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2002年10月26日(土)
『Dolls』

『Dolls』@新宿ピカデリー1


ネタバレしてます。

なんとも語るべきことを無くしてしまう作品。北野監督は極端にシャイなひとだと聞くが、それがこの作品の言葉の寡黙さ、その反面饒舌な画面に現れているのだろうか。

とは言え、画面でも極力説明は省かれている。アイドルのおっかけはどうして死んでしまったのか。親分を待ち続ける女性はどうなったのか。主人公の男女の道行きは(『冥土の飛脚』がモチーフとして使われていることからも)死としか思えないのだが、ラストシーンのふたりがあれから向かう先は?

やっぱりこの監督は死に向かってしまうんだな。それを魅力と感じるかどうかは、観た日のコンディションによって結構変わる。

美しい風景に溶け込んだ役者が素晴らしかった。女優が美しい。菅野美穂さんの涙がとても心に残った。西島秀俊さんの、無表情の中に時折表れる悔恨や優しさが痛かった。

大森南朋くんは主人公の会社の同僚。恋人同士だったふたりの婚約を祝福し、違う女性と結婚することに決めた主人公の式へ納得いかない表情で出席し、逃亡を図る主人公を心配しながらも援助する、とポイントポイントに出演しており印象的な役でした。

山本耀司の衣装は、ストーリーの設定から離れて孤高の色を放っていた。フィクションとして観るスイッチになっていたと思う。本人の意図がどういうものかは別として。風景はただただ美しい。素晴らしい。

観客も圧倒されたのか、エンドロールが流れても席を立つひとがいなかった。広い劇場だったのに、珍しい現象。自分もしばらく席を立てず、座ったまま友人(彼女も立てなかったようだ)としばらく話し込んでしまった。