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2011年11月23日(水)
『マネーボール』

『マネーボール』@新宿ピカデリー スクリーン2

プロの野球選手とプロの人買いの話。野球のみならずスポーツ好きにはグッとくるところがあると思うー。ハリウッドにしては地味なのかも知れないが自分はこういうの大好き。以下ネタバレあります。

主人公のオークランド・アスレチックスゼネラルマネジャー、ビリー・ビーンは実在する人物だそうで、映画化にあたってスティーヴン・ザイリアンとアーロン・ソーキンが創作部分を加えて脚本を書いたそう。どこ迄が創作かは判りませんが、映画化されるだけのことはある魅力溢れる人物なのだと思います。しょっちゅう何かをつまんでる(反面“食事”のシーンが全くない)、筋トレ大好き、自チームの試合を観ない、遠征には同行しない…一見偏屈な印象を与える彼の真意を示すエピソードがさりげなく、しかし丁寧に積み重ねられていきます。反面選手たちの背景や感情を表す場面は極力抑える。一分一秒を争う電話交渉のシーンは、早口でまくしたてる台詞でテンポよくスリリングに見せる。

「高卒で44歳」のビリーは「イェール大学卒の25歳」のピートを相棒にスカウトし、マネーボール理論を実践に移していきます。打率ではなく出塁率、被安打ではなく与四球、奪三振率。あらゆるデータを検証し、少ない予算で適材適所の選手を集める。自分たちの経験と直感を誇りに思っているチームのベテランスカウトマンたちや監督は、この革新的な方法論に反発します。

結果としては、アスレチックスが成功したとは言い難い。しかし、そこにあるのは野球が好きで、野球のために限られた条件のなかで全力を尽くすプロの裏方たちの姿です。勝てば監督のおかげ、負ければGMのせい。出塁だけを期待されて代打に立ったスコット・ハッテバーグがホームランを打つ。太り過ぎて走塁が苦手なジェレミー・ブラウンが必死に走るも転倒、しかし打球はスタンドに吸い込まれている…と言ったような、確率論だけでは済まされない夢や奇跡をどこかで誰もが信じている。そして、その夢や奇跡を導きだすのも確率論だと信じている。だから迷いや揺れが出る。そこが魅力的に描かれる。

ビリーが遠征に同行しないのは、必要以上に選手と仲良くなるとクビを斬りにくくなるから。試合を観ないのは、自分が試合を観るとチームが負けると言うジンクスがあるから(それを知っているのは娘だけ…いや、きっと周囲の人間は判っている。進言出来るのが彼女だけなのだろう)。高額な契約金でスカウトされ、大学進学をやめてプロになったが鳴かず飛ばずに終わった自身の苦い経験を踏まえ、選手の長所と配置を慎重に追究する。冷徹にも映るそのどれもが、勝つための選手を集めチームを作る、プロのスカウトマンだからこその行為です。ロッカールームのソーダを無料にしたエピソードもよかったな。

日々そんなビリーの姿を目にし、ピートはプロのスカウトマンとしての姿勢を学んでいく。手腕を高く評価され、レッドソックスからひきぬきの話がきて迷うビリーにピートはジェレミーのビデオを見せる。彼はビリーに「あんたは間違ってない」と言っているように感じました。ピートも野球が大好きで、チームのために自分の持てる能力をフルに発揮したいと思っている。これは彼の成長の物語でもあるなあ、いずれガッツポーズも上手くなるよ(笑)。あ、あと何げにアスレチックスのオーナーがいいひとだったと思った…いいひとと言うか部下を信じてると言うか。レッドソックスのオーナーも紳士。ナベツネに見せたい(笑)。

ビリーとピートのチャレンジは今も続いている(その後ピートはアスレチックスを離れたそうだが)、と言う終わり方もよかったな。ドラフトやら、巨人の騒動が続いている時期に観たこともありしみじみした。原作読んでみよう!

複雑な人物像をあらゆる角度から見据え立体的な魅力としてたちあげたブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマンはそれぞれ存在感のある演技で素晴らしかったー。あとハッテバーグを演じた役者さん(クリス・プラット)がよかった!

最後に心に残ったエピソード。離れて暮らしてる娘と一緒にギターを買いに行って、お店でギターを試演し乍らハミングしてる娘にそれ唄って〜と言って、唄いだしたその歌詞を聴いて、ええそんな歌だったの?とガ〜ン(ポカーン)みたいな表情になるビリーがよかった(笑)。その曲(歌詞をちょっと変えている)が最後に効いてきます。Lenkaの「The Show」と言う曲だそうです。「パパはバカ」、「ショウ(=野球)を楽しんで」。

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・どうでもいい話
ライヴで菊地さんがセットリストやら告知の紙やらを見る際メガネ外して紙持った腕をのばーして目を細めて見る行為にキュンキュンきていたものだが、今回ブラピ(の役)が老眼鏡着けたり外したりしてるさまにもキュンキュンきた。これって老眼萌えか