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2010年05月07日(金)
塚本晋也お蔵出し『TSUKAMOTO AMUSEMENT NIGHT』(2000年)

今読むとフッツーにギャスパー・ノエが飛び入りしてんのがすごいな。もう随分長いつきあいですね。先日もふたりでTVに出てた。

この後の2002年にギャスパーは『アレックス』を発表し一気に名を知られる監督になりましたが、内容が内容なのでそれがメジャーに繋がるかと言えばそうでもない(笑)。しかし「次は何を撮る?」と常に注目されている監督であるのは確かです。

ギャスパー監督最新作『エンター・ザ・ボイド』は来週土曜日から日本公開。トークイヴェントで話されている“舞台が東京”の映画はこれのことでしょう。約10年かかったんですねえ。音作り(音響効果のクレジット)はダフパンのトーマ・バンガルテル。えーと、左のひとだっけ?(そんな憶え方…)ちなみにダフパンは年末公開予定の『Tron Legacy』のサントラを制作中だそうで、こちらも楽しみ。

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2000年3月25日
『TSUKAMOTO AMUSEMENT NIGHT』@CINE AMUSE east

『BULLET BALLET』公開に併せての楽しい企画上映!シネアミューズさん素敵な一夜を有難う!

●『鉄男/TETSUO THE IRON MAN』
●トークイベント(塚本晋也監督、川原伸一助監督、ギャスパー・ノエ監督)
●『双生児/GEMINI』
●『ヒルコ/妖怪ハンター』

(塚本組助監督の川原伸一氏が司会進行)

川:どうしましょっかね。
塚:どうしましょっかねえ。そうそう、その前にもうひとり…ホント突然な事だったんで通訳の人とかいないんで、大丈夫かな…。今日はね、ギャスパー・ノエがね、来てるんですよ。彼は『カルネ』って言う、ぐちょぐちょの、おもしろーい作品を作ってるんですけど、今東京に来てて。あっちの映画祭で初めて会ったんだけど、なーんかついてくるんですよ言葉も通じないのに(笑)人なつっこくて。僕の映画を気に入ってくれたって、言葉わかんないのに、なーんか話し掛けてきて(笑)で、お互い片言の英語で話したりして。『デリカテッセン』のジュネとキャロんちに連れていってくれたり、いろんな人に会わせてくれたりして。すっごいいい思いをさせて貰いました(笑)。
今何で東京に来てるかって言うと、『カルネ』シリーズの最新作、1が『カルネ』、2が今年公開される『カノン』で、その次ですね。最新作の舞台が東京だそうなんですよ、それで。まぁーたすっごい、ぐちょぐちょのヤツみたいですよ(笑)。

(ノエ監督入場。あいさつ)

塚:何言ってっかわかんないんスけどね、へへへ。
川:ダラダラやるより、質疑応答にした方がいいですかね。質問がある方は挙手して頂けますか?

●質問と言うか感想になっちゃうんですけど…今日『鉄男』を初めてスクリーンで観たんです。今迄ビデオでしか観た事なくって。もうなんて言うか、凄い、凄かったです!
塚:いやあ…有難い話ですねえ…(川原氏に向かって)ねえ(笑)。『鉄男』は、って『鉄男』に限らずなんですけど、絶対スクリーンで観てほしいって思って作ってますので、是非スクリーンで、って感じですね。今回改めての上映なんで、ニュープリントにして頂いたんですよ。だからもうちょっと入って頂けるとねえ(笑)いいんですけどね。

●これって聞いていい事か判んないんですけど…。
塚:はい。なんですか?

●『TOKYO FIST』で、(主人公の)ひづるは死んだんですか?
塚:死んでません(即答)。3人とも死んでません。もう二度と遭う事はないだろうけど、3人それぞれ、別の所で元気に生きてます。死んで終わりって、ヤなんですよ。…アラン・ドロンの映画とかで、よく死んで終わるのが嫌いで。事件が解決して、さあ彼女の所に行こうって車に乗って向かう途中でなーんかわかんないけどこう、車がひっくり返ったりして(笑)死んじゃって。ああいうの、イヤなんです。死んで終わりってのが。北野武さんの映画も…僕大好きなんですけど…『ソナチネ』はね、自分でパーンって頭撃っちゃって終わるじゃないですか、あれがこう…なんかガッカリして。だから、もし僕が死んで終わりって言う映画を作ったりした時には、何かよっぽどな事があったんだと思って下さい(笑)。でもね『BULLET BALLET』もね、死なないで終わるけど「すっごい救われた」って人と「救いようのない映画だ」って言う人がいて、両極端なんですよねー…。
あっそういえばね、当時(『TOKYO FIST』主演の)藤井(かほり)さんと話してたんですけど、『TOKYO FIST』の冒頭のシーンをね、あのージジイとババア…じいさんとばあさんが縁側でお茶飲んでるシーンとかにして、そのうちジジイが入れ歯を外してコップの中に入れるんですよ。そしたらシュワーっとなるじゃないですか。で、シュワーッとなって…泡が消えたらその入れ歯がマウスピースになってるって言う…(爆笑)そういうシーンにしたらとかね(大笑)絶対やりませんけどね!そういう話をしたりしたんですよ。死なないで長生きしてね…って。3人はそれぞれ、今でも元気一杯!(笑)生きてます。

●今の『鉄男』もそうでしたけど、『電柱小僧の冒険』とかでも、メイク、してらっしゃいますよね?
塚:はい(笑)してますねえ。

●メイクはお好きなんですか?
塚:(笑)好きー…ですねえ。あのほらやっぱりアングラ劇の名残りで。川原くんもね、そうなんだよねっ(編注:川原氏は劇団『パノラマ・キメラ』の主宰。今も活動してるのかな?)。
川:そうですね、アングラですね(にっこり)。
塚:もうメイクは気合い入れますよー。特に(アングラ劇の)女の人の、メイクへの情熱は凄かったですね、気合いも時間も凄くかけて。『電柱小僧の冒険』も、もともとは舞台作品だったものを映画にしたんですよ。で、アングラってー役者とスタッフを兼ねている場合が多いんですよ、川原くんの時代はもう違ったかもしれないけど?
川:いや、兼ねてましたね。
塚:役者が、自分の出番じゃない時は裏方もやるんです。音響も出てない人が交替で操作したりするんです。『鉄男』は出演者が4人ですけど、その出演者が重要なスタッフでもあったんです。あれ必ず2人ずつしか画面に出てないでしょ?あれは、出れないんです(笑)。2人迄しか。2人が出て、1人が撮影して、1人が照明。だから、絶対2人迄しか出ない様にストーリーを作ってあって。まず眼鏡の女の人と田口(トモロヲ)さんが出るでしょ。その時は僕が撮影で、もうひとりの女の人が照明なんです。で、眼鏡の女の人がちゃんと殺されて、もう出ないぞってなったら、もうひとりの女の人が「さあ〜私の出番よお」ってバシッとこう(ジェスチャー)メイクして出ていくワケです。で、僕が撮影、眼鏡の女の人が照明。で、その女の人がしっかり死んで、もう出ないぞってなったら今度は僕がメイクして(笑)撮影と照明を女の人2人がやると言う。そういう現場でした(笑)。

●照明はやはり重要ですか?
塚:重要です(即答)。この重要さに気付くの遅かったんですよ。て言うか照明がいるって知らなくて(笑)最初の頃は、逆光で室内撮って真っ黒になっちゃったりして、な〜んで真っ黒になっちゃうんだろーなーとか思ってて。中だと暗くなっちゃうからってわざわざ室内のセットを屋外に作って撮影してたりして(爆笑)なーんて手のかかる事してたんでしょうね、照明やればそんな手間もコストもかかんないのにね。気付けよ!って感じですね(笑)。で、いろいろやってるうちに黒澤明さんの作品とか観て「いくらなんでもこれはおかしい、絶対何か光を人工的にあててるだろう!」ってやっと気が付いて。それからすっごい凝りだしちゃって。TVドラマとかで、ただパーンって真っ正面から照明あてただけって画がよくあるでしょう。妙に明るい。あれがね、大っ嫌いなんですよ。『BULLET BALLET』でも、駐輪場で乱闘するシーンがあって。追っかけっこして、乱闘して、銃パンパーンって撃つ、それだけのシーンなのに(照明にこだわるから)すっごい時間かかっちゃって。何日も何日も夜に…駐輪場に柱あったでしょう?あの柱をしっかり撮りたい訳ですよ。きっかり、影とか、デッサン描くみたいに陰影をしっかりつけて撮りたくて。そのまま、ただぽーんと撮りたくなくて。だからすっごい時間かかっちゃって。ワンカット撮るのに照明動かして、チェックして、撮って、またワンカット…って照明ぐるぐる回して。そう言えば『TOKYO FIST』の時に川原くんにさ、「はいカットー、はい照明ー」「はいー」「はいカットー、はい照明ー」「はぁ、はい〜」「はいカットー、照明ー」「あぁあ〜」って、ひっと晩中照明ぐるぐる回させてさ、あの時川原くん「もう、もう出来ません…」って顔をしたんだよね(笑)。ふっらふらでさ「も、もうダメですぅ」って顔を(笑)。
川:あはははははは(笑泣)もう、あの時はね…顔で訴えたんですけどね。
塚:でも、やらなきゃ映画が出来ないから(キッパリ)。「ん?何?」って感じで、「ほらほら、照明」「はやくして」って。あの時はねえ「俺酷いなーっ、鬼だなー」って思いましたね(笑)。

●演技やセリフ回しがとてもオーバーだと思うんですけど…。
塚:(笑)これもアングラの影響ですねー、舞台の勢いそのまま。あと『鉄男』とかは、お金がなくてフィルムが、ホンットギリギリだったんですよ。だから絶対NGが出せなかったの(大笑)NGが出せないプレッシャーがあると、テンション上がるんですよ、すっごい力入っちゃうんですよお(笑)舞台みたいに、アクションもオーバーになるし、セリフも…妙に力入っちゃって(笑)。今日ってあと何やるんですか?『双生児』と『ヒルコ』?あっそうか、双生児とヒルコちゃんなら大丈夫かな。で、次回が『鉄男II』と『TOKYO FIST』と『BULLET BALLET』?はあ〜、(シネアミューズのスタッフに)いい組み方しましたねえ(笑)。これが『鉄男』、『鉄男II』、『BULLET BALLET』だったらもお〜グッタリでしょうね、キライになっちゃうかもしんないですね、「うわあああー!」「ぎゃー!」みたいのばっかりでね(笑)。

●気の早い話ですけど、次回作の予定は?
塚:あ〜…『BULLET BALLET』と『双生児』にかなりエネルギー注ぎ込んじゃった所があって疲れちゃって、しばらくは…。プランも沢山あるし、いろいろお話も頂いてるんですけどね。ずーっと前から言ってる『悪夢探偵』ってのもやりたいしね、『鉄男アメリカ』もいい加減…ずーっとやるやるって準備はしていたものの、やっと「これだ!」ってアイディアが出たんですよ。あのね、空飛ぶ鉄男空飛ぶ鉄男ってずっと言ってたけどどうやって飛ばすかっていいアイディアが出なくて。最初はジェット機と同化しちゃってとか考えたんだけど、それは違うだろう、面白くねえなって思って。で、思い付いたってのが、こう、怒りのエネルギーがパン!と発射されるんですよ、それが下に向かったら地下に潜っちゃうんですけど、上に向けたら飛ぶんですよ。最初は本人もワケわかんなくて「うわああ〜!」とかって言ってるんだけど、だんだん自分でコントロール出来る様になっていくの。で、実際にどうやって飛ばすかってのは、川原くん達が考えるの(笑)。
川:ええ〜!?
塚:「じゃ、よろしく!」っつって。「君達が考えるんだよ〜」ってね(笑)。それじゃあ、そろそろ時間もなくなってきたみたいなんで…ギャスパー、何かある?
ギ:(鉄男アメリカはどうなってるんだ僕は楽しみにしてるんだ〜云々と英語で言う)
塚:はぁ、はぁ、あ〜よくわかんないんスけどね、へへへ、鉄男アメリカね、へへへへ。今話したんですけどね(笑)。
川:それじゃあ時間なんで、最後!あとひとり、質問ある方いらっしゃいますか?

(おおっ、てらてらが手を挙げました〜!)
●ロケハンとか非常にされてると思うんですけど、『BULLET BALLET』の最後のシーン、ふたりが走る所で、背景の壁に『生(なま)』って字が書いてあるんですけど、あれはああいう字を書いてある場所を探したんですか?
塚・川:ああ〜!(爆笑)ああ、ああ、あはははははは…(力ない笑い)。
塚:あれねえ…あれは狙った訳じゃなくて…ああ、ありましたねえ。あれはもー、一晩中撮ってて最後の最後にフッラフラになって撮ったシーンで、そんな狙ってとかじゃ全然なくって…。編集の時「あ〜、映ってんなあ」って思ったんだけど、結局切らなかったですねえ。「なま」!「生きる〜!」とかのメッセージでは全然ないです(笑)。
●ああ…サブリミナルな効果を狙っての事なのかなと思ったんですけど。
塚:いや、そんな事はないです!(強調)全くそんな。
川:(笑)それではどうも有難うございました!

柔らかい物腰の中にも鬼っ子発言多数のとこがこの人らしかったです(笑)「でも、やらなきゃ映画が出来ないから」はこの人が言うと怖いわ…。妙に説得力のある名言でございました。
そしてよかったねてらてら〜!塚本さんはひとの目を見据えて話すステキなひとだったわね!