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2011年01月30日(日) ■ |
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『わが心の歌舞伎座』 |
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『わが心の歌舞伎座』@東劇
東劇へ向かう途中にある歌舞伎座跡をしばし見渡す。建物は撤去済み、仕切り幕の向こう側は見えません。基礎工事が進んでいるのでしょう。
180分の上映、途中「幕間」としてインターミッションが10分入ります。しかしあっと言う間。歌舞伎座の長い歴史を考えると180分でも足りないくらいでしょうが、カラッとした構成でテンポ良く幹部陣のインタヴューとその代表作の上演映像、さよなら公演の千秋楽と一般非公開だった修祓式、そして最後の閉場式を見せていきます。ヘンにウェットにしなかったのは、歌舞伎はこれからも続くと言う強い思いがあるためでしょう。同じ気持ちの観客も多いと思います。
180分じゃ足りないと言いつつ、目の前に映し出されるのは数々の名演。贅沢極まりない。収められていない演目は、まだまだいくらでもある。そう思うと気が遠くなる、改めて伝統芸能の濃さと厚さを感じるとともに、それを守りつつ時代を反映させてきた役者さん、裏方さんたちに敬意を抱かずにはいられません。
普段は見ることの出来ない舞台裏の映像も堪能。楽屋やその入口の様子、控え室でてきぱきと仕事をする狂言作者、床山、大道具の方々。裏口の外でとんぼ返りの稽古をする役者さんたち。印象的だったのは『仮名手本忠臣蔵』四段目、勘三郎さん演じる塩冶判官切腹の場で、舞台袖や襖の陰に盛装で平伏していた背中、背中、背中。客席からは全く見えない場所に座している家臣たちは、舞台上の魂を昇華させるべく役を演じきる。同じく『仮名手本忠臣蔵』十一段目前の舞台転換。大道具さんたちが幕間の十分間で見事に三場分の装置を組み立てあげる。そして閉場式後、翌日にはもう取り壊しが始まるのに、丁寧に館内を掃除する裏方さんの姿。見えるところ、見えないところ。どんなときでも、どんな場所でもプロフェッショナルの仕事を完遂する表方と裏方。厳しくも美しい光景でした。
建物に情緒を感じると同時に「これは古い…相当傷んでいる……」とも思う。老朽化が激しい。安全面から言っても、建て替えは避けられなかっただろうことが理解出来る。仁左衛門さんが「歌舞伎座が建て替わったときに後輩たちが、『この素敵な先輩たちが使っていたんだ』と言われるような役者に私たちがならなきゃいけない。新しい歴史を作っていかなければ」と仰っていたのが心に残りました。
これぞかぶきもん、スーパー歌舞伎の映像も。もう舞台にたつ猿之助さんを観ることはないのだろうか…今回も、演目紹介(『義経千本桜』のスペクタクルっぷりと言ったら!)はあったけれどインタヴューはありませんでした。
それにしても芝翫さんのお顔は綺麗だった。やっぱり生きざまって面構えに出るんだなあ。荒事芸と波乱の多い名跡を代々受け継ぎ、自身も壮絶な闘病を経て舞台に立っている團十郎さんは“そういう”顔をしているし(『勧進帳』での、弁慶飛び六方の気迫は胸に迫るものがありました)、菊五郎さんも仁左衛門さんも幸四郎さんも吉右衛門さんも、勘三郎さんも玉三郎さんも“そういう”顔。明るい笑顔でいきいきと芝居の話をしていた富十郎さんは、今月三日に永眠されました。エンドロール後に、追悼の言葉が映し出されました。
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よだん:出店が減っていていやな予感はしていたのですが、ぎんざ日乃出が休業に入ってしまいました。休業と言ってはいるけど閉店ぽい。サイトにお知らせが出ていたものの、実際に歌舞伎座向かいの本店が閉まっているのを見るとショックおおきい。うう、これから歌舞伎観劇のときのお弁当どこで買おう…スタンプ(カードがいっぱいになったら割引になる)も集めていて、さよなら公演千秋楽の日にはもういっぱいになっていたんだけど、「これから歌舞伎座がない間は営業が大変だろうから、再開したらすぐ行って、そのときに使おう!」と思っていたのに(泣)あれ以上に形が美しく、なおかつ味もおいしいてまり寿司を探せる気がしない……
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