親戚縁者も不審に思った密葬
潮が書斎で新聞を読んでいると淑子が入ってきて言った。 「今朝、母が生きている夢をみたの。そしてお父さんは頑張って一生懸命生きてきたのだから赦してあげてね。これから稔子の所へ行ってくるよと穏やかな顔をしていうのよ」 「夢を見ているのだろうと思っていたよ。お母さん生きているよね。殺されたんじゃないよねという言葉は僕もはっきり聞いたよ。お母さんがお父さんのことを赦してあげてと言ったのはお母さんが成仏して仏に近づいたということだよ。冥福できるだろう」 「この夢を見たからお姉さんに電話してみたの。そしたらお姉さんは夢をみなかったというのよ」 「お姉さんには多少邪念があるからじゃないのかな」
淑子は田舎の父方の従兄弟の英男に電話したことも話した。 「英男さん母の死に顔はどうでしたか。箝口令が敷かれていて、こちらでは情報が入らないので聞くのだから本当の所を教えて頂戴。殺されたり、自殺したりした様子はなかったですか。」 「叔母さんは小さくなっていたが、穏やかな死に顔だったよ。殺されたり、自殺した顔には見えなかったよ。」 「田舎でも密葬というのはあるのかしら」 「そんなこと聞いたことないな。俺もおかしいから叔父貴に直接何故密葬なのかと聞いてみたら、叔母さんの固い遺言だったと言っていた。福吉君にも別に聞いてみたが、同じように母の遺言だと言っていた」 「俺は合点がいかないのでそれでは改めて本葬があるんだよねと念を押したら言葉を濁して何も言わなかった。帰りの電車の中でも八百屋の康弘君と、金はいくらでもあるのに密葬とはおかしいなと話していたところだ。もう一度叔父貴には確かめてみるよ」
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