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2008年06月01日(日) ■ |
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『95kgと97kgのあいだ』 |
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朝宅配便が来て、受領書にはんこ捺して、はんこを渡して笑われた。ねぼけてたー。
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さいたまゴールド・シアター『95kgと97kgのあいだ』@彩の国さいたま芸術劇場 大稽古場
新川さんてマイク・パットンに似てるな〜。今回キャップ被ってたから尚更。
それはいいんだ。『95kgと97kgのあいだ』で印象に残っていることと言えば、「この作品の稽古中に蜷川さんにすっごい怒られて、それがきっかけで蜷川スタジオを辞めた」と言う鈴木裕美さんのインタヴュー記事と、『Note 1969-1988』に掲載されていた舞台写真。再演されたら絶対観たいと思っていた。23年振りの再演。やっと観ることが出来た。
とは言っても、当時と状況はかなり違うようだ。初演には年配の役者は出演していなかったと思われる。蜷川スタジオは20〜30代の役者集団だったからだ。今回はゴールド・シアターの年配の役者たちが「一群たち」、NINAGAWA STUDIOの若手とベテランが「行列」。扇動者の「青年」が横田さん。『真情あふるる軽薄さ』と同じオープニング。桟敷席の一般観客に紛れて役者たちが入場し、行列を作り、そこでいざこざが起きる。あっと言う間に観客席と舞台が地続きになる、蜷川演出お得意の導入だ。
そこからしばらくは『真情〜』をなぞるような展開。青年が行列を挑発し、列を外れた者は機動隊に滅多打ちにされる。それにもひるまない青年は行列に発破をかけ続けるが、ひとびとは彼に罵声や嘲笑を浴びせたりはするものの、列を離れることはない。
そこに老人たちの一群がやってくる。行列は分断される。一群たちは舞台中央を乗っ取り、身訓を始める。坂道を上るシークエンス。完璧なストップモーションは出来ない。身体がぐらつく。だがそれは、物悲しくも美しい光景だ。やがて彼らは架空の砂袋を抱え始める。30kg、50kg…だがしかし、95kgと97kgの違いを表現することが出来ない。95kgは抱えられるが、97kgになるとくずおれてしまう。たった2kgなのに、持ちこたえることが出来ない。
行列と一群はお互いを嘲笑したり、異物を見るような目をしたり、死んだふりごっこをしたりする。一群たちを煽動していた青年が砂袋を抱える。やはり97kgに持ちこたえられない。それ迄一群たちを遠巻きに見たり、写メったり、笑い乍ら見物していた行列のひとりが青年に声をかける。「さあ問題の97kgだ!たった2kg、たった2kgの差だ!」それをきっかけに行列たちは一群たちに駆け寄る。「がんばれ!」いつ迄も続くかのようだった不毛とも思える行為に一瞬熱がこもる。ところがそこにまた機動隊がやってくる。しかしその機動隊のヘルメットをとると、かつて一群たちにいた老人の顔があらわになる。
ラストシーンにマシンガンを持ったこどもはやってこない。その代わり、戦争とも自然災害とも思えるような音が聞こえてくる。行列はなくなり、一群たちも舞台から出て行く。暗転の中赤ん坊の泣き声。現在に着地する。
かつて行列に並んでいたであろう、かつて若者を警棒で殴ったり、警官に石を投げたりしていたであろう老人たちと、そんな時代を全く知らない若者たちが、かつての、今の自分自身を演じているかのように同じ舞台にいる。それはいとも簡単に破壊される。地震でもサイクロンでも戦争でも。その身体はどうしようもなく現在のものだ。
よこちん声嗄れ嗄れ。ずーっとどテンション芝居なので大変でしょうねー。しかしやはり映えます。新川さんや清家さんが場を締める。ベニサン・ピットをひとまわり大きくしたような空間、舞台奥は鏡張り。人数が倍増して見える。集団のモブは流石の蜷川演出です。シガーロス、JAGATARA、清志郎を大音量で聴けてニヤニヤ。
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