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2012年03月03日(土) ■ |
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LÄ-PPISCH『25周年のその1』 |
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LÄ-PPISCH『25周年のその1』@CLUB CITTA'
終演後呑みの席でマグミのツイッターのアカウントが名前(magumi)+生年(1963)ってところから、1963年てことは、もう現ちゃんの歳を追い越したんだねって話になった。昨年の『GEN Chang Night Vol.3 Lä-ppisch+』からのこの流れ。上田現より歳上になった彼らは、前進するんだと言う意志をはっきりとライヴで示した。
レピッシュを長年追い続け、綿密な取材を重ね記事を書かれて来た佐々木美夏さん(@sasamika815)の言葉を借りる。『そういうことをやりながら、MCではいっさいそれに触れないところがレピッシュ。楽曲や演奏のクオリティはもちろんだけど、レピッシュというのは「気持ち」と「意志」のバンドなんだなぁ、と改めて思った。だからそこが揃わないと一気にぐずぐずになる。25周年のスタートにこの日を選び、メンバー紹介でもステージ上の6人+上田現の名を呼んで新たな一歩を踏み出したのは、とてもよかったと思う。』
ライヴ当日は3月3日。サポートKeyにSOUL FLOWER UNIONの奥野さん。CLUB CITTA'に集まったひとの多くは、これは何かある、彼らは絶対に特別な何かを見せてくれる、と言う予感があったのではないだろうか。3月3日に、ずっと空席になっていたあのポジションに奥野さんを迎える。恭一は「わかったかなあ」と心配していたそうだけど、気付いたひとは多かったと思う。あとこれはぼそっと書くけれど、数ヶ月前、恭一が「一曲だけ参加」に頷かなかったのは、これをやりきるためだったんだ。勘違いかも知れないけど、ああ、こういうことだったんだ、と思った。前に進むために、ここは譲れなかったんだ。
それにしても…セットリストを眺めているとなんとも言えない気持ちになる。あのときあの場でじわじわと感じたことを追体験するかのようだ。「東京ドッカーン」はじまりとは!かなり混乱して、どこをどう聴けば、観ればいいかおろおろした。SEぽいKeyの音が聴こえる。ああ、あの音だ!見慣れたひとより身体の大きなひとがKeyを弾いている。でも猫のように手を丸くして、鍵盤を引っ掻くように弾く姿にドキリとさせられる。続いてきた、「CONTROL」!あの間奏を一心不乱に弾き始めた奥野さんの姿が目に飛び込んで来た途端、自分でもアホかと思う程に泣いた。何でこんなに楽しい曲で泣くんだ、泣いてる時間も惜しいんだ、音はどんどん過ぎてしまう。それでも涙が止まらなかった。次が「無敵のサラリーマン」だったので我に返る。そうだ、楽しまなければ。
おおっ「プライベートビーチ」、続けて「バッタ」、これもレア!……あれ?これもだ。これも…これも……これはひょっとして………。「-6m」をやったところで思った。今日は上田現の曲ばかりをやるのか?
「緊張が伝わってると思うけど」「この歳になって一日8時間以上リハやってた、まだ3曲くらいしかやってない?と思って時計見たら……」「奥野くんは大変だと思う、レピッシュの曲は構成が難しいからね」。ぽつぽつマグミが漏らしていた。上田現の楽曲を、本来のバンド編成で演奏する。これには相当の準備が必要だった筈だ。
「おやすみ」でメンバーが退場し、どよめきと悲鳴が起こる。まさかこれで終わる筈がない…しかし何故ここで?実質二部構成だった理由は後述の記事でマグミが話しているが、勿論そんな説明をステージ上でする訳もない。慌てたようにアンコールの声があがる。そういえば二部の終わりどころをマグミは間違えたようだった。恭一の曲も入ってるもんね。そうは見えなかったけど、相当テンパッていたようだ。やりきる男だよ……。
それにしても「おやすみ」は圧巻でした。歌詞を物語として伝えるマグミの真骨頂、この世界は正にレピッシュの真骨頂。しばし呆然。それで思い出したが、以前レピッシュってアンコールの声がないならアンコールいらんってことやろ、ならやらんもんねーってそのまま終わっちゃうことってぽつぽつあったよな。あれってあまりにもライヴが凄まじくて呆然として拍手出来なかったってとこあると思うのよね。思いを上手く伝えられないこういうとこ、バンドもファンも似た者同士だと思っていた…いやまあ、そんなバンドだからそんなファンが集まってくる訳で(笑)。
ところが、です。
こんなふうにライヴを進めつつ、上田現とその楽曲へ敬愛の念を示しつつ、しかしこの日は確実に今迄と違った。それはここ数年で、ではなく、25年のなかで、と言う意味でだ。あんなにアクションを表に出して演奏するtatsuは初めて見たし、ジャム展開のときtatsuに歩み寄り、確認しあい乍ら演奏する恭一も初めて見た。「LOVE SONGS」でフロアに飛び込み戻ってくるマグミを出迎えるようにステージ中央からギターを弾き続けた恭一も、恭一とひとつマイクで唄うマグミの表情も。なんだこんな光景見たことないぞ……あのひねくれ者たちが、こんなにストレートに愛情を表に出しよって!逆に照れるわ!
また呑みの席での話になるが、「もう家族みたいなもんで、嫌いになったり好きになったり、そばにいるのもイヤって時期からまた一周したんだろうね〜」ってことか。あれか、もう照れてる歳でもないか。とは言ってもこのまま続くとは思っていない。それはこのバンドがそーゆーバンドだからー!まあね、意地張ってる時間はないと感じているんだろうな…身近なひとを失ったひとには覚えがあるだろう。「点滴打ってでもやる」と言ったマグミを、恭一はなんとも複雑な表情で見詰めていた。「太っただの痩せただの言うけどな、この身体が使えるかどうかなんだ」と言ったマグミにはジーンときたな…って君体型そんな変わっとらんやん。見習いたい!とりあえずマグミを担げるくらいには身体鍛えようと思いました!クラウドサーフが途中で落ちたのは担ぐ側が体力ない+四十五十肩で腕があがらないからだと思うんだよね……。と言えば、落ちたとき「おちたー!」、あがったとき「あがったー!」と実況していた恭一にウケた。
そんな気難しいバンドにしっくり馴染んでいた奥野さん。おそろしい子……!いやでもすごく大変だっただろうなと思う。このややこしいバンド、このややこしい楽曲をよくもまああれ程…彼の弾く鍵盤は現ちゃんのフレーズだけど決してコピーではなかった。Saxの音色使ったフレーズも弾いていて、これにはドキッとさせられたし唸らされた。第一声が「グッドモーニング」だったり、関西弁だったり、「LOVE SONGS」が終わって「怪我してるひといない?大丈夫?」とフロアを気遣ったマグミに対して「僕ここ怪我しましたわー」と胸をさすっていたりしたのはあれか、洒落たことを言うてるのか滑っているのか。他にもいろいろ挙動が面白く…すごく忙しい方なんで無理は言えないけど、現ちゃんのフレーズを身体にたたっこんだ上で自分の色を出せる貴重な鍵盤弾き+キャラクター、しばらくレピッシュにいてほしいです頼みますマジで。現ちゃんのポジションを奥野さんが担ってくれたこと、驚く程それがしっくりきていたこと。本当に嬉しかった。
前述のジャムでのマグミのスキャットはガッツリ11PM(シャバダバシャバダバ〜♪)だったし、奥野さんはすっころんだそうだし(見逃した!ギャーみどころききどころが多過ぎるんだもん!)、ライヴ後メンバーが次々インフルエンザ発症してたり(感染していないか今自分戦々兢々です)、上田現の呪いか!と言う地雷が各所にあったところも流石期待を裏切らない。これがレピッシュと言うバンド。だいすき。
セットリストはこちらの記事(・リアルライブ『レピッシュが25周年ライブ! 4月「ARABAKI ROCK FEST.12」にも出演決定』)から。文中のマグミのコメントは、ライヴのMCではありません。MCでは一切このセットリストの意味については触れなかった。結果だけを見せる、これもレピッシュと言うバンド。だいすき(だいじなことなので二回言う)。もうひとつ、現ちゃんが亡くなってからのバンドの動きについて、諸々のヒントになるかもしれない記事(・ナタリー『[Power Push]杉本恭一』(昨年秋、『Macka Rocka』リリース時のインタヴュー))。こういうの読むと、恭一はレピッシュのリーダーだなあと思う。
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セットリスト
01. 東京ドッカーン 02. CONTROL 03. 無敵のサラリーマン 04. プライベートビーチ 05. バッタ 06. サイクリング 07. ガンジー 08. MAD GIRL 09. Good dog 10. -6m 11. パーティ 12. 歌姫 13. OUR LIFE 14. アニマルビート 15. おやすみ
encore 16. 美代ちゃんの××× 17. LOVE SONGS 18. さくらさくら 19. ワダツミの木 20. HARD LIFE 21. 旭タクシー 22. MATSURI・365
encore02 23. プレゼント 24. Magic Blue Case
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マグミがこうツイートしていたけど書いちゃった。ごめんね。でもこの日どれだけ楽しくて、どれだけ心を動かされたかは書いても書いても書ききれない。だから本当の意味では秘密なのだ。
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