多市と寿子の関係の3
多市の行動は早かった。寿子の両親のところへ単身乗り込んで寿子を嫁に欲しいと申し込んだ。突然の話しに田中健吉は戸惑ったが、吾一の弟であるから無下にも断れない。そこは大人の智恵で玉虫色の返事でその場を切り抜け何はともあれ、多市を引き取らせた。
その噂が姉久仁子のところへも伝わった。久仁子は寿子から婚約のことを聞いていたので実家へ急行し父親の田中健吉にその旨を伝えた。困惑したのは健吉であったが、ここはひとまず多市の方へ事情を話して断ろうということになった。
田中健吉から断りの返答を得てひるむような多市ではなかった。反対しているのが長女の姉の久仁子であることを知ると反対者を説得することから始めようと智恵をめぐらせた。教職にあるものが一番嫌がることはなんだろうと考えて、それは職場でスキャンダルの噂が流れることだろうと思いついた。やくざのよく使う手である。
多市は久仁子の務める学校へ出かけて面会を求め、二人の結婚に反対する理由をとことん問い詰めた。こんなことが数度に及んだ。
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