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2010年10月30日(土)
『わたしを離さないで』

東京国際映画祭『わたしを離さないで』@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7

あの3人が動いてる!喋ってる!という感動と、あのエピソードをカットしてああ脚色するか!というショックがないまぜ。監督はこの作品をラブストーリーとして撮ったとのこと。そう言われると納得出来るところも沢山ありました。でもそのために、キャシーとルースふたりの、女の子同士の独特な絆についての描写が弱くなってしまったように思います。マダムと校長先生=大人たちが彼らに抱いている思いについては、シンプルな描写になった分やりきれなさがより強調されたように感じました。

ロケハン、役者、映像、演出はとにかくよかった。思い描いたあの風景が目の前にあった。今思い返すだけでも涙が出る。

ネタバレしづらいな…そもそも原作が予備知識なしで読んだ方が絶対いい!ものだったし。一般公開されたらまた観に行こうと思っているので、その時に改めて感想書こうかな。とりあえずネタバレにならないところをいくつか。

・とにかくロケハンは最高
・子役と大人になってからの役者との違和感が全くなかった!
・役者は皆よかったー。主要3人だけでなく、学校の先生やマダムや、コテージの先輩たち
・今回TIFFで観た2本両方に出ていたアンドリュー・ガーフィールドいい役者さんだなー。今度スパイダーマンになる子ですよ…『ソーシャル・ネットワーク』での小金持ちくんと『わたしを〜』でのトミーが同一人物!トミーが別の人生を歩むことが出来ていたらといろいろ思いを馳せてしまった…(涙)
・“Possible”の訳が“もしか”。これちょっとよかったな
・逆に“かわいそうな子たち”、台詞では“Poor creachers”だった。これにはガーンときた
・よだん:製作がDNAフィルムズってとこがなんとも暗示的

そのネタバレとして大事なところを最初にドーン!と提示したのには驚いた。小説ではじわじわと露になる秘密を、そうであってほしくないと思い乍ら読み進め、やはりそうであったことにやり場のない怒りと悲しみを抱えて読了する流れがあったのですが、それを冒頭で無効にする。登場人物たちの行く末を知った上でこのストーリーを観てほしい、と言うことですね。で、そうやって観ると、確かにネタバレとしては相当乱暴なんだけど、作品の本質は謎解きではないと言うこともハッキリ解る。時間のなさ、とりかえしのつかなさ。それを知っている上でひたむきに生きるかつてのこどもたち。彼らの小さい頃の思い出。こういったことが一層鮮やかに像を結びます。

エピソードの脚色も大胆。これは意見が分かれそうです。終映後、監督参加のQ&Aが行われましたが、原作との違いについて鋭い質問も飛びました。司会の方が挙手を求めたところ半数が原作を読んでいるひとでした。初来日のロマネク監督は髪型も短くなり、チェックのシャツにジーンズ、スニーカーと、気のいいアメリカ人な佇まい。しかし着席前に日本語で挨拶してくれたり、 Q&Aの端々に繊細さを感じさせるひとでした。受け答えもとても丁寧。このひとが「Closer」や「Criminal」のMVを撮ったんだなあ……。

・公式記者会見での様子はこちら。ネタバレガッツリありますので未見の方はご注意を

以下被っていない部分をちょっと起こします。記憶で書いているのでそのままではありません。

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質問●子役と大人の役者に全く違和感がなかった。特にトミー役は顔だけでなく、動きの特徴迄似ていたように感じました。どうやって演出をつけたのですか?
監督●こどもたちのシーンを撮る時も、大人の役者がまるで私の演出助手のようにつきっきりでいてくれました。リハーサルの時間を沢山とり、子役たちのシーンを大人が演じて見せることもやりました

質問●原作のカズオ・イシグロから脚色について意見交換等はあったか?
監督●脚本のアレックス・ガーランドはイシグロさんと十年来の友人で、意志の疎通に問題はなかったと思います。イシグロさんが気に入ってくれるか不安でしたが、試写が終わって彼を見ると涙を流していた。とても嬉しかったです

質問●原作を読んでいます。イメージ通りのロケーションでした、素晴らしかったです。しかし疑問に思ったところがあります。キャシーがテープを聴き乍ら踊っているシーン、原作ではそれをマダムが目撃します。何故今回ルースが目撃する脚色にしたのでしょう?
監督●難しい判断でしたが、ラブストーリーとして描いたので、トミーがくれたテープを大事そうに聴いているキャシー、それをルースが目撃する、と言うシチュエーションを選びました