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2003年11月29日(土)
『欲望という名の電車』2回目

『欲望という名の電車』@青山円形劇場

中日にも行きたかったんだけどどうしても都合がつかず(泣)、2度目はいきなり楽日の前日。話には聞いていたが古田さんのアドリブがごっつう増えていて、前半はかなり笑う。その分終盤がすっごい悲しいのね…。

初演も含めて、初めて真正面ブロック(Hブロック真ん中寄り)だったので、風景も違って面白かった。古田さんの動線が見やすい。動きがすごく綺麗だなと改めて感じる。このひとはホント身のこなしが綺麗だな。一緒に観ていたヒロコさん(役者さん)が「絶対話している相手の目線をひとりにさせない=相手の目線に応じて対面になるようちゃんと動いているところがさりげなく出来ていてやっぱり凄いと思った」と言っていた。そういう技術的な面は、単純に観ている客=自分は指摘されないと気付かなかった。さりげないことだけど、これって凄く大事なことだよなあ。

終演後飲み会の席でも延々この話してたんですが。この再演、複数のひとと観に行ったのは初めてだったので、いろんな話が聞けてハッとすることがあった。

映画も含め、従来のブランチ像は哀れな女やのうと言う部分が色濃く出ている。男狂いで、虚言癖があって、癇に触る程プライドが高い。それはそれでいいんだけど、篠井ブランチは彼女の強さ、かわいさを感じられることが多大にあるので、ブランチの心情に共感出来ることが多いのね。勿論自分たちが歳をとったからと言うのもある。今回観た全員「今迄何パターンか『欲望〜』を観たけど、どこが面白いのかハッキリしなかった、それが篠井ブランチを観て名作と言われる所以が分かった!」ってのが共通していた。

となるとブランチ側からの視点が出来てくる。ステラって結構酷くない!?って話になる訳です。言われてみればそうだ。台詞にも出てくるように、ステラが嫁いでからデュボア家の人間はどんどん死んで行くんだけど、その看病や葬式は全てブランチがひとりでこなしてきたっぽい。ステラは彼らの臨終にも立ち会わず、葬儀ギリギリに帰省してくる。おまけにその死んで行ったひとたちは家の財産を散々食いつぶしている。家を手放すことになったのはブランチひとりのせいではないし、彼女が家を出たあとホテル暮らしになって、男を次々と食い物にしていくことになるのはブランチ自身だけの問題ではないよなあ…。まあそれでも、「どんなことになろうと生きていかなきゃならない」んだけど。

で、終盤ステラが「あんなに優しくて素敵だった姉さんを、皆がよってたかって傷付けたからこんなことに」とか言うんだけど、あれ?その皆にステラも入るんじゃ?とか思う訳です。自分もそれに加担したとは思ってないの?てな。まあ仕方ない部分もあるけどね…無意識ってのがいちばんタチ悪いよね…。

あとミッチが格好いいやんけ、これならモテる筈、何で嫁が来ないんだ、病気の母親がいるから?とか、しかし今迄の人生でいちばん嬉しかったのが「地元の体育クラブの会員になれた」ことなんて小せぇなあ、いやでもこの街ではこういうことこそ大事なのかも、なんてことも気になってくる。このミッチ像も、演じるひとによってはマザコン度がすっごい高かったりするんだけど、田中ミッチは少年っぽさが残る感じで可哀相だったな。このひともかつて大事なひとを亡くしていて、もうすぐ母親も失う訳だし。そんでブランチにはある意味裏切られた訳だし。

うわー、そうやって考えていくとこの戯曲すごく面白いわ。今更言うなって感じですか。それを気付かせてくれた今回の『欲望〜』には大感謝。

スティーヴやパブロもいい感じです。石橋さん=スティーヴの声、いいよなあ。ラジオに合わせて唄うところとか。彼の「今度はセヴン・カードといくか」と言う台詞で幕なんだけど、余韻を残す素敵な声です。山崎(ごめん「さき」の字が出ない)さん=パブロも仲間うちではちょっと歳下っぽくて皆からかわいがられ=からかわれ?ている感じがいい。彼らがフリーで遊べるシーンがあるんだけど、これも日替わりで面白くなってます。あ〜こういうのがあるからホントは毎日観たいんだよ!(笑)

明日はもう楽日だ、寂しいなあ。