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2011年07月02日(土)
『血の婚礼』

大規模修繕劇団 旗揚げ公演『血の婚礼』@にしすがも創造舎体育館 特設劇場

Bunkamura改修工事に伴いシアターコクーンもしばらく閉鎖、その間蜷川さんのカンパニーが井上ひさしさん命名の劇団を旗揚げし公演をうちます。その第一弾。

『血の婚礼』はだいすきな作品。1993年銀座セゾン劇場、1999年ベニサン・ピットで観ています。初演も観たかったな。

もともと清水邦夫さんが蜷川スタジオに書き下ろした群像劇。セゾン劇場での再演は、清水さんの新作『ひばり』を上演する予定だったところホンが上がらず、この作品の上演に変更されたものだ。しかしそのおかげで、私はこの作品と出会うことが出来た。

しかし今回の上演は、1993年、1999年とは随分印象が違いました。群像劇に、窪塚洋介さんと言う、星と華を持った人物を主演に据えたことが大きいと思う。「何かを失ったことがある」北の兄の諦観がくっきりと浮かび上がる。丸山智己さん演じるハルキの諦観がその北の兄と絡み合い、爆発する終盤のシーンは際立って美しいものになっていました。窪塚さんも丸山さんもよかったなあ。あと、蜷川組初参加の公園くんも光ってました。

トランシーバー少年は過去寺島しのぶさん、高橋洋さんが演じた個人的に思い入れの強い役。田島優成くんは多分今迄の上演のなかではいちばん“少年”と言うヴィジュアルにふさわしいルックスで、それだけでアドバンテージがある。切実さに溢れる反面若さ故の暴走を抱え込んだチャーミングなトランシーバー少年でした。

雨は相変わらず、気持ちがよい程降る。雨音がかなり大きいので、出演者の皆さん結構声を張りますが、それでも後ろの方へ台詞は伝わりづらいかも知れない。2列目でギリギリ、と言う感じだったので。だからこそ、伝わるものが台詞だけではないと言うことを示さないとならない。なんたって清水さんの戯曲ですから、台詞が伝わらないなんてことは相当厳しいことなのだ。それでも蜷川さんはこの舞台にはあれだけの雨を降らさずにはいられない。

路地を抜け出せない鼓笛隊、喪服の男。いつ迄も路地の中をさまよい続ける。多分時間の概念はない。いつでも、そこにいる。

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・にしすがも創造舎にあるCamo Caféが好きで、この日もここでおひるを食べよーと早めに到着。すると付近の校庭や校舎前に役者さんがフッツーにいて、ウォーミングアップをしたり歯磨きしたり談笑したりしていた。芝居でくらしているひとたちの日常を垣間見たようで、それが廃校を利用して作られたにしすがも創造舎と言う場になんだかピッタリで微笑ましかったです

・帰りは昨年ここで行われた飴屋さんの『わたしのすがた』の跡地に寄ってみた。第1留の校庭の穴は、当然乍ら埋められてあとかたもない。第4留の診療所跡を昼間に見たのは初めてだった。誰もいないのになつかしい感じがした