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2010年03月26日(金)
『イングロリアス・バスターズ』

『イングロリアス・バスターズ』@早稲田松竹

最終日最終回にすべりこみ、立ち見も出る盛況でした。なんかすごい男性客多かった…。気付けば二週連続で週末に戦争映画、しかもどっちもオスカーのノミネート作品であり、監督もノミネート。あ、脚本もか。しかし内容は真逆と言うか何と言うか…今年から5作品から10作品になったとは言え、よくこんな映画ノミネートしたなアカデミー賞(笑)。タランティーノ大好きだわ、最高だわ。スクリーン上映に間に合ってよかった!

いやーそれにしてもどうしてこうタラちゃんの映画はバイオレンスがこんなに楽しいのかなー!といろいろ考えてしまったのでした。もう終始ニッコニコの笑顔で観てしまったよ、ずっと口角上がってたよ。それってやっぱりタラちゃんが映画のことを心底愛していて、映画のことを信じ切っているからなのかなと思いました。これは映画だよ、映画は何でもやっていいんだ、映画は大ロマンスも描けるし、残虐なシーンも描ける。映画は大ボラを吹けるものなんだ!

その大ボラな世界に引き込んでくれる登場人物が、分け隔てなくバカばっかりなのが最高だ…それもお互いのお国柄のイメージを拡大し極端にしてるところが素敵だ〜。ドイッチェはちょう冷静、上下関係厳しい、保身大好き、下手に出てても歯向かわれると沸点低くてキーッてなる。一方アメリカは大雑把の極みで、台詞中にもあるが「英語しか喋れんのか」って言われちゃうし(イタリア語喋れるよーつってて全然ダメだったシーンに大ウケ。あれで「いちばん喋れる」んかい!)、そんな穴だらけの作戦成功する訳ねーだろー!ってところを腕っぷしの強さで帳尻合わせちゃう。問題と答えが合ってても式が間違ってる。分け隔てないと言えば、男が女をボコボコにすれば、女も男もボコボコにします。今回は素手でそういう場面はなかったけど、力関係としては互角です。こういうとこはいっつも徹底していて大好きだ。いや、こういうとこは、じゃないな…タランティーノの作品って、どこもかしこもあらゆるところが徹底している。それはやはり前述の、映画は大ボラを吹けるものと信じて疑わないから、だからこそ徹底してその大嘘を突き通すんだ、と言う映画への愛情なのだろうなと思う。

そんでおバカな登場人物たちが皆かわいげがあるんだよね、にくめね〜。フレデリックとかちょうウザいんだけど、根っからの悪人じゃないと思わせられる台詞や態度がちょこちょこあってさー。“ユダヤ・ハンター”ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ最高!)もお菓子好きで牛乳好きで笑い上戸でさ。忘れっぽいヒトラーも、さめざめと涙ぐむゲッベルスもね。バカっつったらレイン中尉が最たるもので、演じるブラピがこれまた最高。ホンットいい役者さんだな!大好き!

そのおバカちゃんたちが一瞬だけ輝くところを捉える演出とカメラもいいんだよ〜。映画館での銃撃戦で、オマー(オマー・ドゥーム)が銃を取り出し乍ら走るシーンがスローモーションになったのにはシビレた。あと微笑んでフィルムに火を落とすマルセルの姿には涙した。あ、マルセルとショシャナはおバカちゃんではなかったな、このふたりは今回の作品のロマンを背負っていた役だと思いました。最後のハグとキスはとても美しくせつないシーンだった。ロマンと人情を見せた登場人物は見事に全滅したところも徹底してていい…もうたまらんこの非情さ。

映像、編集(間)もだけど、台詞がまたいっつも素晴らしいなー!お互い腹に一物の登場人物たちが、いつ嘘を見破られるかと一触即発の会話を繰り広げるシーンの緊張感と言ったら!そしてその回避/激突時のカタルシスと言ったら!大丈夫だったと言う解放感と、ダメだったイコール地獄行きのスピード感。ギリギリ迄どっちに転ぶかわからないそのスリル!ラストシーン〜エンドロールの間も最高。これ『デス・プルーフ』の時もよかったよねー!観客呆気にとられる→爆笑、みたいな。あんだけ残虐描写があっても後味がなんでこう爽快なんだ!

脚フェチっぷりもまた存分に見せてくれた。靴の照合するとこなんて最高にエロい!食事の描写もエロいよね〜そのクリームをあんなにアップで撮る意味は!うまそうじゃねえか!最高です。女優たちをいつも格好よく撮るところも大好き。ショシャナがデヴィッド・ボウイの「Cat People」(映画版のver.)をBGMにドレスアップするシーンの格好いいこと!チークをのばす前に指で1ラインずつ両頬にひくんだけど、それが戦化粧みたいでさ!しかしこの子はすっぴんもちょうかわいかった。メラニー・ロランはユマ・サーマン系列の顔立ちで、あ〜こりゃタラちゃんのミューズ顔だ、と思った。女スパイダイアン・クルーガーのクラシックな美貌とファッションも格好よかったー。あ〜タラちゃんの撮る女性大好き!

BGMと言えば「荒野の1ドル銀貨」も聴けた。わおー西部劇!な導入からショシャナが逃げるところ迄、もうニヤニヤしっぱなしだよ。タラちゃん、最高…サントラ買おう。タランティーノのことだから、きっともっともっと数えきれない程の映画からのオマージュが挿入されているのでしょう。知ってたら二重に楽しめるのでしょうが、知らなくてもOK!いつの日かその元ネタに気が付いて、そうだったのか!とまたニヤニヤ出来ると思えばそれもまた楽しい。

あー、あとユダヤの熊が出てくるとこ、釘バット持って出てきたらどうしようかと思う程ニヤニヤニヤニヤしちゃった。普通のバットだった(笑)。

あ〜最高ばっかり書いた。タラちゃんの映画はロマンありバカありバイオレンスありオマージュあり笑いあり涙ありのてんこもり、いつでも腹いっぱい!何度でも言うがタラちゃん大好き!あ〜映画ってホントいいな〜(えびす顔)。