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2013年03月01日(金) ■ |
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『マクベス』 |
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『マクベス』@世田谷パブリックシアター
野村萬斎演出、主演による『マクベス』。初演は見逃しておりますが、今回ワールドツアー敢行に伴い新演出、とのことです。
出演者は五人。どうやるのん…と思っていたら、マクベス夫妻vs三人の魔女と言う図式で、マクベス夫妻以外の登場人物は全て魔女が演じると言う趣向。この構造がめちゃ怖い!そりゃ抗えんわと言うかどんだけ予言に逆らおうとしても無理な訳ですよ、だって相対峙するのが皆魔女なんだものー、魔女が予言通りにマクベスたちを誘導しているようなものだものー。しかしこうすると「運命には逆らえない」と言う図式が非常にハッキリして面白い。「もうちょっと考えんかい」「なんで悪い方悪い方を選択するんだ、気付きなさいよ」とハラハライライラすることも多い(笑)シェイクスピア作品ですが、この構成だと「観客は登場人物が道を踏み外していることを知っている=けどどうにも出来ない、何もしない=神の視点」を自覚しやすくなるんですね。90分と言うスピード感溢れる構成に非常にマッチしていました。
展開上意訳も多くなるわけですが、なかでもマクダフの出生については初めて聴いた訳でインパクトありました。「マクダフは女からではなく、死体と言うゴミから生まれた」。おなじみ河合祥一郎氏による訳です。演出プランに宇宙ゴミ(デブリ)をイメージさせるモチーフがあり、人間もゴミだと言う解釈です。森羅万象のなかで明日のことを考えるのは人間だけ。明日のために日々進歩し、それらはゴミを生む。マクベス夫妻vs三人の魔女は、人間vs森羅万象へと拡がります。 (追記:その後紀伊國屋書店新宿本店であるだけの戯曲チェックしてみたが(流石の演劇関連書籍充実っぷり、『マクベス』だけで7種くらいあった)、やっぱこういう訳は初めてのようですね。そもそも原文にない言葉が出ているし。しかしこの意訳、これ迄え〜それっていまいち納得出来ん、ってな「女から生まれていない」と言うところが緩和されると言うか、死んじゃえば性別も年齢も関係ないモノ=ゴミだもんね〜と納得してしまう部分がありました。最初聴いたときは「なんで帝王切開だと女から生まれたことにならないの?」って腑に落ちなかったもんで…あの時代は帝王切開された母親は必ず死に至るから、と説明されてもん〜とか思ってたので)
能舞台を連想させる舞台割。舞台上に三間四方の箱形舞台が置いてあり、御簾を降ろすことで舞台転換が行われる。それは茶室にも誂えられ、魔女たちは円窓から人間の右往左往を覗き見笑う。四季を際立たせた美術も素晴らしかった。紙吹雪が色味によって桜になり、紅葉になり、雪になります。マクベスの成り上がり〜転落の速度がより意識される。戦争の場面は基本萬斎さんのみの舞で、流れる血は赤い糸、敵の動きは幕で表現されます。動く森〜終幕の場面は鳥肌もの。幕は向かって来るバーナムの森にも、マクダフ軍にも、津波にすら見える。マクベスは幕に呑み込まれる。あっと言う間に、いとも簡単に命は消える。波はやがて凪となり、その上に魔女たちが立つ。人間はいかにちいさくはかない存在か。そのはかない存在が、限られた時間で懸命に生きる姿に、静かに胸を締め付けられました。二階席で全景を見渡せてよかった。
あと音響が面白かったです、SePTみたいなぐるりな客席だとめちゃ栄えるつくりになってました。スピーカー近くの席だったので、音の臨場感がすごくありました。和テイストの衣裳も、素を活かした髪やメイクも美しかった。根に持つタイプなので未だに憶えているが、ジョナサン・ケント演出、萬斎さん主演の『ハムレット』って宣美のヘアメイクのがぜんっぜんよかったと思うの!舞台のあのウィッグは変だったと思うの!
それにしても萬斎さんのこの発想。「そういうふうになっている」達観っぷりは恐れ入ります。同時に惑いもある。ずっと考え続けていく。先日『オデッサの階段』で、狂言師と言う職業を継いでいくことについてのコメント(裕基くんに「何で僕が狂言やんなきゃいけないの」と訊かれて「僕も分かんない」、でも「やらなきゃいけないんだ」。)を聴いたばかりと言うこともあり、いろいろ思うところがありました。運命は決まっている、変えることが出来ない。そのなかでどう生きていくか。目先のことに惑わされてわちゃわちゃした気分のときに観ると反省しますわ、己のちいささに。やっぱいろんな意味でおおきいひとの仕事を目撃するってだいじだわ……。
そしてシェイクスピアものを観る度に思うが、最初蜷川さんの演出で観ておくと「どういう話かちゃんと頭に入る」「しかもカットされてない」「そして茶化さない、揚げ足をとらない」ので、その後いろんな翻案ものを観ても置いていかれず観られるし、現代口語訳ではない台詞を脳内咀嚼せずとも理解出来る。で、やっぱり蜷川さんてすごいなあと思う。
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■ところで 現物持っているひとは知ってると思うがこれのチラシ、折り目がついてるんですよね。当日迄何度も折り紙してみたけどどうにも形にならず何なん?と思っていたら、劇場ロビーに正解が置いてありました(笑)「こう折ってみてくださいね」だって。帰宅してその見本を参考にし乍ら改めて折ってみたけどこれが難しい、見本がなかったら出来ないわ……。
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