I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
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2009年03月21日(土) ■ |
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『昔の女』とか |
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■あああ ちょっとPC開けない間にジミーがスマパンを脱退していた。 ビリーとうとうひとりぼっち……
■ギエムの『ボレロ』@NHK んあー初の公式映像!保存版!ううう、素晴らしい。他のプログラムも面白かったなー。 しかし落ち着いてみると振付若干変わってるのな。ベジャールが亡くなった今、これはどうとればいいのか…過去観た中ではいちばん感情が表に出ていて驚きもしたのだけど。あのマシーンのように踊るギエムが?と
■情熱大陸@TBS(書いてるのは日曜日) 堺雅人さん。うあー劇研出たよ!東京オレンジも出たよ!そしてそうだったこのひと宮崎出身だった。そうだよ実際観られる訳でもないのに、宮崎迄第三舞台の噂は届いていたものだった。あれ不思議だよなー、なんで知ったんだっけな自分も……。 あ、イケテツが出た!(実況) 憑依型の役者に憧れるって話が興味深かった。しかしこのひとって何げに狂気の塊に思える。「喜怒哀楽全ての感情を笑顔だけで表現する男」@『噂の男』って、うまいこと言うよなあケラさん
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2008/2009シーズン シリーズ・同時代[海外編]Vol.1『昔の女』@新国立劇場 小劇場[THE PIT]
海外の現代戯曲を上演するシリーズ。今回はドイツ、ローラント・シンメルプフェニヒの作品です。日本初演。松重豊さん久々の舞台、倉持裕さんが演出。いんやビックリした…えーとネタバレしますよ。で、これから観る予定の方は読まないでください。知らないで観た方が絶対いいです。
ネタバレと関係なしに思ったこと。
・倉持さんの底知れないおっかなさ。オリジナルの『オートマチック』、脚本の『バット男』にも不気味さは滲み出ていたけど、演出のみでもそういう資質が出るものだなあと ・中根聡子さんの美術って面白いな。『わが闇』もそうだったと知って成程と思ったり ・松重さんはここ20年でテレビや映画の仕事もぐぐっと増えたけど、それがいい方向に働いたなあと思うことが多い。昔って人間じゃない役とかひとごろしの役とかそんなんばっかりだったからね…いやそれはそれで大好きでしたけど。弱った松重さんを観られるのってなかなか楽しいです(笑)
以下ネタバレ。
ストーリーとしてはよくある…と言う感じのものです。24年前に愛を誓った女が現れて、幸せな家庭を築いている男を破滅に追いやっていく。このフォーマットをどう見せるかと言うところがみどころなのですが、いやあ…終盤一気にホラーに持って行きました。で、その見せ方(=恐怖を煽る画ヅラ)が見事でですね…演出、音響、照明の妙で、THE PITの独特な空間をうそら寒い現場に変えてしまいます。つらかった…最後の10数分はもういや〜な鳥肌がたちっぱなしだった……。上演途中で劇場をこんなに出たいと思うことってなかなかない!それがまたつまんなかったとかそういうんじゃなくて、とにかく怖くて嫌でって言う(笑)カーテンコールで救われましたが、もうすんごい後味悪〜く劇場を出ました。
時間軸をねじって、アナウンスとともに3分戻ったり20分進んだりと、前後したシーンを役者は演じます。繰り返される台詞も多いのですが、それを時間通りに進めた時と、先送りして演じた時とでニュアンスが変わる。登場人物の心境の変化を汲んだ上で観た場合の観客の心理をコントロールしようと言う意図が感じられてしまうところがまず嫌〜な感じです(笑)巧いな〜と思いつつ観ていたのですが…。そんな技巧がどうこう言ってられるかいと言う展開に物語は進みます。
中盤息子は絞め殺される。終盤妻は爆薬で吹っ飛ばされる。えええ、そうくるかい!それ迄「永遠の愛を誓ったじゃない」と言った感じで男を問いつめる、不気味さ満載しかしこういう女いるわなあと言う気持ち悪さでじわじわ存在感を増していた“昔の女”(西田尚美さん好演)が過激な手法を用いる訳です。しかしこれが男への復讐と言うよりも、男が自分なしで過ごした24年間をなかったことにしてしまおうと言う無邪気な発想からきたもののようにも見えてしまう訳で、こーれーがーまたおっかねえええええーーー!!!しかも「なかったことにしてしまえばいいや、でもこの男もういらないっ」て言う心理も見える訳ですよ。ひー!
で、妻は吹っ飛ばされる前に、女のことを「くされまんこ」と言う(巻き戻して2回言わせる構成なので、意識的に強調して書いた台詞だと思う)くらいには強くてえげつないキャラクターとして描かれています。そんなおっかねえ女ふたりが、その場その場で言ったことをいちいち憶えてられるかいと言う男をとりあう図式がなんともまあ…ありがちなだけに改めて舞台に載せられるとげんなりしますね(笑)
しかし忘れてしまっていたとしても、その時言った言葉やその時持った感情ってのは嘘ではないものなのでなあ。誰が悪いわけでもないってのがまたタチが悪い。
面白いのは、目の前で起こったことが現実なのかが判らないような構成になっているところ。男の家族は引っ越そうとしている。息子には彼女がおり、引っ越すことでふたりの仲は終わろうとしている。彼女は息子と会えなくなるこれからを想像し、待ち続けようかと夢想したりもする。それは“昔の女”の24年前の姿と重なる。破滅した家族の物語は、その彼女の妄想なのかもと言う説、男が実は24年前に殺されているのではと言う説もあるそうです。そういう連想をさせるフックが随所に散りばめてあります。
テーマとしては楽しく観られるものではありませんが(苦笑)構成の妙や人間の心理の移り変わりを鑑賞するものとしては面白いです。役者さんもいいです。そして妻が爆殺される描写は素晴らしかったと思います。今迄観たホラーな演出の舞台で、いちばんと言っていい程イヤなシーンだった。
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