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2008年07月12日(土)
『ウドンゲ』

3軒茶屋婦人会『ウドンゲ』@ベニサン・ピット

いい脚本、いい演出、いい役者。無敵。

篠井英介、深沢敦、大谷亮介が女を演じる3軒茶屋婦人会。ハイフナーの『ヴァニティーズ』、ジュネの『女中たち』ときて、今回は初の書き下ろし、出演者がほぼ実年齢の日本人を演じる。脚本は赤堀雅秋。

演出のG2が「赤堀くんとしてはとても珍しい(と思うのですが)ハッピー・エンディング」と書いていたが、赤堀さんはハッピー・エンディングしか書かないと個人的には思っている。人生が続く限り、問題が全て解決した上でのハッピー・エンディングなどある訳がない、そんなものは書かない。と言うだけではないだろうか。人生が続かない場合もある。それが先日の『立川ドライブ』だろう。しかしこれも、バッドエンドとは言い難い。どこにでも希望はある。それをどう受け取るか、の描き方の違いなだけのような気がする。

今回もそれは変わらない。しかし『立川ドライブ』のような「希望に絶望する」ものではなかった。50歳を迎えるか迎えないかのかつての同級生。30年振りに会った。3人の女と1人の男が“奇跡の夜”を過ごす。男は姿を現さない。酔って奥の部屋で寝ている。しかし、彼は最後に女たちにとても素敵なひとことを残していく。

元々得意とするところだろうが、“青さ”を拾い上げ磨き上げる筆が冴えまくっている。しかもそれは女子高生のもの。どうすりゃこんな機微を掬い上げることが出来るんだ、おい。なんでもないことでいつ迄も喋り続けることが出来る、ちょっとしたきっかけで口を利かなくなる。どちらも傷付いているがそれを言い出せない、そのまま30年会うこともない。どちらも誤解をしたまま相手を憎み、それと同じくらい身を案じている。第三者から見ればなんと言うことはないことでも、当事者たちにとっては一生心に澱が残るのだ。

カセットテープ、コンサートのエピソードが光る。そうだ、あの年頃のおんなの子はそうだった。待ってしまうんだ。心配と不安と怒りが混じり合う。身に憶えがある。おとこの子もそうなのかな?どうなの、赤堀さん?

酸いも甘いも噛み分けた中年の女性たちが、ちょっとしたひとことで10代に戻る。篠井さんの意地悪さの裏にある寂しい気持ち、そして色気。深沢さんのはしゃぎの裏にある暗さ、何かを乗り越えた強さ、自分は憧れのひとにはなれないと言う諦観、それすらも笑いに持っていこうとする必死さ。大谷さんの現状への不満、不安、妬みと自己嫌悪、秘密。それぞれの全身から立ち上がるよう。それが最後に笑顔になり、それぞれがそれぞれのポジションに戻っていく切なさ。しかし何かが確実に変わっている。

笑いどころも泣かせどころも満載です。小さな棘のように心に残り続ける作品になると思う。派手なセットはない、テーマも地味。しかし、現時点での今年のベストワン。

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・それにしてもあかほりは「ひょっこりひょうたん島」が好きだねえ
・深沢さん流石に歌が巧い。あんな素敵なひょうたん島を…(笑)
・そして最前列だったので、深沢さんのパンツとブラの線がよく見えました……
・で、やっぱり何か食べるのな。あれどうすんだーとずっと気になってた
・ジャンクな匂いに包まれる小劇場空間(笑)

・宣美は鳥井和昌さん。ニヤニヤ
・プログラムにスズカツさんからのコメントあり
・スズカツさんもだけど、裕美さんもあかほりのホン演出しねえかな〜(言霊を飛ばす)
・『サド侯爵夫人』本チラゲット
・そういえば天宮良さんは昔「色の黒い窪田晴男」って呼ばれてたな〜、一部で(笑)
・『冬の絵空』これは本チラになるのかな?
・THE SHAMPOO HAT次回公演
 『葡萄』@ザ・スズナリ
 作・演出:赤堀雅秋
 2008年9月10日(水)〜23日(火)

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報道ステーションの上田現の映像見せてくれた方、有難うございます。