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2013年04月26日(金)
『大きなトランクの中の箱』

庭劇団ペニノ 21th はこぶね作品『大きなトランクの中の箱』@森下スタジオ Bスタジオ

おはつでございます。マンションの一室を改造したアトリエ「はこぶね」がクローズ(入っている建物老朽化のためとのこと)してしまい、そっちに間に合わなかったのが残念だー。今回はその「はこぶね」作品の手法を森下スタジオへ持ってきたもののようです。

それにしても噂に違わず美術がすごかった。最初三角形状のせまーい和室から始まって、確かにいい再現度だな、でもそんなに騒がれる程…?と思ってたらいやいやいや、舞台は回転式で四面あったんですよ。一場が終わって暗転、しばらくして照明がついたら……!!!ええっ転換音とか全くしなかったよ!?その後場が変わる度ひゃーとかギョーとかなって、話の内容にもギョヘーとかなっていると、終盤演者の移動とともにぐるりとその四面を回して見せられると言う。和室/ピアノ付レストラン、ぶたちゃんとひつじちゃんのおうち/父子の愛情部屋が対称位置にあるんですね。で、後者の部屋は二層になっている。その設計も面白いが、それぞれの部屋の作り込みっぷりがすごい。和室のリアルさ、他の部屋の抽象的美術、どちらもあまりにもすごすぎてなんだこれ…と思う程です。

あの、下世話な話ですけど絶対入場料で採算とれないですよね。これを作り上げる表現欲求と情熱って……作演出のタニノクロウ氏は精神科医としてのキャリアを持つ方だそうですが、同じく精神科医で現代美術コレクターでもある高橋龍太郎氏を思い出しました。そしてこれをマンション自室でやってたと言うところで日本一のリノベ劇団(笑)第七病棟を連想しましたが、タニノさんのインタヴューによるとルーツは唐さんだそうで成程と思ったりもしました。

なんだか嬉しくなっちゃった。儲けがとか話題性がとか、そういうことを意識していないように感じる。観ている方の勝手な解釈かも知れないけど、そう思わせられるクリエイションを見せてもらえるってのはすごく嬉しいことでした。しかもこんなにクオリティ高いものを。こちらももう結構スレた観劇趣味者なので、観ていてあー制作大変そうだなーこういう宣伝展開しなきゃひと呼べないのかなーでもこの宣伝あんまり功を奏してないよなー客と言うよりお金を呼びたい興行なのかなーなんて思ってしまう舞台ってあるのです。綺麗ごと言ってんじゃないわ、お金を呼んでこその興行でしょうがとも思いますが、あまりにもそれが透けて見えてしまうとね……。このバランスってとても難しい。

ちなみに劇団名ペニノはペニスとタニノを掛けているそうで、ストーリーはフロイディズム直球。エディプスコンプレックスを43歳になった今も抱え込んでいる受験生(そう受験生なのよ…43歳だけど……)健次くんの不条理冒険譚。いやはやどんな感想言っても心理分析されそうで恐ろしいわ…エッヘ(ex. HIGHLEG JESUS)の山田伊久麿さんが健次くんを熱演。文字通り熱演。いろんな汁を飛ばして熱演。それにしても下層階にいるときの健次くんや、ぶたちゃんとひつじちゃんの基本姿勢がものすんごく身体に負担かかるだろうなと言う体勢で、怪我等せずに千秋楽を迎えられるといいなと思いました。徹底的に抑制された身体能力と最低限の台詞の繰り返しで主人公の悪夢(淫夢)を見せる、強力な世界観。こいつはクセになる。