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2012年03月21日(水) ■ |
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『BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVE 2012』 |
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『BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVE 2012』@後楽園ホール
対戦型即興ライヴ。“BOYCOTT RHYTHM MACHINE”の名付け親は菊地さんで、このタイトルでオムニバスCD(『BOYCOTT RHYTHM MACHINE』)やドキュメントCD+DVD(『BOYCOTT RHYTHM MACHINE II VERSUS』)がリリースされたのは憶えているのですが、その後シリーズライヴとなっていたのは知らなかった。スーデラや国立科学博物館で行われていたようです。今回は対戦型即興ライヴと名乗るにふさわしい格闘技のメッカ、後楽園ホールでの開催と言うことで行って参りました。後楽園ホール初めて行ったー。
てか後楽園ホールってもうなくなって、JCBホール→東京ドームシティホールになったと思ってた……ひいいすみません。
OAの千住宗臣 VS 服部正嗣って開場と同時に始まるのかしら、それとも開演時間から?と思いつつ19時に入場し、額装展示されている歴代格闘技チャンピオンの写真を見てわあーとなりつつロビーをうろうろしていたらドラムの炸裂音が聴こえてきた!慌ててホールへ向かう。そしたらあなた、自分の席から5mもないような場所で千住くんと服部さんがバトルってるではないですか。今回買ったのはグランドフロア席でリング(ステージ)に近いと言うことだったのですが、OAのふたりはリングどころかフロアに直接ドラムキットを設置して演奏している。む、むちゃ近い。しかも千住くんの斜め後ろから観ると言う……これは滅多にない機会だわー。音を聞きつけて続々入場してくるひとたちの間から歓声が飛ぶ。
15分くらいの持ち時間だったので、それならもう最初から最後迄ゴリゴリに押しまくろうと決めていたのか、アクセルベタ踏みのまま両者とも叩きまくる。服部さんはグロッケンやヘッドレスタンバリン、カウベル等も駆使して音に彩りを添えつつもハードな音を飛ばし、千住くんは基本的なドラムキット以外はあれなんだろー、直径15cmくらいの金属製のパーカッション…雅楽の鉦鼓みたいな音がする……のみ、トーンはシンバルを叩く位置で変化させ、やはりヘヴィーヒットの連続です。
どちらも笑顔のままガッツリ目線を外さず、ピースな殴り合いをしているよう。みるみるうちに両者汗だく、顎からぽたぽたと雫が落ちる。あまりに強く叩くので千住くんのスティックが二度飛んだ。うち一度は折れて飛び散り、どよめきが起こる。目にも止まらぬ速さでスペアのスティックに持ち替えていく臨機応変ぷりも見事です。そうこうするうち前述のパーカッションを固定していたネジが緩んだのか、楽器がだんだんずり落ちてきてタムの上に載っかってた。DCPRGではどちらかと言うとテクニカルしかしハードなドラムを涼しい顔して叩いている印象だったので、うわあ今日は熱い!とこちらもアガる。
千住くんが空中高くスティックを放り投げ、絶妙としか言いようのない幕切れ。どこで終わるタイミングを決めていたんだろう?立ち上がったふたりはガッシと熱い抱擁、そして大歓声。ドラムと言う楽器の特性もあり、今回いちばん格闘技セッションらしい取組でした。相撲か。
嵐が去ったあとのざわめきのなか、やっとちょっと落ち着き会場を眺める。中央にリング、四隅にコーナーポスト、ロープは張っていない。この日の出演者全員分の楽器が既にセッティングされている。教授が使うのであろうグランドピアノは大きいからか、ポストの外にありました。つまりステージは、実際のリングより大きくとってあります。自分の席からだとピアノに遮られて全く向こう側が見えない。あああ、大友さん座奏だろうし、これは全然見えないかな……。二階席には立ち見のひとたちが鈴なり。うわー、まさに屋内スポーツ競技を観戦する雰囲気、楽しい。
開演時間の19:30になると、出演がアナウンスされたとき、すわラウンドガールか?と思われたゲストやくしまるえつこさんが登場。かわいらしいふわりとしたスカートで開会と閉会の辞、リングアナウンスをとりおこなう担当でした。「僕たちのこの闘いもまた、夢の中の夢でしかないのか」とポエトリーリーディング。さて目の前で始まるのは果たして夢か、それとも?青コーナーからOpen Reel Ensemble、赤コーナーからDJ KENTAROが入場、第一試合です。KENTAROくんがスクラッチでビートをガンガン作り、それをOREが追う形に。席の位置によるのかも知れないけど、KENTAROくんの音が強くて思わずOREがんばれ!と握り拳。OREの後ろでヒラヒラしてるあのすだれは何だ…と思っていたらこれテープでして、演奏中に取り替えて音に変化を付けていた。そこでちょっと間が出来てしまってたかな。しかしこちらはチームでオープンリールも複数台あり、連携プレーでお互いをカバー。
第二試合は青コーナーいとうせいこう、赤コーナーShing02。タッグマッチよろしくトラックメイカーとして、青コーナーに宮崎“DMX”泉、赤コーナーにDJ A-1が控える。Shing02はお面(なんだろどうぶつっぽいの)、DJ A-1はタイガーマスク着用で登場、わあプロレスぽい。先攻はせいこうさん、韻を考え作り込んだテキストでアジる。エレガントであり乍ら攻撃的な言葉の数々!思わず聴き入る。後攻Shing02はまず「イヴェントの主旨に従って完全即興でいきます」と宣言、ここでもうスタイルが真逆。しかし決してdisり合いにならないところにお互いへの敬意を感じたし、お互いの主義主張を尊重した上で対峙する姿勢が見られて感動。2ラウンド以降、せいこうさんは座ってテキスト紙片や自分の著書かな、書籍を見乍らアジる。終盤「せいこう立てよ!」とヤジが飛び一瞬ヒヤリとしたが、「僕が立つと面白くないでしょ…」とうまく返したせいこうさん粋だった。その後ゆっくり立ち上がると大歓声、うまいこと持っていきました。スリリングで緊張感溢れるやりとりを3ラウンド、タイムアップかと思われたところ「あと3分(?だったかな?)だけやらせて!」と叫んだせいこうさんがShing02に礼を尽くし、Shing02もそれに応えて終了。
ポストが取り払われ、やくしまるさん再び登場、「大友良英さん、入場!」とアナウンス、赤コーナーから大友さん登場、ニコニコしてます。「師匠ー!」の声に「師匠て。落語じゃないんだから」と応え、場内が笑いに包まれる。「坂本龍一さん、入場!」、青コーナーから教授登場。山にでも行くんですかと言う赤いウインドブレーカー、ああ還暦だから…いやそうじゃなくて……でももう教授も還暦なんだよねー!シェー!
教授はグランドピアノをプリペアドとしても使い、Macからも出音していました。繊細な繊細な微弱音でスタート。しかしここで写メのシャッター音がいくつも響き渡り呆れる。この音のやりとりを聴いててよくシャッター切れるな、神経を疑うよ……。写楽祭よろしく教授が「うるせえこの野郎なんだおめー出てこい」って罵ればいいのに、女装して(笑)。で、大友さんがユキヒロさんみたいに止めに入ればいいじゃない…いやでも大友さんだと止めないで参加しちゃいそう、ええがなえええがな乱闘でもなんでもすればよい。まあそんなことはなく教授も大友さんも演奏に没入、やがて雑音も消え、場がようやくしんと静まり返る。耳を澄まして聴き入る。
やはり座奏の大友さんはセットどころか姿も見えず(頭頂部の数cmが見えたくらい)。残念…ときどき弓が見えたので、ギターを弓で弾いているのは判ったのですが、他の不思議な音たちを何で出してるのか判断つかない。終演後見に行ってええっこんなもの迄使っていたのかと驚いた次第。TTやアナログは勿論、小物のパーカッション等がステージに直接置いてあり、足を使って演奏したものもあった様子でした。両者とも小さな音のひとつひとつに神経を張り巡らせ、ノイズを起こしてもそれを決して爆発させず、徹頭徹尾抑制した音のやりとりで緊張感を持続させる40分。しかしこれが大変雄弁。教授がプリペアドから鍵盤に移り、静かに響かせたいくつかの和音の饒舌な美しさと言ったら!ここに大友さんのギターが載ったときは、古い例えで恐縮ですが『BEAUTY』の教授とアート・リンゼイのやりとりを思い出しました。まさにビューティフル。大友さんとリンゼイのギターが似ていると言う意味ではありませんよ。
そうっと教授が鍵盤から手を離し終演。拍手と歓声のなか両者が握手。いやあ、すごかったです。
外に出ると、キラキラした東京ドームやラクーアと言った都会の風景が目に飛び込んできてしばしぼんやり。別世界から出てきた気分だった…後楽園ホールはクローズドな空気をビシビシと感じさせる場で、そのときその場一度きり、あっと言う間に消えていく音が交わされるのにとても似合っていました。まさに夢のあとのようでした。
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