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2008年03月18日(火)
やらかした+『INOUE TSUGUYA GRAPHIC WORKS 1981-2007』

今日はジミーイートワールド@AXだーと確認したら昨日のチケットだった。
…仕方ないじゃあ当日券だ(2daysなので)と財布を見たら5,000円しか入ってない。1,000円足りない。
万札入ってると思ってたのに。そうだ昨日井上さんの作品集買ったんだった。
銀行のカードも忘れてきた。
あああ。

****************

■『INOUE TSUGUYA GRAPHIC WORKS 1981-2007』

最初に告知された日から3週間遅れての発売。いやもう手に出来た時の嬉しさと言ったら…井上嗣也さんの作品集が出るなんて!

中島英樹さんも書かれてますが、とにかく滅多に表に出ない(戸田正寿とサイトウ・マコトとの鼎談が載った『イラストレーション No.24』は今でも大事にとってあるよー)、自分の作品をまとめないので有名な方。過去ちょっとしたカタログ的なものは出ましたが、自分主導で作品集を出すと言うことはないと思っていました。それを口説き落とした(と思われる)出版者の方に感謝感謝です。

中島さんが「妖怪」と書かれてますが、ホントそう思います。妖怪と言うか…アートディレクターと言う名の怪物だと。

あ〜楽しみ過ぎて通販なんてありえねー届くの待ってらんねー実物を見た途端に連れて帰るよと発売日に書店に走りました。職場出るの待ち遠しくて仕方なかった。そしたら3月10日に延期になってた。泣きそうになった(マジで)。10日に行ったらまた延期になってた。上田現のこともあったのでもうどんだけ落胆して帰ったか。

あと通販だとちょっと折れたり凹んだりしてるのを避けられないじゃん…それは予約も同様で。予約するとレジの後ろの棚に、店員さんが選んだものが置かれてそれが渡されちゃうじゃん。いや、折れててもいいの。凹んでてもいいの。その折れや凹みを自分で選びたいの。均質で提供される商品ではあるけど、そういうちょっとした違いを自分で見て、触って、気に入ったものを手に入れたかった。そんな思い入れを抱いてしまう程大好きなのです。

持って帰るの重かった。でもその重さすら嬉しかった。

印刷面でちょっとトラブッて発売遅れたと聞きましたが、それも納得。色がさわれる!インクが層になっているのがさわると判るのです。可能な限り広告本体に近付けたクオリティで刷られているのではないでしょうか。広告の作品集って、成果品をスキャンして色分解しただけ、のものも多いのでこれは嬉しかった。まあ当然か。出すからには、と言うやつだ。

井上さんの“怪物”っぷりはその強度にある。広告とは最も遠いところにありそうな野蛮なグラフィックを掴み、ポスターや出版物の領域に投げ飛ばす膂力の強さ。帯文にもある通り、速く、強く、遠くへ。写真の選択力、その暴れる写真を枠に収めるトリミング/レイアウト力、計算され尽くした配置のタイポグラフィ。そしてそれを形にするのは印刷と言う手法しか有り得ない、と思わせられる出来上がり。野蛮で美しく、大胆で繊細。印刷、紙、写真のパワーは井上さんから教わった。そのパワーは、常に生きることを問い、生きる喜びに満ちている。発売が遅れ、このタイミングで手に出来たことはよかったかも知れない。

そして勿論、ご本人によるコメントは掲載されていない。プロフィールと謝辞リストのみ。美学としか言いようがない。373点の図版の力をご覧あれ。