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2009年12月19日(土)
『歌舞伎座さよなら公演 十二月大歌舞伎』昼の部の復習と夜の部

■昼の部の復習
・『大江戸りびんぐでっど』は落語の『らくだ』『死神』を知っているとより楽しめたそう。あああ
・そういえば成志の落語には結局行かれなかった……
・『野崎村』は、本来両花道で演じられるものだそうです。道理で…。一緒に帰っていく筈の久松とお染が全く違う方向に進んでいくのでなんで?と思ったんでした。集客優先で席を潰せなかったようです。あ〜、福助さんのお光で、本来の演出でまた観たいな
・『身替座禅』、TVで勘三郎さん×彌十郎さんのを観る以前にどっかで…と思ったら、これ能楽の『花子』ですやん!気付くの遅いやん!
・帰宅後筋書きの野田さんのコメントを読んでちょっと反省。
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(新しい歌舞伎座は)絶対に悪く言われるはずだ。前の方が良かった、と。でも、それを言ってはいけない。新しい空間がまた、いいものに見えてくるように、素晴らしい作品を創り続ければいい。つまり(芝居好きの人間の)垢をこすりつければいい。それはもう私の次の世代の垢だったりするのかもしれないが、そうやって、空間は何時も新しくなっては愛されて、垢にまみれて、やがて古くなり、そしてまた新しくならなければいけないのである。(中略)愛されさえすれば美しくなる。人も空間も同じである。
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そうか、新しい歌舞伎座を皆で愛していけばいいんだ

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『歌舞伎座さよなら公演 十二月大歌舞伎』夜の部@歌舞伎座

『引窓』『雪傾城』『野田版 鼠小僧』。ネタバレあります。

■『引窓』
橋之助さんはどんな格好をしても橋之助さんに見える……(笑)。こちらでも三津五郎さんと巳之助くんが共演。世話物は泣かせるなあ。しかし笑える場面も多くて、おたずね者長五郎の人相を変えて逃がそうと嫁と姑が四苦八苦するところが、本人らが必死になればなる程笑える。黒子とれちゃうところとか。

■『雪傾城』
勘太郎くんと七之助くんが登場した途端、「中村屋!おめでとう!」と声が飛びドッとウケる。勘太郎くんよく耐えた(笑)、と言うか、今月はずっとこうなんでしょうな。おめでとうございます。
この日の大向こうはノリがよく、芝翫さんへの「神谷町!」もふんだんに聴けました。今、地名で大向こうがかかるのは芝翫さんと、松緑さんの「紀尾井町」くらいなんですって。
さてその芝翫さんが、孫たちと踊る華やかな舞台です。6人全員孫、しかも全員歌舞伎役者。いいもん観た…。かわいらしくもたどたどしい国生ちゃん、宗生ちゃん、宜生ちゃんには客席から「はあ〜、かわいいわあ」的な声が漏れ、最後に芝翫さんと児太郎ちゃんがせりで登場するとため息とともに拍手と歓声。やーなんかこの登場の仕方はロックスターのようだったよ、格好いい…。

■『野田版 鼠小僧』
6年振りの再演。年の瀬のお話を初演では納涼歌舞伎でやりましたが、今回はドンピシャの12月公演です。終演後外を出ると銀座はクリスマス前のにぎわいで、三太に思いを馳せ乍ら地下鉄への道を歩きました。
初演の感想はこちら。あーそうだ、初演の時は勘三郎さん、まだ勘九郎だった。そしてお亡くなりになった吉弥さん(彌十郎さんのお兄さま)が演じた辻番人與惣兵衛は、井之上隆志さんが演じていました。あとはだいたい同じ配役かな。
今回はさん太の心情に妙にぐぐうっとキてしまいましたよ…トシか。親からなかったことにされてても、きっとどこかで見てくれているひとがいるよ!おみゃーはいい子だよ!きっと誰かが、誰かがあああああ〜おうおうおう(号泣)。そんなもんだから、そんなこどもは最初からいないよ〜とか言う橋之助がも〜憎たらしいのなんの。初演の何倍増しか!あんた最低だ!(役が)あー憎たらしい!あー憎たらしい!(役が)しかもよく考えてみればこの子(宜生ちゃん)、橋之助さんの実のこどもやん。役者って因果な職業だわ…(泣)。ちなみに初演のさん太は鶴松(当時は清水大希)くんでした。
だもんだから大岡政談・お白州の場では三太もっと言ったれ!清吉も空気読むな!どんどんうっかり喋れ!とか思ってました。まあそう思っても話の筋が変わる訳でもなく。
しかしここらへん、再演だし、歌舞伎って新作でない限り詳細に筋書きが公開されているのでネタバレしまくりだし、三太がどうなるか知ってるひとも多いんですよね。そして歌舞伎座の客席は往々にして落ち着きがなく、常に誰かが喋っていたりお弁当やお土産の袋をがさがささせているひとがいるもんですが、ところが。それなのに。大岡忠相が裁きを下すところでは、ものの見事に場が静まり返ったのです。ちょっとこれはビックリしたわ…文字通り水を打ったよう。なんだよやれば出来るんじゃん!と言うより、ここはもう野田さんの話運びの巧さと演出の力に依るものでしょう。素晴らしかった。
そうそう勘三郎さん、毎日言ってるんだろうけど、今思いつきましたみたいな感じでアドリブを飛ばすのがまたいい。観客を楽しませる、観客が面白がるなら首が飛んでも動いてみせそうな役者さんですよね…本当にすごい。女子アナ、小林麻央ネタときて、勘太郎くんとのシーンで「ちっちゃい女つれてた。9年つきあった」と言いやがりました。勿論場内大ウケ、しかもなんてえの、ドリフか!てなくらい、字に書けそうな「ドッ」とした笑い声。それを受けた勘太郎くん「…バカじゃねえの!?」これでまたドッとウケた。どM…こんな父ちゃんを持って、いろんな意味で修羅の道ですね……。でも勘太郎くんならきっと大丈夫!そして勘三郎さんもそうだったんだろう。あー、こうやって歌舞伎役者は代々愛されて、そして歌舞伎座も愛され続けていくんだなあとしみじみした。
終演後、愛ちゃんとお母さまがロビーにいらしたんですが、方々から「ちっちゃい子だ!」「ちっちゃい子だ!」と囁かれていました。嫁も修羅の道です(苦笑)。

それにしても福助さん(昼の部と同じひととは思えない悪女役(笑))と七之助くんは声が通るねえ。染五郎さんと勘三郎さんは大分声がキツそうでした。しかし勘三郎さんの声、決して美声ではないんだけど、他の声だったら勘三郎さんじゃないと言うくらいの確立した声だもんね。唯一無二の役者さん。素晴らしい舞台を毎回有難うございます。

とらのしめかざり買って帰ってきました。