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2011年02月02日(水)
『流れ姉妹 たつことかつこ〜エンド・オブ・バイオレンス〜』

真心一座 身も心も ザ・ファイナル『流れ姉妹 たつことかつこ〜エンド・オブ・バイオレンス〜』@本多劇場

『流れ姉妹』四作目、ファイナル。いやはやビックリするくらいよかった…かんどうした!千葉さんすごいよこの風呂敷のたたみっぷり!あ〜舞台っていいな〜と心の底から思えるお芝居でした。笑えて泣けて、ってのはテレビや映画にも勿論あるんだけど、笑えるのに泣けるそれが同時にクる、そしてその濃度が半端なさ過ぎていっそ笑えるなのに涙出る、と言う感情の振り幅が激し過ぎてしっちゃかめっちゃかになる無尽蔵のパワーは舞台ならではです。

徳永京子さん言うところの、「河原さんは全方位に気配りが利く」ってのもようわかった……あの段取り、訳の判らない(笑)小道具や舞台転換、その他もろもろ膨大な案件のとりまとめ、それをタイトなスケジュールの中モノにする手腕が見事です。これ『時計じかけのオレンジ』とほぼ同時進行でやってたんだよね…すごいわ。身体には気を付けてくださいマジで。

ゲストレイパー古田新太とゲストラバー池田成志両氏は当然のように持ち味全開ガチンコで素晴らしい。ふたりともラバーでありレイパー、それぞれの去り際も余韻を残しまくりです。古田さんてホント受けの芝居が巧いなあと思うのは常ですが、今回の役がまたえーとネタバレしますよゲイコミュニティの居場所を作るべくハーヴェイ・ミルクのごとく立ち上がるが実のところゲイは偽装でその昔愛した妹が目の前で自ら命を絶ちそのショックでずっとEDと言う複雑を通り越してカオスな役でしーかーしーそれが実にチャーミング!女々しい!かわいいそしてかわいそうああわたし騙されてるでも騙されてもいいの守ってあげたい!無理!は〜あれはふるちんにしか醸し出せないなにがしかだわ、ああこういうのを誘い受けって言うんだな。その受けか。と言う役です(どういう)。ホントこういうのやらせると巧いな〜にくいわ〜。

対して成志さん、一昨年寄席に出た腕を活かした講談師役で弁舌滑らか顔芸も多彩(笑)そんでお調子者を演じ乍ら実は裏街道を歩いて来た暗さと狂気が時折顔を出すその恐ろしさ、これこれ!怖い成志!そして演じるはえーとすごいややこしいぞシリーズ初出し実はたつことかつこには腹違いの兄がいた!兄はたつことは連絡をとりあっていたが姿を消し、実はかつこの保護観察司・末次(元ヤクザ)としてふたりを陰から見守っていたのであった!末次はその後整形し講談師・松川金水としてたつこの前に姿を現したのだった!その間紆余曲折複雑怪奇などっか頭のネジが外れているけど妙に色気があると言うこの役はナルシーならでは!あー格好いい!あー顔が濃い!顔芸も素晴らしかったよ……。

こんなキャラクターをふたりに当てて書いた千葉さんもすごいが、それを見事に血肉化するふたりの底力を目の当たりに出来る嬉しさと言ったら…しかも小劇場規模(本多ではあるが)でってのは久々ですよね。いやホントよかったよ、往年のファンも楽しめると思いますよー!

しかも途中迄ふるちんの役がお兄さんてことになってんのね。で、あれ?実はこっちがお兄さんで、しかも整形した末次…?って感じに徐々に謎が解明されて行く流れも巧い!ハラハラドキドキの二時間半!そう休憩なしで二時間半くらいあったんだよ…怒濤の展開クライマックス迄中だるみなし、ゲイパレードはあるわパイは投げるわ鮭が瀧を登るわ龍は昇天するわもーちょーかんどうー!はあはあはあ。

こーゆー荒唐無稽なストーリー(だけど登場人物たちは皆しっかり自分の足で大地に立ち、前に歩いていくんだよ……!)、を書き上げた千葉さんすごいホントすごい。そしてそれをあますところなく舞台に立ち上げた河原さんホントすごい。そしてそれは座長・村岡さんがいたからこそ!村岡さんのために書かれた役、悲劇のヒロインかつこ。シリーズを通して陵辱され続けた彼女は菩薩のごとき愛情の深さで全てを包み込んでいく訳ですが、このファイナルで彼女はどうなる?観客誰もが案じたかつこのゆく末、そして誰もが祈ったかつこの幸せ。それを目にすることが出来た観客の幸せ!あの幕切れはホントに素晴らしかったー!いんやそれにしても村岡さんちょー格好よかったわ…一座のどの男よりもオットコ前であった。古田さんをアレしてコレしてのシーンはあまりのめくるめく男闘呼らしさに抱いて!とか言いたくなった。

そしてカーテンコールでキャスト全員並んだ時「え、これだけの人数だっけ?」と思ってしまう、八面六臂の活躍ガヤ四人衆。レギュラー役以外は全部ガヤの四人で演じるってのは頭では判ってるし、その早替えっぷりも見どころなのですが、改めて人数見ると「すくなっ!」と思ってしまう程、台本上の登場人物は多い(そこらへんのまとめ方も河原さんすごいと思った)。小学生のこどもからハードゲイのポリスマン、ヤクザとその愛人、食堂のおばあちゃんと年齢も性別もバラッバラしかしそれが何故か皆ハマると言う…すごい、すごいよー。個人的には伊達くんの、スナック虹のマスター(て言うかママだあれは)がツボでした。似合い過ぎる……。

ホンのことばかり書いてしまったが、千葉さん演じるたつこも素晴らしかったんだよー!菩薩のかつこと対照的な修羅の姉たつこ。母殺しの罪を背負っていると思い込んでいた彼女が重荷を下ろせた意義は大きいし、彼女のバスタオルが外れた意義も大きい。これ文字にすると何がなんだかって感じですが、彼女のバスタオルは鎧だったんだよ〜(泣)そんな彼女が兄と共に仏門に入ったことは、修羅を自分の中に抑え込みつつもひとときの安らぎを得たのだろうと、せつなさを感じつつその後ろ姿を温かく見送る気持ちになりました。ああ大団円!

あー凱旋公演行きたくなってきた…前進座でやるってのがまた!前進座は2006年5月の大駱駝艦・天賦典式『魂戯れ』で行きましたが、そのときは歌舞伎小屋の仕組みである花道、迫り出し(すっぽん)を使っていました。『流れ姉妹』はそれに合わせて演出等変えるのかしら、どうなのかしら?大衆演劇をひな形にしているこの一座、前進座ですごく生きそう。あー気になるー!

ともあれファイナルおめでとうございます、千秋楽無事幕が下りますよう!

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その他。

・序盤小銭貯めてふたくちコンロ買うんだってシーンがあるんだけど(勿論部屋にはひとくちコンロ)、ラストシーンではちゃんとふたくちコンロになってます!ここチェック!涙!

・パイ投げのシーン、観客席にひとつ投げ込んで騒然。お皿に脱脂綿を貼ったにせパイでした(笑)こういうの、ハイレグジーザスでうんこ投げるぞー!と投げ込んで実は味噌だった、と言う話を思い出しますね…河原さんこういうとこは三つ子の魂(まちがい)だね……。まあ味噌でも投げれば服汚れますがね。それは流石にもう出来ませんね(やれと言っている訳ではない)

・銭湯のシーンで裸足になった成志さん、右足首に手術跡がまだ生々しく残っていたのにハッとなる。舞台上の動きで気になるところは全くありませんでした。リハビリ自体は順調のようです、無事完全復調しますように