ』ロンドン・NYバージョン |
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『ムサシ』ロンドン・NYバージョン@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
蜷川演出作品が続いた。毎月どこかで上演されているなあ…月刊蜷川とはよく言ったもので、そのパワフルな仕事っぷりには頭がさがる。お身体、おだいじに。蜷川さんの作品、沢山観たいのはやまやまですが。
初演を観て、再演は逃しています。今回の小次郎役は溝端順平くん。
実のところ、終盤に謎が明かされる際「彼ら」が言う台詞とその根拠に納得がいかなかったと言うのが再演を見送った理由でもあるのですが、こうド直球で言わずにはおれんくらい井上さんが切羽詰まっていたと言うことだろうか、と今となっては思う。その切迫感は〆切りに依るものか(笑)、自分の死期を予感していたからか。しかし日々の暮らしのちょっとしたことにこそ…と言うのは死期を悟っていようが関係がないだろう。殊に大作家であられた井上さんが気付いていない訳がない。それをわざわざ…敢えて訴えなければならない程の歯痒さを感じていたと言うことか。何に?平易な、判りやすい言葉と言っても、それをあまりにも選んでいないように感じるのだ。
しかしあの場面で大石さんがぽつりと漏らすひとことはとても胸に迫る。これは大石さんの持つ透明感が成せる業。とても貴重な役者さんだと思う。
復讐の連鎖を断ち切ると言って、しかし結局は犠牲者を出す。落とされた腕は蛸の脚のように蠢き、かちかち山のうさぎは胴体から切り離される。やはり納得出来ない。個人的にはこの作品は、役者たちの魅力と、そしてそれを丁寧に引き出している演出に尽きるのだ。コメディパートも蜷川さんの手掛けたものとしてはかなり好き。鋼太郎さんのハジケっぷりも、白石さんのもののけっぷりも好きー。コメディと言えば、この作品での藤原くんの笑いのパートは、彼のコメディ仕事のなかではかなり好きなものです。いやもう面白かった。溝端くんとのやりとりもテンポよく、そして何よりふたりが武蔵と小次郎ってのがね!終盤闘う準備をはじめ、キリリと襷を締めるふたりの格好いいことと言ったら。
カーテンコールで初演にはなかった演出?があった。井上さんの大きな写真パネルが掲げられた。初演時はご存命だったものね…再演のときはどうだったのかな。
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