徒然なる Short story 集

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【冬の領域】2

2009年02月16日(月)

 まさか、負けても良いなんて言い出さないわよねえ……
「俺だって、セツの死に目に立ち会えなかったんだ。
 葬式くらい出てやりたい……」
「解るわよ、勿論、陽ちゃんの気持ち……
 でも、大会も今年最後なんだし──
 ああ、さっきと立場が逆転してる。
 あたしは最後に、
「何か良いのあれば陽ちゃんの分まで遺品もらってくるよ。
 今日の試合頑張ってね!」
 と言って受話器を置いた。


 夏休みもあと少しで終わる、八月も後半を過ぎたある日のことだった。
 昨日の夜遅く、母の実家からかかってきた電話で、あたしは同い年の従姉妹・せつが死んだと知る。
 あたし達家族三人(父母と一人娘であるあたし)は、翌日の今日、母の実家に向かうことになった。
 その前にと、あたしは中学最後のサッカー大会に出場している陽介に、電話をかけた。
 あたしは温子(アツコ)。
 陽ちゃんは、アツと呼ぶ。
 せつ──セッちゃんのことをセツと呼ぶ。
 この呼び方は、彼特有のもの。
 他の周りの友達は遣わない。
 グリーン車両に乗り、北へ向かう途中、ケータイには陽介からメールが入っていた。
『俺の代わりに、サヨナラ言っておいてくれ』
 ホントは、それで納得できるわけじゃないだろうに……
『了解!』
 一言だけ返事を返し、目を閉じた。
三人揃って初めて逢ったのは、小学校あがってすぐだろうか。
 あたし達三人は、幼なじみだった。


 ◆陽介 PART1◆


 俺が初めてセツと逢ったのは、小一の夏休みだった。
 温子──アツは俺んちのすぐ隣に住んでいる。
 物心つくかつかない頃からの付き合いで、同じ保育園に通っていた。
 アツは毎年夏休みや冬休み、母親の実家に遊びに行ってたそうだ。
 俺達が小学校にあかったその年、初めて田舎に行かないかと誘われた。
「おばさんのお姉さんに、せつって名前の温子と陽くんと同じ歳の女の子がいるんだけど。体が弱くて、いつも家にいるの。
 学校にもあまり行けないみたいで、友達も少なくて……
 もし良かったら、友達になってあげてくれないかな?
 せっちゃんに、新しい友達を紹介してあげたいの」
 友達になれるかどうかは二の次に、俺は田舎に興味があって承諾した。
 田舎から帰ったアツからいつも話しを聞かされて、行ってみたいと思ってたからだ。
 従妹であるセツの話も度々出たが、
「あたしに似て可愛いよ〜(はぁと)」





 つづく


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如月なつき [MAIL] [HOMEPAGE]