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2010年05月03日(月) ■ |
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塚本晋也お蔵出し『海獣冒険譚』(1999年) |
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1999年11月3日 日本大学芸術学部 芸術祭 TSUKAMOTO SHINYA IN SPECIAL TALK EVENT『海獣冒険譚』@日本大学芸術学部江古田校舎大講堂
塚本氏の母校日芸でトークイヴェントが開催!と言う事で江古田校舎迄行って参りました。日芸の後輩が監督のプロフィールを追いながらインタビューをする形式で、途中参加者の質問コーナーを挟み、各作品の予告編ダイジェストも上映されました。その様子を超ダイジェストでお送りします。テレコ録ってないので自分の記憶だけが頼り。言葉の細かいニュアンス等違いがあると思いますが、話の流れは忠実になる様心掛けましたのでご容赦下さい。
●ご自分の作品をカルトエンターテイメントと呼んでいますが、これはどこから思いついたのですか? 「CMの仕事をやっていたので、クライアントとか大勢の人からいろいろ言われて、自分のやりたい事が出来なかったりして。それがイヤで『鉄男』を作ったんです。で、その『鉄男』を作る時に、あのーほら、つまらないもんを延々観せるだけとかってあるじゃないですか、人が寝てるのを一晩中撮ってずーっとそれだけとか。そんなのを実験映画とか言ってさあ…まあいいや(笑)そういうのはやりたくなかったんで、エンターテイメントをやりたいって思って」
●高校から絵画を本格的に学び始めたそうですが、それは何か目的があっての事ですか? 「もともと絵を描くのが好きだったし、父親も絵を描く人で、絵を基本にしておけば映像とかデザインとかいろんな事をやるのに役立つぞとサジェスチョンしてくれたと言う事もあります」
●絵ってひとりで描きますよね、 「そうですね…って、普通ひとりじゃないですか(笑)ふたりでこう…うーんとか言って描いてたらちょっと(笑)」
●いや(笑)自主映画って言うのもひとりでやるじゃないですか。撮影も、編集も…絵画からの影響があるのかなと思って。 「ああ、そうですね。自主映画ってひとりで絵を描く作業に似ていますね」
●しばらく映画作りを休んで、野外でテント芝居をされていましたよね。演劇の方に映画とは違う可能性を見出したとかってあります? 「演劇と言うより…パンクなライヴを芝居でやりたい、と言う思いでしたね。外で大暴れしたかったんです。それでテントを張って…日芸の中庭でもやりましたけど。建築学科の人に段ボールで作るテントの設計をして貰って、でっかいのを。学祭とかじゃなくて、普通の、平日にやってましたね。あの、中庭にテントが張ってあるの、学食から見るとシュールでしたよ(笑)でもいっつもギリギリ迄準備やってて、告知とか出すの遅れて、ぴあに載っても欄外の小っちゃいコーナーで。だから人はあんまり来ませんでしたねー」
●学校の外でもやってましたよね。高田馬場駅のすぐ近くにテント張って上演しているのを『塚本晋也10000チャンネル』で観たんですけど、大変ではなかったですか?テントを開けるとすぐ横が線路で、騒音とか、学校以外の場所を使う為の交渉とか、近所からの苦情とか、困難な事はありませんでしたか? 「いや、それはあまり苦になりませんでしたね。やっていた演目がSFの、未来に行っちゃう話とかだったんですけど、上演途中でテントが開くと外が思いっきり現代の高田馬場で、そこで真面目なお客さんとか興ざめしちゃったりするって事はあったかもしれないけど(笑)自分達は楽しく(笑)さっきも言ったけれど、外で大暴れしたかったので。大人になるとどろんこ遊びが出来なくなる、でもしたい(笑)でもホントに大人が外でどろんこ遊びをやったら、それはヤバい人になっちゃう(笑)それなら芝居で、と言う感じだったんです」
●CFの仕事をしながら、芝居をされていた時期がありますよね。二足のわらじは大変ではありませんでしたか? 「大変でしたね…会社が芝居をやるのを許してくれてたんです。社長がそういう、何か面白い動物を飼ってるのが好きってタイプで(笑)『うんいいよー』って。でもイジワルで、芝居の稽古が大詰めの時に海外ロケの仕事入れるんですよ(笑)で…その時はもう、ダメでしたね。もうつっまんねえ〜芝居になっちゃって。一度も通し(稽古)が出来なくて、本番で初めて通したって有様で。音楽も、クライマックスのいいシーンで、最高に盛り上がった箇所から流す筈が、前奏の最初っから流しちゃって(爆笑)役者も場を持たす為にうう〜とかって変な動きとかしてごまかして(笑)もう全然ダメ。CMの方も、納得いかないものが出来てしまった。あれでふたまたはダメと知りましたね。それからは必ずひとつに絞る事にしています」
●その後映画に復帰し今に至りますが、8mmで始めた作品から、製作費も増え、16、35mmとフィルムのグレードも上がっていきます。それに関して。 「8mmとか16mmの頃は、フィルムをじーっと見つめて『これ35(mm)になんねえかなあ』とかって思ってましたけど(笑)『1コマずつ撮れば安くあがるかもしれない』とか(笑)。作品を作る毎にフィルムのmmが上がっていくのは、すげえ嬉しいステップアップでしたね」
●モノクロ作品に関して。 「『鉄男』は白黒で行こうと決めていました。8しか持っていなかったと言うのもあり、最初は8で撮って16にグレードアップする手法もイケるんじゃないかと思って、デレク・ジャーマンが実際そういう作品を撮っていたので、確認の意味でジャーマン特集を観に行ったんです。で、観て『よし、いいぞ』と思ってたんですけど、その特集で16の白黒作品も上映されたんですよ。その色が良くて…粒子が綺麗と言うか、あの、白黒独特の銀色みたいな色が…非常に良く出ていて。で、我慢できなくなって16を買っちゃったんです(笑)。白黒と言っても、僕は白黒も色だと思っているので、例えば『鉄男II』では青と赤、と言う様に基本の色を決めるんですが、それが白黒になっただけなんですよ」
●都市を作品のテーマにする事について。 「例えば深作(欣二)監督だと戦争、若松(孝二)監督だと闘争、崔(洋一)監督だと民族的なもの、と確固たるものがある。でも僕には、世代的にそういうものがないんですよね。東京で生まれ育ったし、都市とか高度成長期とか、それしかないんです。そんなのをテーマに撮っていいもんかなと思ってたんですが、『鉄男』が…あれサイバーパンクとか言われてるけど、僕はエロ映画のつもりで作ってたんですけど(笑)あれの…肉と鉄が有機的にぐちょぐちょになっていく感覚って、僕ら世代の感覚なのかなって。昔の…『サイボーグ009』とかって脳ミソが生身、身体が機械って、かっきり分離してたでしょう。でも今はぐちょぐちょになってる…『TOKYO FIST』にしても、ボクシングって非常に…スポーツったって殺し合いの様なもんですから。リングで人殺しちゃっても罪にはならないそうですからね…そういう、死生観が稀薄になっている現代の都市にもこんな世界が同居しているって言う所も僕らの世代ならではなのかなと。それが作品として成り立っているかなって」
●『双生児』では、忌み嫌っていた貧民窟へ雪雄が外診へ行くシーンで終わります。この他にも塚本監督の作品には割と倫理的なものが感じられるのですが? 「そうですねえ、僕は結構倫理的な人間なんですよ。『BULLET BALLET』は銃をテーマにした映画ですけど、銃器にはいまいちハマれなかった。持ったら結構ハマるんじゃないかと思ってたんですけど、どうしても倫理的な気分が出てきちゃうんです。例えばナイフとかは普段台所で料理とか作るのに使ってて、泥棒とかが来た時に仕方なく使うって言うか(笑)そういうものでしょ。でも銃は最初から人殺す為に作られたもんですからね。撮影に入る前に、撃ちに行ったんですよ。最初は凄く緊張したんですよ。助監督と『ついにこの時が来たか〜』とか言って(笑)ドキドキしながら撃ったんですけど、それは最初の1発2発で、あとは馴れちゃう。あっけない。これが人を殺す道具なのかって…うん、ハマれなかったですね」
●と言う事は、『BULLET BALLET』は「銃はいけませんよー」って言う映画…(爆笑)。 「(笑)そ、そうですね!それもありますね(笑)」
●スタッフ、キャスティングについて。音楽の石川忠さんとは『鉄男』からもう10年になりますが。 「最初はこんな長いつきあいになるとは思ってなかったですね。『鉄男』の時に、鉄を使って音楽を作る人を探してて紹介して貰ったんですけど。『鉄男II』では前回とは違った雰囲気の、静寂の映画にしたかったんで、どうなるかなと思いつつまた頼んでみたら、そういうのもこなしてくれたんで、鉄だけの人じゃないんだなって(笑)『双生児』でも、寓話性のある、無国籍な映画に合った音楽をって依頼して。そういうのにいつも応えてくれます」
●作ってほしい音楽って、どういう風に伝えます? 「結構抽象的になっちゃいますよね、音楽の話は…。口で伝える事もあるし、テープとか持っていって…これはちょっと失礼なんですけど…『こんな感じ』って言う事もある。『双生児』では、北村道子さんの衣裳がチベット民族みたいなイメージだったのでそこからインスパイアされて、チベット音楽を結構ふたりで聴きました」
●そういう抽象的な打ち合わせは難しくないですか? 「うーん、楽ではない…けど難しくもなかった。あんまり不安はない」
●出演者についてです。常連の役者さんが多いですね。 「好きな人を選ぶので…好きな人ってそうそう変わるもんじゃないですから」
●キャスティングの基準は? 「雰囲気を備えていれば、役者じゃなくても構わない。典型的なものを避けたい。僕の映画は現場が長い…時間をかけて撮るんで、メインキャストの人達とはドップリねっちりやりたいんです。それに応えられる、長時間の拘束がきく人をオーディションで選んだり。素人と言うか、そういう染まってない人の方がいい雰囲気を持っていたりするし…ずーっと子役からやってきて、感じよくて『おはよーございまーす!』とか言っちゃう様なのはねえ(笑)イヤなんですよ。逆に脇を固める人は、最初から実力のあるベテランの役者さんを揃えてって感じですね」
●石橋蓮司さんや六平直政さん等個性的な役者さんから、元ボクサーの輪島功一さんやブランキージェットシティーの中村達也さんと言った、他ジャンルからの出演も…。 「石橋さんとかは、もうアングラの王者への憧れから(笑)『双生児』のお手伝いさん役の、もたいまさこさんもそう。(劇団)3○○にいた頃からのファンで。あの役はもたいさんか、早稲田小劇場にいた白石加代子さんかって感じでした。唐十郎さんにもいつか出て貰いたいと思ってて、オファーを続けてるんですけど」
●『BULLET BALLET』では、竹中直人さん自ら出たいと言うオファーが来たそうですが。 「ええ、そうだったんですけど…あのー『BULLET BALLET』はドキュメンタリー風の犯罪映画にしたかったんですね。で、ドキュメンタリー風だと…そこに竹中さんがいると…(笑)『あっ、竹中さんがいるぅ』ってなっちゃうんで(爆笑)竹中さん程になるとねえ(笑)鈴木京香さんはギリギリの線で。役になりきってくれました」
●そういうキャスティングって、脚本を書いている時点で浮かぶものなんですか? 「浮かぶ時もあるし…浮かばない時もあります。『BULLET BALLET』でヤクザの役をやった井筒(和幸)さんはもう、この人以外考えられないって感じで。もう、ホンモノかと(爆笑)」
●役者塚本晋也ってのはどうですか? 「そりゃもう!いい役者です!(笑)監督の要求によく応えてくれますね〜(爆笑)でもそろそろ疲れてきましたね(笑)あのーやりすぎちゃうんですよ。田口トモロヲさんもそうなんですけど、なんか間に耐えられないっていうか(笑)余計に『あぁ…はぁ…うっ…』ってうめき声とか入れちゃうんですよ(爆笑)撮ってる時もそうだし、アフレコでも。田口さん凄いんですよねアフレコ。これいろんな所で言ってるんですけど、凄い過剰なアフレコをするんですよ(笑)『はあ…ぁあ…』(と延々真似をする。これが凄い似てる!)とか凄くやるんですよ(大笑)僕もそうで。編集の時『うわー、やりすぎ!』って(笑)『うわー、オーバーだなあ、恥ずかしいなあ!』って思って沢山切っちゃった。それでもまだ凄く入ってる(笑)」
●監督の作品には破壊衝動がありますが、都庁はまだ壊したいですか? 「(笑)そうですねえ、都庁って出来た時の景観とか評判悪かったじゃないですか、でも僕はいいなーと思ってて。『綺麗でいいなー、壊したいなー、ヒヒヒ』って感じで(笑)いつかオリジナルの怪獣映画は撮りたいですね。で、いろいろ壊して。…今思いついたんですけど、009って世界各国に支部があって活動を報告しあったりしてましたよね。あれの鉄男版で、世界各国に鉄男がいて、破壊の報告しあうの(笑)各国鉄男バージョン!『今日はどこどこを破壊したよー』って報告するの(笑)面白いなあ、イケないかなあ…別に面白くないか(笑)」
●ここで参加者の皆さんからの質問を…挙手でお願いします。 「客席が見えないなあ、来てる人が見えると安心するんですけど」 (客席の照明がつく)
●監督の私生活が気になってしょうがないんですけど…(場内爆笑)。 「な、なんでですか!こ、こわいなあ…」
●今迄でいちばん衝撃的な恋愛体験について教えて下さい。 「えっ!そ、そんな事言えないですよ!まあ〜僕1年前に結婚しましたんで、それがいちばん衝撃的だったって事で、ね」
●『双生児』で捨吉が母親と会うシーンで、側転をしますよね。あれは監督が側転って本木さんに演技指導したんですか。それとも本木さんのアイデア? 「あれは僕ですねー。もう、あそこは側転しかないだろう!って(笑)何で側転かって訊かれると困るんですけど、側転しかないぞここは!って(笑)母親に会って、ウキキーッて感じ。あんなねえ、ドッタンバッタンやったら家のもんが気付かない筈ないんですけどね(笑)音効の柴崎憲治さんに最初に音作って貰った時も、ドッタンバッタン凄くって(笑)あのシーンは風の様な雰囲気を出したかったんで、風の音だけにして貰いました」
●自転車が好きみたいですが、 「あのーひょっとして自転車屋さんの方ですか?」
●そ、そうです。 「あっ、『双生児』のホームページに書きこみしてませんでした?」
●書きました(笑)。 「やっぱり!あのーあれ、インターネットって面白いですねー!あんまり使う方じゃないんですけど、『双生児』の掲示板に行ってみたら昔の同級生とかスタッフの人迄書き込んでて!『ああ、つながってるう!』とか思って!…何の話でしたっけ(笑)」
●自転車… 「あっ、そうですね(笑)自転車屋さん、いつもいらっしゃるんですか?」
●いや、もう辞めちゃったんで。 「そうですかあ。あの時は鎌倉に行ったんですよ。担げるサイズのマウンテンバイク持ってって。もう自転車大好きなんですよ、自転車の映画作りたいんです。って言うかもう作るつもりなんですけど。自転車が好きな男と、いつも寝てる女の話をやりたいんです」 (で、結局何の質問だったんだ?(笑))
●ここで質問コーナーは終わらせて頂きます。では再び…。 「えっ、戻るんですか?もう終わりだと思っちゃった(笑)」
●(笑)いや、まだです。グレートアナログワールドを自認する塚本監督ですが、CGを使う事に興味は? 「…グレートアナログワールド(笑)今はこっちのが特殊になってきてますからね。全編CGCGしたものはどうも…コマ撮りしてガチャガチャってつなげた方が面白かったりもするし。今度やる予定の『空飛ぶ鉄男』でも、こっちの方でやる部分と、デジタルでやる部分とあるでしょうね。『双生児』では、本木くんが同じシーンにふたり出る所…雪雄と捨吉がいちばん過激なスキンシップをする…首絞めあいっこする所ですね、ここにCGを使いました。どちらにしても使いどころが問題」
●今後の予定を教えて下さい。 「鉄男アメリカ。『空飛ぶ鉄男』ですね。そのバクハツ系の前に一発、削りまくった様な映画を…さっき言った自転車をやっちゃうかも知れない。自転車好きな男と寝てばっかりいる女の。ここで自転車への思いを一気に(笑)」
●最後に、映画を作っている人や、ここにいる人にメッセージを。 「メッセージ…(笑)自分が手探りでやってるんで、メッセージなど…うーん…『やればあ〜?』(爆笑)しんちゃんですね、しんちゃん(笑)(クレヨンしんちゃんと晋ちゃんをかけたかったらしい)…そうだな、誰でも思いつく迄は行くと思うんですよ。そこからでしょうね。凄いアイデアを思いついた、でもそれを作るのには6億いるなあ、じゃあ出来ねえなあって、そういう人は、ダメー(笑)。それを形にする迄が才能なんでしょうね。思いつく才能は誰にでもあると思うんです。何が何でも作り上げるってのが大事」
●今日は長い時間どうも有難うございました。 「はーい、有難うございましたー」
そんな訳で大笑いの連続で終わった楽しいトークイヴェントでございました。現場の様子や、監督が作品を作る時に何を考えていたのかの話を聞ける機会はそう多くはないので、興味深い内容でした。
最後に、印象に残った事など。
・オープニングでは、ステージ後ろの大スクリーンで『BULLET BALLET』の予告編を上映。音響も良くて迫力!でした。 ・金髪の男のコ集団が最前列に陣取ってておかしかった…ファンってかわいいね。 ・モノクロを「白黒」って言ってたのが印象的。 ・てれると水を飲む傾向にありました(笑)。 ・話がすぐ脱線する。でもそれが面白いんだな〜。間が空くのに耐えられなくて一生懸命、相手を楽しませる為に喋って質問が何だったかわからなくなっていくっていう…。もうおかしかったよー。でもそれを入れると内容が異常に長くなるし(それ程脱線が多かったと言う事か…)、質問がどこに行ったかわからなくなる(笑)ので割愛させて頂きました。いやーホントいいキャラクターだね、監督。お疲れ様でした、有難う〜。
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