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2005年04月23日(土) ■ |
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『KITCHEN』2回目 |
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『KITCHEN』@シアターコクーン
先週観た後ジェンヌ☆の指摘で気付いたが、この芝居、アフリカンやエイジアン等のカラードが出ていない。なおかつ「ここはイギリスなんだから英語で喋れ!」と言う台詞がある。観客は「イギリス在住者として観る」と言う暗黙の了解があることになる。しかしドイツ語の台詞には字幕が付く。これはイギリスで上演された場合もそうなんだろうか?1957年初演、舞台設定も1950年代とある。第二次世界大戦が終わってそんなに経っていない。戦中に母国語をドイツ語に変えられた国も多かった訳で、舞台設定の年代にドイツ語をヒアリング出来るイギリス在住者は相当いたのではないだろうか。
安直な連想だが、そして不謹慎かも知れないが、今の中国、韓国と日本の関係に置き換えて考えることも出来る。そういう意味では絶妙なタイミングで上演されたものだ。YMOの曲にもあるが、「○歳以上のひとは日本語が喋れる」。
予備知識はあって損はない。しかし、追いつかない。ドイツ人とユダヤ人の微妙な関係は勿論、イングランドとアイルランドの緊張関係、キプロス人の立場、アメリカが憧れの国として提示されていること。他にも沢山ポイントはある。全てを理解出来る舞台ではなかった。でも、面白かった。
全方位のステージは勿論死角が出来る。席の位置によっては全く見えないところがあるし、反対側の位置で進んでいる芝居は把握出来ない。じゃがいもをむく少年が全く見えていない席もあったようだ。しかし逆に、その位置からしか見えないものもあった筈だ。ましてや登場人物は33人。
舞台は観客に神の視点が与えられることが多く、実際そう錯覚しがちだ。しかし、本当はそれはあり得ないことだ。思い上がるな、と言われているような気もした。レストランのオーナーが、キッチン内で起こっていることを掌握出来なかったように。
今回は出ているひとが皆登場人物にしか見えなかったので、どの役者がどう!とか言えない…。
蜷川さんとこの照明は毎回大好き!選曲もシガーロスがテーマで使われててビックリ!これがまた素晴らしくぴったりでしたよ…引っ張り出して聴き返しましたよ…。ちなみにシガーロスはアイスランドのバンドです。ここも微妙な国だよね。深読みしていいのかな。
選曲と言えば、ポールの独白のところでワーグナーがかかるのは皮肉だなあと思った…。
余談。今たまたま軍艦島について調べていたところだったためか、ラストシーンのキッチン全景が軍艦島に見えた。縦横の比率が似てる。縮小したらきっとあんな感じだ。で、あの面積に、あれだけの道具類がみっしり詰まってるって感じも似ている。1940年代には、中国人や朝鮮人が強制労働をさせられていた歴史もある。
従業員は皆出ていく、オーナーは取り残される。キッチンは廃墟になる。ペーターが言っていたように、ある日突然消えてなくなることはないけれど、ここは少しずつ朽ちていくかも知れない。ちょっとそんな妄想が浮かんだ。
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