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2011年12月04日(日) ■ |
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『狂言劇場 その七』Aプロ |
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『狂言劇場 その七』@世田谷パブリックシアター
Aプロ、小舞『暁』『七つ子』『鮒』/『棒縛』/『MANSAIボレロ』。
『棒縛』のなかでいい具合に酔っ払った太郎冠者と次郎冠者がゴキゲンで舞う『暁』『七つ子』。まず通常の?状態の小舞のみを見せ、その後『棒縛』を上演、と言うプログラムが親切で楽しかったー、続けて観たのは初めて。拘束された状態の『棒縛』での舞は、元からどう変化しているのかが判り、面白かったです。
それにしても本当に太郎冠者と次郎冠者はアホの子だ…何度観てもそう思う(笑)アホで気のいい子だねー。
さて初演『MANSAIボレロ』。もともとは万作さんがベジャール振付の『ボレロ』を踊るショナ・ミルクに感銘を受けたところから始まるそうで、二代に渡っての思いが実現したことになるんですね。はじまりは酒場のテーブル上で踊る踊り子に男たちがひきよせられていく…と言う設定の『ボレロ』ですが、その後上演が重ねられ、今では男性も女性も踊っているものです。ベジャールのものも、映画にもなったジョルジュ・ドンが有名ですし、先月の来日公演ではシルヴィ・ギエムが踊りました。今回はこの作品に日本の解釈を加える――古事記の『アマノウズメ伝説』、狂言の舞のなかでも異色である『三番叟』を重ね合わせたものだそうです。
パンフレットで萬斎さんが「(踊り手のジェンダーについて)最後の最後まで疑い、悩み続ける」と仰っていたのですが、これは女形と言う様式がある日本の古典芸能ならではの発想。どちらの性であっても萬斎さんは踊れる訳です。私が観たのは最終日でしたが、女性的な妖艶さをまとい乍らも律動の力強さは男性のもの、と言う印象を受けました。帰宅後検索してみると、装束からして女性がまとうもの、男性がまとうものを混在させる等日々変化していたようです。
「んん?」となったのは、「踏む」と言う行為によって曲に音が加わること。そしてそれは、例えばギターを演奏する際に発生するフィンガーノイズのような「不可抗力」「味」と言ったものではなく、意識して加えられた音だと言うこと。足拍子がリズム音として加えられているのです。足拍子は『三番叟』の特徴とも言えるものだし、重要な要素なのでしょう。しかしバレエの『ボレロ』では着地の音を感じさせないことが必須。前述のベジャールの『ボレロ』を踊るダンサーはトウシューズを履かず、着地音を極力発生させません。狂言の解釈で観る心構えでしたが、個人的には違和感を感じてしまい、「こういうもの」と納得出来るのに少し時間がかかりました。『ボレロ』が本来バレエ音楽なので、そこに囚われてしまったのかも知れません。振袖部分を巻き上げる所作からも衣擦れ音が起こる。これも意識的に発生させているものですね。
踊りそのものは素晴らしく、緊迫感と気迫に満ちたものでした。もう釘付け。完全暗転からひとつぶの光が浮かび上がり拡がっていく幕開けや、奈落へ飛び降りたかのように見せる跳躍と暗転のタイミングが絶妙だった大詰には鳥肌がたちました。何度もカーテンコールが沸き起こる高揚感も『ボレロ』ならでは。萬斎さんいい顔してらっしゃいました。今後舞う側の解釈も変化していきそうなので、継続的に上演してほしいです。また観たい!
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